39 / 127
14枚目のトランプカード 〜竹一族の記憶(二)〜
十三
しおりを挟む
「こんな時間に見るものじゃないぞ」
父さんはそう言って、パソコン上で再生されている動画を見つめた。僕は苦笑いを浮かべながら、「そうかもね」と答えた。
「でもほら、吉平と吉次郎に見せたら、怖がらせちゃうからさ。1人で見た方が良いんだよ。これ自体には、何もないし」
「そうは言っても、楽しいものじゃないだろう」
僕は頷いて動画を停止した。見ていた動画というのは、過去のトランプカード所持者の死に関する考察動画だ。チンケなものだし、本当のことに辿り着くなんてあり得ないけれど、念のためと思って目を通していた。丑三つ時に。
「しかし・・・・考察動画の方はともかく、そっちは、どこから流れてきたんだ?」
不思議そうに、父さんは関連動画のタイトルを示した。そこには、過去のトランプカード所持者の“死の瞬間”の動画があった。僕はカーソルを動かしてクリックし、再生した。
「ネット社会って便利だからね。1度アップしてしまえば、永遠に残り続ける。この動画は、本当に偶然撮れたものなんだよ。防犯カメラじゃないから画質は良いけど、アップする方も、反応する方も、どうかしてる」
撮影場所は日本のどこかだ。撮影者は石畳を歩いていて、側に大きな川がある。数日前に雨でも降ったのか、かなり増水しているが、動画の両端には決して少なくない人が行き来している上、お菓子の幟が立っているから、観光地だろう。撮影場所の特定をしているコメントもあるが、そんなことはどうでもいい。ただ、日時が1年ほど前であることを踏まえると、呪いによる死者が多いとわかる。正確な人数の割り出しは、多分無理だ。
動画は始め、撮影者と友人らしい複数人の他愛もない話が続いていた。どんな土産を買うとか、明日はどこに行くとか、そんな話だ。動画が全体の三分の一ほど進んだ時、奥から高級車が走って来て、突然止まった。撮影者たちも、珍しいのか足を止めたので、自然と画面がブレなくなった。
数秒の後、叩きつけるように高級車の後部座席が開き、スーツを着た男が飛び出す。そう歳はとっていない。男は慌てて出て来た運転手の制止も振り切って、なんの躊躇いもなく側の川に頭から飛び込む。途端に撮影者たちの悲鳴や動揺が始まって、驚きのあまり機器を落としたらしく、一瞬で画面が暗転し、やがて動画が終わる。
「これは、突然川に飛び込んで溺死した所有者の最期だよ。飛び込んだ時点で体全体に負荷がかかっていたけれど、所有者は重しもつけていないのに浮かび上がって来ず、助け出された時には溺死していたらしい。・・・・こんなもの、2人には見せられないでしょ」
父さんは頷きつつ、僕も見るなと暗に視線で訴えていた。僕は無理だと言わんばかりに首を振り、動画アプリを閉じた。
「放っておけば、今回の依頼人も同じような末路を辿る。手を出したのは本人とはいえ、いい結末じゃ無いからね。放っておくのは寝覚めが悪い」
「そうだな。社会的な影響力も、少なからず発生するだろう。それでーー話とは何だ?」
ああ、そうだった。元々、父さんに話があった来てもらったんだった。思ったよりも遅いから、調べた動画を念のため確認していたんだ。
「今回の依頼に関することだよ。ややこしい呪いであることは確かだからさ」
言いながら、机の隅に置いているトランプカードを手に取って渡した。触れた父さんは少し弄ってから、静かに首を横に振った。影響なし、ということだ。
「強引な方法だし、用意しなきゃいけない物もあるから、一応相談しようと思って。聞いてくれる?」
緩やかに父さんが頷いたのを見た後、僕はおもむろに口を開き、依頼の解決方法を語り始めた。
父さんはそう言って、パソコン上で再生されている動画を見つめた。僕は苦笑いを浮かべながら、「そうかもね」と答えた。
「でもほら、吉平と吉次郎に見せたら、怖がらせちゃうからさ。1人で見た方が良いんだよ。これ自体には、何もないし」
「そうは言っても、楽しいものじゃないだろう」
僕は頷いて動画を停止した。見ていた動画というのは、過去のトランプカード所持者の死に関する考察動画だ。チンケなものだし、本当のことに辿り着くなんてあり得ないけれど、念のためと思って目を通していた。丑三つ時に。
「しかし・・・・考察動画の方はともかく、そっちは、どこから流れてきたんだ?」
不思議そうに、父さんは関連動画のタイトルを示した。そこには、過去のトランプカード所持者の“死の瞬間”の動画があった。僕はカーソルを動かしてクリックし、再生した。
「ネット社会って便利だからね。1度アップしてしまえば、永遠に残り続ける。この動画は、本当に偶然撮れたものなんだよ。防犯カメラじゃないから画質は良いけど、アップする方も、反応する方も、どうかしてる」
撮影場所は日本のどこかだ。撮影者は石畳を歩いていて、側に大きな川がある。数日前に雨でも降ったのか、かなり増水しているが、動画の両端には決して少なくない人が行き来している上、お菓子の幟が立っているから、観光地だろう。撮影場所の特定をしているコメントもあるが、そんなことはどうでもいい。ただ、日時が1年ほど前であることを踏まえると、呪いによる死者が多いとわかる。正確な人数の割り出しは、多分無理だ。
動画は始め、撮影者と友人らしい複数人の他愛もない話が続いていた。どんな土産を買うとか、明日はどこに行くとか、そんな話だ。動画が全体の三分の一ほど進んだ時、奥から高級車が走って来て、突然止まった。撮影者たちも、珍しいのか足を止めたので、自然と画面がブレなくなった。
数秒の後、叩きつけるように高級車の後部座席が開き、スーツを着た男が飛び出す。そう歳はとっていない。男は慌てて出て来た運転手の制止も振り切って、なんの躊躇いもなく側の川に頭から飛び込む。途端に撮影者たちの悲鳴や動揺が始まって、驚きのあまり機器を落としたらしく、一瞬で画面が暗転し、やがて動画が終わる。
