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第五章
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しおりを挟む絶頂後の脱力感にがっくりと力を抜いて息を整える。
ぬるっとした感触を最後に、吉岡が力の抜けてしまった俺の中心から口を離すが、後ろの違和感はあるままだ。
それももう動いてはいないが尻がむずむずする。
さっさと抜いて欲しいが、いつもだったらすでに賢者タイムに突入しているはずなのに今はどういうわけか後を引くように余韻があるから言葉を出すということが面倒くさい。
穏やかな表情の吉岡はずいっと近づき、先程とは違って暖かなもので唇を塞がれた。舌が割って入ってきたのでちゅうと吸ってやった。ぼんやりとした頭で目を閉じずに吉岡を観察していたが、思ったよりも早く離れていった唇に「あ」と物欲しげに声を出してしまって後悔。恥ずかしすぎる。
後ろの孔に未だに入っている指をそのままに、吉岡は俺の横に肘を付いて寝転がった。近距離から見下ろされさらに恥ずかしくなる。
「なあ、指。指入ってんだけど」
恥ずかしさを紛らわすために言ったことなのに、言ったことがとても恥ずかしくなって吉岡がいる反対の方に顔を向けた。
露になった項から耳元へとべろりと舐め上げられ鳥肌が立った。でも気持ち悪さがないから不思議。
「……力入れないで。指喰われちゃう」
「え、いや、あの」
妙に色っぽい声で、しかも耳元で囁かれる滅多に聞かない砕けた話し方に動揺してしまう。
吉岡の反対に顔を向けているからばれずに済んでいるが不審なほど視線を彷徨わせていた。
「いや、抜けよ。違和感過ぎていつまでも落ち着かないんだけど」
「……入れてぇ」
なんだ。
どうした。
しかも口調が違いすぎて誰だよ。
「え」だの「あの」だのしか言えない俺に諦めたのか勢いよく指が抜かれた。ほっとすると同時、妙な喪失感に戸惑いを覚える。無理やり開かされていた膝を閉じ、顔を向いていたほうにくの字になるよう体も横向きにした。部屋をかなり温かくしてくれていたからあまり寒くもなかったけど、吉岡は肩まですっぽりと隠れるくらいに毛布を掛けてくれた。肌に直接触れるもこもこが気持ちよくて顔を埋めた。
「佐野さん」
「あ?」
「佐野さん」
「なんだよ」
「好きです」
横になったまま、後ろから毛布越しにギュッと抱きかかえられる。切なく、それでいてなんの揺れも感じないしっかりとした意思を感じられる告白は心臓を鷲みにされた。
嬉しくて向き合って抱きつきたいけど恥ずかしすぎるんだが、これから先俺の心臓は持つんだろうか。
自分の顔は見られたくないけど相手の顔は見てみたいという自分勝手な思いに苦笑しかない。
こうやって吉岡は自分の気持ちをぶつけてくれているというのに俺は何もあげられていないじゃないか。
冷たくされたり避けられたりするのがイヤで、好きだと認めたくなかったし蓋をしていた。
もう、いいんじゃないかな。
もぞもぞと動き、吉岡とご対面だ。恥ずかしげもなく告白されてこっちが恥ずかしくなるわけだが毛布で口元を隠して悟られないようにする。
「あのさー。一度しか言わないから聞き逃さないで欲しいんだけど」
「なんですか」
なんとなく想像できているだろう吉岡はとても柔らかい空気を纏っている。生徒会室なんかでは絶対に見られないものだ。今ならなにを言っても受け入れてくれそう。どんな無茶難題だって、俺のいうことならなんだって。そんな自信を持たせてくれる不思議なもの。
本当、吉岡の何がいいのか俺にも分かんないし。
でも、
「好き」
見つめあいながら言うのは恥ずかしいけど。
どこが好きだとかは言ってあげられないけど。
わりかし天邪鬼な俺をここまで素直にさせた吉岡にちょっとだけ感謝。
結局この日はヤらずに終わり、ホッとしたような拍子抜けしたような。
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