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14枚目のトランプカード 〜竹一族の記憶(二)〜
八
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「裏口から入ったは良いけどよ、人多すぎやしねえか? 2階に行くだけで人とかち合うぜ」
「うん・・・・。しかもさっき出て行った人だから、絶対に怪しまれる。何食わぬ顔をして行くしかないかな」
ぼくたちは周囲を見渡し、まだゴミが入っている大きなポリバケツを見つけた。申し訳ないと思いつつ、それに飛びつき、勢いよく倒す。金属製のため、凄まじい音がして中のゴミが吐き出された。生ゴミがなかったのが、せめてもの救いだ。
音を聞いた瞬間、白と黒のワンピースを着た人たちが急いで駆けつけた。ぼくたちは彼女たちが片付けに夢中になっている間に素早く背後を通り抜け、2階への階段を駆け上がる。背後から、どうして倒れたの、わかりません急に、などという会話が聞こえた。
「吉次郎おめえ、随分無茶なことするなあ」
階段を駆け上がりながら、吉平が揶揄うように言った。ぼくは苦笑いを浮かべて返す。
「緊急事態だからね。こんなことなら、元の姿の方が良かったかな」
「いや、化けないと姿が見えないから、人間からしたら勝手に扉が開いたり閉まったりしていることになる。その方がマズイぜ」
ごもっともだ。それでーー白い壺だっけ。1番奥・・・・ないな。
「ここは確か真ん中の棟だったよな。左と右、どっち行く? それともわかれるか?」
「いや、一緒に行動した方がいいよ。取り敢えず左の棟に行こう」
ぼくの提案に吉平は頷き、ぼくたちは左の棟の2階へ急いだ。渡り廊下は各階に設置されていたので、何とか人がいない廊下を通ることができた。でも、
「外れかよ! 仕方ねえ、右の棟まで行くぞ!」
身を翻した瞬間、白と黒のワンピースを来た1人が現れた。しまったと思うが、女性は「早いお帰りですね」などと言いながら歩き去る。どうやら、思ったより怪しまれていないらしい。ぼくたちは女性が視界から消えた瞬間に走り出し、人を避けつつ右の棟の2階にたどり着いた。そこでようやく、白い壺がある部屋を見つける。
「ようやくかよ・・・・。人気はねえな。行こうぜ」
人の姿だと開けやすいドアノブを捻り、ぼくたちは部屋に足を踏み入れた。
鼻がもげる!
そう叫びたいほどに、部屋には呪いーー血の臭いが充満していた。トランプはないはずなのに、どうしてこんなに? 発生元はどこだ?
「吉次郎、机の上だ」
吉平に言われて長方形の木製の机を見つめた。赤いテーブルクロスが引かれた机には、何も置かれていない。だけど、臭いの発生元はそこだった。
「一体、どういうことなんだよ。トランプは賢三様の手元にあるんだぜ? 何でここに臭いが?」
「・・・・多分だけど、1番トランプを置いていたり使っていたりした場所に、強く臭いが残るんじゃないかな。トランプからすれば、そこが自分の居場所であり、所有者に呪いをかける格好の場所」
「なるほどなあ。そう言われりゃ、納得できるぜ。だが、人間はこの臭いを嗅げねえんだよな。となると、知らず知らずのうちに身を蝕まれているってことか」
だからこそ、不審死が訪れたんだろう。この呪いは、効くまで時間がかかるか、呪いそのものが効く時間を調節しているんだ。所有者が手放してから1年足らずで不審死を遂げたのも、多分そのどちらかが理由。
「トランプが手元になくても、呪いを被っちまうなんて予想外だぜ。“客人”の浅間には、この部屋に近づかねえよう伝えねえとな」
吉平の言葉に頷きつつ、ぼくには1つの疑問が浮かんだ。
過去の所有者たちが不審死を遂げた時、所有者の周囲の人間は、何も起こらなかったんだろうかーーという疑問が。
「うん・・・・。しかもさっき出て行った人だから、絶対に怪しまれる。何食わぬ顔をして行くしかないかな」
ぼくたちは周囲を見渡し、まだゴミが入っている大きなポリバケツを見つけた。申し訳ないと思いつつ、それに飛びつき、勢いよく倒す。金属製のため、凄まじい音がして中のゴミが吐き出された。生ゴミがなかったのが、せめてもの救いだ。
音を聞いた瞬間、白と黒のワンピースを着た人たちが急いで駆けつけた。ぼくたちは彼女たちが片付けに夢中になっている間に素早く背後を通り抜け、2階への階段を駆け上がる。背後から、どうして倒れたの、わかりません急に、などという会話が聞こえた。
「吉次郎おめえ、随分無茶なことするなあ」
階段を駆け上がりながら、吉平が揶揄うように言った。ぼくは苦笑いを浮かべて返す。
「緊急事態だからね。こんなことなら、元の姿の方が良かったかな」
「いや、化けないと姿が見えないから、人間からしたら勝手に扉が開いたり閉まったりしていることになる。その方がマズイぜ」
ごもっともだ。それでーー白い壺だっけ。1番奥・・・・ないな。
「ここは確か真ん中の棟だったよな。左と右、どっち行く? それともわかれるか?」
「いや、一緒に行動した方がいいよ。取り敢えず左の棟に行こう」
ぼくの提案に吉平は頷き、ぼくたちは左の棟の2階へ急いだ。渡り廊下は各階に設置されていたので、何とか人がいない廊下を通ることができた。でも、
「外れかよ! 仕方ねえ、右の棟まで行くぞ!」
身を翻した瞬間、白と黒のワンピースを来た1人が現れた。しまったと思うが、女性は「早いお帰りですね」などと言いながら歩き去る。どうやら、思ったより怪しまれていないらしい。ぼくたちは女性が視界から消えた瞬間に走り出し、人を避けつつ右の棟の2階にたどり着いた。そこでようやく、白い壺がある部屋を見つける。
「ようやくかよ・・・・。人気はねえな。行こうぜ」
人の姿だと開けやすいドアノブを捻り、ぼくたちは部屋に足を踏み入れた。
鼻がもげる!
そう叫びたいほどに、部屋には呪いーー血の臭いが充満していた。トランプはないはずなのに、どうしてこんなに? 発生元はどこだ?
「吉次郎、机の上だ」
吉平に言われて長方形の木製の机を見つめた。赤いテーブルクロスが引かれた机には、何も置かれていない。だけど、臭いの発生元はそこだった。
「一体、どういうことなんだよ。トランプは賢三様の手元にあるんだぜ? 何でここに臭いが?」
「・・・・多分だけど、1番トランプを置いていたり使っていたりした場所に、強く臭いが残るんじゃないかな。トランプからすれば、そこが自分の居場所であり、所有者に呪いをかける格好の場所」
「なるほどなあ。そう言われりゃ、納得できるぜ。だが、人間はこの臭いを嗅げねえんだよな。となると、知らず知らずのうちに身を蝕まれているってことか」
だからこそ、不審死が訪れたんだろう。この呪いは、効くまで時間がかかるか、呪いそのものが効く時間を調節しているんだ。所有者が手放してから1年足らずで不審死を遂げたのも、多分そのどちらかが理由。
「トランプが手元になくても、呪いを被っちまうなんて予想外だぜ。“客人”の浅間には、この部屋に近づかねえよう伝えねえとな」
吉平の言葉に頷きつつ、ぼくには1つの疑問が浮かんだ。
過去の所有者たちが不審死を遂げた時、所有者の周囲の人間は、何も起こらなかったんだろうかーーという疑問が。
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