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25番は存在しない 〜竹一族の記憶(一)〜
十
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「戸塚さんは、行方不明の生徒と親しかったんですか?」
余計な思考を振り払った後、俺はそう尋ねた。というより、尋ねずにはいられなかったのだ。50年前から、25年ごとに起こる生徒の行方不明事件。行方不明になった生徒のことを覚えていないにしても、卒業生が“同じことがあった”などと声を上げることは今までなかった。兄さんの探索の結果とはいえ、事が上手く運びすぎている気もする。疑うなんて、とも思うが、疑いたくもなる状況だ。
この男は、本当に真実を言っているのだろうか。
「・・・・難しい質問ですね。何せ、覚えていませんから」
その発言を聞いた瞬間、俺は何て馬鹿なことを聞いたんだろうと感じた。行方不明の生徒のことを、誰も覚えていない。それは、この行方不明事件における共通点だ。それなのに、なぜか彼は覚えているだなんて思い込んだ。そんなこと、あるはずがないのに。
俺は思わず苦笑を漏らし、答える。
「そうですよね。すみません。過去に事件に遭遇したであろう当時のクラスメイトが沈黙している中、戸塚さんだけが声を上げられたので、つい気になってしまって」
「いえいえ。ああ、そうだ。カステラはお好きですか? 貰い物なんですが、1人では食べきれなくて・・・・。良ければご一緒にどうです?」
依頼を通して関わることになった相手と間食だなんて、普通はありえない。でも、俺はかなり疲れていた上、脳が休息を欲していた。そのため、二つ返事と言えるほど早く頷き、しばしの間、歓談していた。
お腹が落ち着いた頃、俺は紅茶を啜りながら、尋ねるべきだったのに、尋ねていなかったことを口にした。
「戸塚さんは、子供の頃からこちらにお住まいですよね。今に至るまで、何か怪談話をお聞きになったことはありませんか? 何時にどうしたら幽霊が出るとか、何曜日は変なものが見えるとか、内容は何でもいいんですが」
俺の質問に、戸塚は怪談話、と小さく復唱し、半分以下になった紅茶を見つめた。白を基調とし、青薔薇の柄があるティーカップは洒落ていて、歓談の中で、友人からもらったのだと話していたことを思い出した。
思ったよりも長い沈黙の後、戸塚はおもむろに口を開いた。
「西馬高校の近くに、神社があるんです。神社と言っても、廃社ですが」
「廃社?」
空いた口が塞がらなかった。地図やインターネット上のサイトを見ても、そんな話はどこにもなかったはずだ。いやまあ、小さな神社ならありえない話じゃないし、既に跡形もないという可能性もーー
「更地にしてしまったわけではないんですよ」
違うのかよ。じゃあ、どこにそんなものが?
俺の疑問に答えるかのように、戸塚はスマートフォンを取り出し、開いた地図アプリの画面を見せた。場所は西馬高校から徒歩10分ほどの距離であり、西馬高校の生徒が帰り道に通ってもおかしくない場所だった。ただ、続けて見せられたストリートビューでは、廃社を囲うように白い壁が建てられており、中に入ることはできないようだった。
「私が高校に通っていた頃、すでに廃社になっていましたね。確か、今から60年前くらいに、廃社になってしまったとか。市役所の資料室に行けば、そのあたりのことが詳しく書かれた資料があると思いますよ」
「そうなんですね。ありがとうございます、行ってみます。
ところで、高校生の頃には廃社だったという話ですが、この白い壁もすでに?」
「いいえ。作られたのは私が卒業して数年経った頃です。崩れ落ちた鳥居や拝殿が危険という理由だったかと。子供たちが入れば怪我をしかねませんし、廃社という場所のそのものが、何やら不気味なものに感じられたのでしょうね」
「なるほど。この神社の名前は?」
「縁来神社です。縁が来ると書きます。ご利益がありそうな名前ですよね」