「これは、突然川に飛び込んで溺死した所有者の最期だよ。飛び込んだ時点で体全体に負荷がかかっていたけれど、所有者は重しもつけていないのに浮かび上がって来ず、助け出された時には溺死していたらしい。・・・・こんなもの、2人には見せられないでしょ」
父さんは頷きつつ、僕も見るなと暗に視線で訴えていた。僕は無理だと言わんばかりに首を振り、動画アプリを閉じた。
「放っておけば、今回の依頼人も同じような末路を辿る。手を出したのは本人とはいえ、いい結末じゃ無いからね。放っておくのは寝覚めが悪い」
「そうだな。社会的な影響力も、少なからず発生するだろう。それでーー話とは何だ?」
ああ、そうだった。元々、父さんに話があった来てもらったんだった。思ったよりも遅いから、調べた動画を念のため確認していたんだ。
「今回の依頼に関することだよ。ややこしい呪いであることは確かだからさ」
言いながら、机の隅に置いているトランプカードを手に取って渡した。触れた父さんは少し弄ってから、静かに首を横に振った。影響なし、ということだ。
「強引な方法だし、用意しなきゃいけない物もあるから、一応相談しようと思って。聞いてくれる?」
緩やかに父さんが頷いたのを見た後、僕はおもむろに口を開き、依頼の解決方法を語り始めた。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
都市伝説レポート
君山洋太朗
ホラー
零細出版社「怪奇文庫」が発行するオカルト専門誌『現代怪異録』のコーナー「都市伝説レポート」。弊社の野々宮記者が全国各地の都市伝説をご紹介します。本コーナーに掲載される内容は、すべて事実に基づいた取材によるものです。しかしながら、その解釈や真偽の判断は、最終的に読者の皆様にゆだねられています。真実は時に、私たちの想像を超えるところにあるのかもしれません。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
近づいてはならぬ、敬して去るべし
句ノ休(くのやすめ)
ホラー
山中、もしあなたがそれに出会ったら……
近づいてはいけない。
敬して去るべし。
山を降りろ。
六年勤めた会社を辞めた。お荷物だとはわかっていたし、むしろ清々しくもあった。
28歳のコウイチには、仕事より大切なものがあった。
田舎歩きだ。そこ大事なのが学生のときにかじった民俗学だ。廃集落、古い祠、忘れられた神々——それを訪ねることは、彼のたった一つの愉しみだった。
大学時代、民俗学の講義で准教授はこう言った。「神々は神ではない」。人が畏れ、従い、忖度したものがかみになる。その言葉がコウイチを変えた。
会社の営業で関東のあちこちを歩きまわった。コウイチは仕事よりも土地の古老の話に耳を傾けることに熱中した。
ふと見つけた資料にコウイチは目を奪われた。
「名付け得ぬ神」。
東京の西、檜原村の奥深く、コボレザワという場所にその祭祀を担った一族がいたという。山奥には祠があるらしい。だがもう六十年も前に無人になってしまっているようだ。
コウイチは訪ねることにする。
道中、奇妙な老人に出会う。一人目は気のいい古書店主。二人目は何かを知りながら口を閉ざす資料館の老人。そして三人目は——
雪深い山の中でコウイチはついに祠を見つけた。巨大な岩を背にした祠は古び、壊れていたが、まだ人が来ている痕跡があった。
不穏な気配にコウイチは振り向くが、なにもない。
あれ? 鳥の声が、まったくない。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/3/8:『ほうもんしゃ』の章を追加。2026/3/15の朝頃より公開開始予定。
2026/3/7:『こんびに』の章を追加。2026/3/14の朝頃より公開開始予定。
2026/3/6:『えれべーたー』の章を追加。2026/3/13の朝頃より公開開始予定。
2026/3/5:『まよなかのあしおと』の章を追加。2026/3/12の朝頃より公開開始予定。
2026/3/4:『ぎいぎいさま』の章を追加。2026/3/11の朝頃より公開開始予定。
2026/3/3:『やま』の章を追加。2026/3/10の朝頃より公開開始予定。
2026/3/2:『いおん』の章を追加。2026/3/9の朝頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
「モブ子で結構。クラスでパシリにしていたあなたより、フォロワーが100万人多いので、趣味の合わない方とはお話ししない主義なので」
まさき
ライト文芸
静はイヤホンをつけ、眼鏡を外した。
「ごめんなさい——趣味の合わない方とはお話ししない主義なの」
——これは、モブ子と呼ばれた少女が、誰にも媚びなかった夏の話。
学校では地味で目立たない女子高生・葛城静。分厚い眼鏡、冴えない服装、クラスのリア充グループには「モブ子」と呼ばれ、パシリにされる日々。「ブスに夏休みは似合わないよね」——そんな言葉を笑顔で浴びせてくる同級生たちは、知らない。
彼女が、フォロワー100万人を誇る超人気ストリーマー「シズネ」だということを。
夏休み。秘密の別荘プールから配信した100万人記念ライブが大バズり。特定班の動きは早く、やがて「シズネ=あのモブ子」という事実がXのトレンドを席巻した。
翌朝の教室。昨日まで見下していた同級生たちが、一斉に満面の笑みを向けてくる——。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる