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第五章
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「ハッカ、ですか?」
「え……?」
「ハッカの味がしたから」
唇をつけたまま、吉岡が囁く。ぼんやりしてしまって何のことかと思ったが飴玉のことか。
もう一度口付けて吉岡に飴玉を押し付けてみると歯に当たる音を一つたててそれは吉岡へと渡った。
「佐野さんは」
「ん?」
「もう怒ってないんですか? 俺はきっと触らずにはいられないんですが」
まあ、確かに怒っていたわ。そんで色々言ったはずだけど。
触らずにはって言われても今は俺からキスして飴玉渡しちゃったな。どうなんだろうこれ。
矛盾。
うーん、
「もう分かんないだよ。俺だって」
「じゃあ俺に触られるの平気ですか?」
「平気、っていうか、」
視線を下に向けた吉岡は、頬を挟んでいた右手を滑らせて首筋を撫で下ろす。背筋がゾクゾクしたが気持ち悪くもないしやめて欲しいというものでもない。だから困る。
「や、なんだろ。平気だけどやめてくれるか」
「平気なんですね」
「平気といえば平気だけど……平気じゃないというか」
曖昧に濁していると第二ボタンまで外されていたシャツの中へと手が入ってきた。遠慮なく進入してきた手が寒むさのせいですでに立ち上がっていた尖りに触れた。
「あっ」
「……」
「こんなところでやめろバカ!」
目の前にある腹部に拳をめり込ませた。あまりダメージはなさそうだったが体を弄っていた手は離れていった。
シャツの襟元をギュッと握ってこれ以上触らせないようにして何気ない顔で見下ろす吉岡を睨んだ。
「確かにこんな所で盛るもんじゃないですね」
吉岡が個室から出て行き俺も続く。するとひんやりとした空気に身を震わせた。個室で2人ありゃコリャしていると空気も暖かくなるのか。
妙に恥ずかしいが冷えた空気は頭の熱を冷ますのに丁度よくて吉岡のあとに続いた。
もう仲直りしてしまったんだろうか。これでもう普通にしてくれるんだろうか。
だといいな、なんてお気楽なことを考えながら生徒会室に向かう。ガラッと勢いよいく開けて2人同時に入ってきたものだから全員に注目された。
これは少し時間を置いて入るべきだったのかもしれないと少し後悔。
「顔赤いけど、佐野」
「寒いからだろ」
「ふ~ん」
南に指摘されムッとしたが表情を変えることなく終えた。これ以上突っ込まれるのは勘弁。
「ああそうだ。春休みになったらカンボジア行くからいない間のことはよろしく。4泊してくる予定だ」
松浦が何か書類を書きながら全員に告げるがみんなポカンとしてしまった。
席に座りながら「旅行?」と聞けばあのミスターコンの賞品だと言う。
「忘れてたけどそんなのがあったな」
「春休みは新歓の準備くらいだし、4泊くらいならなんとでもなる」
俺と北村が頷きながら楽しんでこいと言うのに対し、南は違うことが気になるのか「誰と行くの~?」と熱心だ。
「関係ないだろ」
「ペアチケットじゃん、あれ。まさか家族なわけないでしょー」
「誰でもいいだろ」
「誰でもいいけどさー。もし生徒会の2人が抜けでもしたら、残った人達大変じゃん。しかも、どっちも生徒会長ってつくしさー」
てことは誰と行くのか分かってんじゃねーか。
生徒会長と付くのは2人いる。生徒会長の松浦と生徒会長補佐の青木。
俺と北村はうっかり抱きついている現場を見たし、他にも廊下でただならぬ関係と見て取れる現場にも遭遇した。南もそうなのだろうか。
確かに2人いなくなると会長職の仕事がたまるだろうな。でもその分副会長様が頑張ったら言いだけの話じゃないか。とも思う。
「知っているなら聞くな」
「普通聞かれる前に言うものじゃなーい」
南の言う通りだが南に言われるとむしゃくしゃするのは俺だけだろうか。田口だけがまたオロオロとしているが二ノ瀬や吉岡がこんな話に嵌ってくるわけないしな。
「え……?」
「ハッカの味がしたから」
唇をつけたまま、吉岡が囁く。ぼんやりしてしまって何のことかと思ったが飴玉のことか。
もう一度口付けて吉岡に飴玉を押し付けてみると歯に当たる音を一つたててそれは吉岡へと渡った。
「佐野さんは」
「ん?」
「もう怒ってないんですか? 俺はきっと触らずにはいられないんですが」
まあ、確かに怒っていたわ。そんで色々言ったはずだけど。
触らずにはって言われても今は俺からキスして飴玉渡しちゃったな。どうなんだろうこれ。
矛盾。
うーん、
「もう分かんないだよ。俺だって」
「じゃあ俺に触られるの平気ですか?」
「平気、っていうか、」
視線を下に向けた吉岡は、頬を挟んでいた右手を滑らせて首筋を撫で下ろす。背筋がゾクゾクしたが気持ち悪くもないしやめて欲しいというものでもない。だから困る。
「や、なんだろ。平気だけどやめてくれるか」
「平気なんですね」
「平気といえば平気だけど……平気じゃないというか」
曖昧に濁していると第二ボタンまで外されていたシャツの中へと手が入ってきた。遠慮なく進入してきた手が寒むさのせいですでに立ち上がっていた尖りに触れた。
「あっ」
「……」
「こんなところでやめろバカ!」
目の前にある腹部に拳をめり込ませた。あまりダメージはなさそうだったが体を弄っていた手は離れていった。
シャツの襟元をギュッと握ってこれ以上触らせないようにして何気ない顔で見下ろす吉岡を睨んだ。
「確かにこんな所で盛るもんじゃないですね」
吉岡が個室から出て行き俺も続く。するとひんやりとした空気に身を震わせた。個室で2人ありゃコリャしていると空気も暖かくなるのか。
妙に恥ずかしいが冷えた空気は頭の熱を冷ますのに丁度よくて吉岡のあとに続いた。
もう仲直りしてしまったんだろうか。これでもう普通にしてくれるんだろうか。
だといいな、なんてお気楽なことを考えながら生徒会室に向かう。ガラッと勢いよいく開けて2人同時に入ってきたものだから全員に注目された。
これは少し時間を置いて入るべきだったのかもしれないと少し後悔。
「顔赤いけど、佐野」
「寒いからだろ」
「ふ~ん」
南に指摘されムッとしたが表情を変えることなく終えた。これ以上突っ込まれるのは勘弁。
「ああそうだ。春休みになったらカンボジア行くからいない間のことはよろしく。4泊してくる予定だ」
松浦が何か書類を書きながら全員に告げるがみんなポカンとしてしまった。
席に座りながら「旅行?」と聞けばあのミスターコンの賞品だと言う。
「忘れてたけどそんなのがあったな」
「春休みは新歓の準備くらいだし、4泊くらいならなんとでもなる」
俺と北村が頷きながら楽しんでこいと言うのに対し、南は違うことが気になるのか「誰と行くの~?」と熱心だ。
「関係ないだろ」
「ペアチケットじゃん、あれ。まさか家族なわけないでしょー」
「誰でもいいだろ」
「誰でもいいけどさー。もし生徒会の2人が抜けでもしたら、残った人達大変じゃん。しかも、どっちも生徒会長ってつくしさー」
てことは誰と行くのか分かってんじゃねーか。
生徒会長と付くのは2人いる。生徒会長の松浦と生徒会長補佐の青木。
俺と北村はうっかり抱きついている現場を見たし、他にも廊下でただならぬ関係と見て取れる現場にも遭遇した。南もそうなのだろうか。
確かに2人いなくなると会長職の仕事がたまるだろうな。でもその分副会長様が頑張ったら言いだけの話じゃないか。とも思う。
「知っているなら聞くな」
「普通聞かれる前に言うものじゃなーい」
南の言う通りだが南に言われるとむしゃくしゃするのは俺だけだろうか。田口だけがまたオロオロとしているが二ノ瀬や吉岡がこんな話に嵌ってくるわけないしな。
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