そう。普通に考えれば、良い名前だ。だが、こんな疑問も浮かび上がる。
やって来る縁は、本当に良いものばかりなのか? という疑問が。
余計な思考を振り払った後、俺はそう尋ねた。というより、尋ねずにはいられなかったのだ。50年前から、25年ごとに起こる生徒の行方不明事件。行方不明になった生徒のことを覚えていないにしても、卒業生が“同じことがあった”などと声を上げることは今までなかった。兄さんの探索の結果とはいえ、事が上手く運びすぎている気もする。疑うなんて、とも思うが、疑いたくもなる状況だ。
この男は、本当に真実を言っているのだろうか。
「・・・・難しい質問ですね。何せ、覚えていませんから」
その発言を聞いた瞬間、俺は何て馬鹿なことを聞いたんだろうと感じた。行方不明の生徒のことを、誰も覚えていない。それは、この行方不明事件における共通点だ。それなのに、なぜか彼は覚えているだなんて思い込んだ。そんなこと、あるはずがないのに。
俺は思わず苦笑を漏らし、答える。
「そうですよね。すみません。過去に事件に遭遇したであろう当時のクラスメイトが沈黙している中、戸塚さんだけが声を上げられたので、つい気になってしまって」
「いえいえ。ああ、そうだ。カステラはお好きですか? 貰い物なんですが、1人では食べきれなくて・・・・。良ければご一緒にどうです?」
依頼を通して関わることになった相手と間食だなんて、普通はありえない。でも、俺はかなり疲れていた上、脳が休息を欲していた。そのため、二つ返事と言えるほど早く頷き、しばしの間、歓談していた。
お腹が落ち着いた頃、俺は紅茶を啜りながら、尋ねるべきだったのに、尋ねていなかったことを口にした。
「戸塚さんは、子供の頃からこちらにお住まいですよね。今に至るまで、何か怪談話をお聞きになったことはありませんか? 何時にどうしたら幽霊が出るとか、何曜日は変なものが見えるとか、内容は何でもいいんですが」
俺の質問に、戸塚は怪談話、と小さく復唱し、半分以下になった紅茶を見つめた。白を基調とし、青薔薇の柄があるティーカップは洒落ていて、歓談の中で、友人からもらったのだと話していたことを思い出した。
思ったよりも長い沈黙の後、戸塚はおもむろに口を開いた。
「西馬高校の近くに、神社があるんです。神社と言っても、廃社ですが」
「廃社?」
空いた口が塞がらなかった。地図やインターネット上のサイトを見ても、そんな話はどこにもなかったはずだ。いやまあ、小さな神社ならありえない話じゃないし、既に跡形もないという可能性もーー
「更地にしてしまったわけではないんですよ」
違うのかよ。じゃあ、どこにそんなものが?
俺の疑問に答えるかのように、戸塚はスマートフォンを取り出し、開いた地図アプリの画面を見せた。場所は西馬高校から徒歩10分ほどの距離であり、西馬高校の生徒が帰り道に通ってもおかしくない場所だった。ただ、続けて見せられたストリートビューでは、廃社を囲うように白い壁が建てられており、中に入ることはできないようだった。
「私が高校に通っていた頃、すでに廃社になっていましたね。確か、今から60年前くらいに、廃社になってしまったとか。市役所の資料室に行けば、そのあたりのことが詳しく書かれた資料があると思いますよ」
「そうなんですね。ありがとうございます、行ってみます。
ところで、高校生の頃には廃社だったという話ですが、この白い壁もすでに?」
「いいえ。作られたのは私が卒業して数年経った頃です。崩れ落ちた鳥居や拝殿が危険という理由だったかと。子供たちが入れば怪我をしかねませんし、廃社という場所のそのものが、何やら不気味なものに感じられたのでしょうね」
「なるほど。この神社の名前は?」
「縁来神社です。縁が来ると書きます。ご利益がありそうな名前ですよね」
そう。普通に考えれば、良い名前だ。だが、こんな疑問も浮かび上がる。
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