竹一族の記憶

夕凪ヨウ

文字の大きさ
6 / 127
25番は存在しない 〜竹一族の記憶(一)〜

しおりを挟む
 何度資料を捲っても、書かれていることは同じだった。
「どういうことだよ、これ・・・・」
 図書室に置かれた学校史、私立図書館の新聞やデータベース、ネットニュース、都市伝説じみた動画。ありとあらゆるものが、同じ答えを示していた。
 俺は高校と図書館を行き来して夕方まで調査を行い、日が暮れ始めた頃、予約していたビジネスホテルへチェックインした。もちろん、宿泊代は父さんからもらっている。部屋は割と簡素な作りで、ベッドとクローゼットだけが目立ち、一方でアメニティーは充実していた。感心しつつ少し休み、調査内容をまとめた時ーー異変に気がついた。
252525・・・・? しかも、誰1人として発見されていない上、情報が無いに等しい・・・・まさか、今回と同じように、誰も覚えていないってのか?」
 そんなこと、あり得ない。だが、あり得ないことを調べるのが、一族の仕事だ。
 俺は実家で吉崎の話を記したノートを引っ張り出し、1ページ飛ばして集めた情報を記した。




【某県某市西馬さいば高等学校生徒失踪事件】
 〈概要〉
 西馬高等学校の2年1組25番の生徒が、4月25日に25年ずつの間隔で行方不明になる事件。行方不明になった生徒は、いずれも見つかっている可能性が低く、今回同様、顔や名前を始めとした、生徒の個人情報を“覚えていない”と思われる。


 〈年表〉
[1度目 1975(昭和50)年4月25日]
 友人と共に帰宅したとの証言あり。夜になっても帰ってきておらず、同居していた祖母が学校に連絡して発覚。初めは家族や近隣住民で捜索が行われたが、発見されなかったため警察に通報。
 (備考)
 当時は日本の教育改革の時期であり、高校進学者が増加していた。当時の高校生たちも同様であったと見られる。一方、西馬高校は1975年以前から緻密な教育制度が整っており、入学金が高額であったことから、裕福な家庭の子女だった可能性が高い。

 
[2度目 2000(平成12)年4月25日]
 部活動終了後、部員全員で帰路についたとの証言あり(野球部だったらしい)。部員とは自宅に程近い空き地で別れ、それ以後姿を見た者はいない。父親と2人暮らしであり、父が通報者。
 (備考)
 当時は少年犯罪を始めとした凶悪事件が多数発生しており、不安が蔓延っていた。そのため、この失踪事件もそのうちのどれかに類すると考えられた可能性が高い。


[3度目 2025(令和7)年4月25日]
 授業終了後、1人で帰路に着いた。学校から出るところを学年主任が、帰路を歩いているところを近所の住民が目撃している。共働きの両親が帰宅した後、家にいなかったことで警察に通報。
 (備考)
 生徒の担任である吉崎康雄よしざきやすおが、行方不明になった生徒のことを覚えていないことに不信感を覚え、竹一族に依頼をし、現在に至る。




「同じ日に、同じ出席番号の生徒が行方不明・・・・。鍵は25のはずだけど、それに何の意味がある? 特別何かがあったなんて話はないし、西馬高校内での事件も、この行方不明の事件だけだしな・・・・」
 大袈裟なため息と共に、俺は思わず頭を掻いた。どう考えても普通の行方不明事件ではないが、普通でないことを証明する根拠が存在しない。一体どう進めりゃいいってんだ?
 隣室の迷惑にならない程度に唸っていると、ある一言を思い出した。


 ーーどうしても行き詰まったら、初めに戻って考えなさい。そこに答えはなくとも、答えにつながる手がかりが、あるかもしれないからね。


「・・・・何で警察じゃなかったんだ?」
 初めに行方不明になった生徒は、行方不明が明らかになっていたはずなのに、警察への通報はかなり遅い。それもそのはずで、両親が行方不明になったことを理解した時、なぜか近隣住民と協力して捜索した。だが、数時間経っても発見できなかったから、警察に通報をした。だけど、普通は順番が逆じゃないか? だって当時、警察組織はすでに出来上がっていたんだから。
「裕福な家庭だったら・・・・もしかしたら、知られたくないことがある? 警察に探られたら、困ることが・・・・」
 口に出して心の臓が冷えた。だが、もう後には引けない。依頼を受けた以上、こなす以外の道はないのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怪談

馬骨
ホラー
怪談です。 長編、中編、短編。 実話、創作。 様々です。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

近づいてはならぬ、敬して去るべし

句ノ休(くのやすめ)
ホラー
山中、もしあなたがそれに出会ったら…… 近づいてはいけない。 敬して去るべし。   山を降りろ。   六年勤めた会社を辞めた。お荷物だとはわかっていたし、むしろ清々しくもあった。 28歳のコウイチには、仕事より大切なものがあった。 田舎歩きだ。そこ大事なのが学生のときにかじった民俗学だ。廃集落、古い祠、忘れられた神々——それを訪ねることは、彼のたった一つの愉しみだった。   大学時代、民俗学の講義で准教授はこう言った。「神々は神ではない」。人が畏れ、従い、忖度したものがかみになる。その言葉がコウイチを変えた。 会社の営業で関東のあちこちを歩きまわった。コウイチは仕事よりも土地の古老の話に耳を傾けることに熱中した。   ふと見つけた資料にコウイチは目を奪われた。 「名付け得ぬ神」。 東京の西、檜原村の奥深く、コボレザワという場所にその祭祀を担った一族がいたという。山奥には祠があるらしい。だがもう六十年も前に無人になってしまっているようだ。   コウイチは訪ねることにする。 道中、奇妙な老人に出会う。一人目は気のいい古書店主。二人目は何かを知りながら口を閉ざす資料館の老人。そして三人目は——   雪深い山の中でコウイチはついに祠を見つけた。巨大な岩を背にした祠は古び、壊れていたが、まだ人が来ている痕跡があった。 不穏な気配にコウイチは振り向くが、なにもない。 あれ? 鳥の声が、まったくない。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

都市伝説レポート

君山洋太朗
ホラー
零細出版社「怪奇文庫」が発行するオカルト専門誌『現代怪異録』のコーナー「都市伝説レポート」。弊社の野々宮記者が全国各地の都市伝説をご紹介します。本コーナーに掲載される内容は、すべて事実に基づいた取材によるものです。しかしながら、その解釈や真偽の判断は、最終的に読者の皆様にゆだねられています。真実は時に、私たちの想像を超えるところにあるのかもしれません。

「モブ子で結構。クラスでパシリにしていたあなたより、フォロワーが100万人多いので、趣味の合わない方とはお話ししない主義なので」

まさき
ライト文芸
静はイヤホンをつけ、眼鏡を外した。 「ごめんなさい——趣味の合わない方とはお話ししない主義なの」 ——これは、モブ子と呼ばれた少女が、誰にも媚びなかった夏の話。 学校では地味で目立たない女子高生・葛城静。分厚い眼鏡、冴えない服装、クラスのリア充グループには「モブ子」と呼ばれ、パシリにされる日々。「ブスに夏休みは似合わないよね」——そんな言葉を笑顔で浴びせてくる同級生たちは、知らない。 彼女が、フォロワー100万人を誇る超人気ストリーマー「シズネ」だということを。 夏休み。秘密の別荘プールから配信した100万人記念ライブが大バズり。特定班の動きは早く、やがて「シズネ=あのモブ子」という事実がXのトレンドを席巻した。 翌朝の教室。昨日まで見下していた同級生たちが、一斉に満面の笑みを向けてくる——。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

処理中です...