竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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7つ館に罪禍は宿る 〜竹一族の記憶(四)〜

十四

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 2人の蒔いた力が発芽したのは、翌朝の7時丁度だった。何かが破裂するような音が山中のあちこちから聞こえ、複数の魂が逃げるように漂い、または宙に跳ね上がって姿を現した。
 俺と賢三は音で目覚めたものの、元々陽が落ちてからの活動が基本である鋼と響は、やはりすでに起きていた。
「集まるには少し時間がかかります。宿泊者も起きている者がいるようですが、外に出ることはないでしょう」
「だろうな。昨日のうちにお札を貼っていて正解だった。亡者がこの館を目指すのも、彼らを狙ってのことだろう。
 でも、どうして無惨に人を殺したんだろうな。戦に敗れて死んだとのことだから、無念だったのか?」
「多分違うよ。言ったでしょ? 死んだ2人は七つの大罪に則って殺害された。
 そもそも七つの大罪は、人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことだ。で、亡者はキリシタン。そこまで来たら、七つの大罪に則った殺人を犯すのは納得できるし、七つの大罪を犯して死んだ可能性がある」
「つまり、己の信じる宗教に背いたことが強く心残りで、山中に現れた人間に七つの大罪を強いて自分たちの心を軽くしたい?」
「多分そんな感じ。何にせよ、自分勝手なことに変わりはないけど」
 辛辣だな、と言いながら俺は窓枠を乗り越えて外に出た。昨夜のうちに刑事たちへ引いてくれるよう頼んでいたので、この山には俺たちと“客人”、宿泊者たちしかいない。除霊には絶好のタイミングだった。
「よし、そろそろ移動しよう。山から出たら大問題だ」




 竹一族の子女は、除霊の方法が明らかになるまで、何の変哲もない名前で過ごす。一朗、二郎とか、一葉かずは二葉ふたばとか。そして、除霊の方法が明らかになった時、新しい名前を授けられる。ちなみに、数字は基本的に入れなければならない。
 兄さんの場合は、一朗から一樹になった。一は長子故だけど、樹は除霊の方法に準じた漢字だ。兄さんの除霊の方法は、竹一族で代々受け継がれてきた力の1つーー、というもの。武器は自然と本人に馴染むものが作れるが、問題は、身体能力は何の強化もないため、鍛えるしかないということだ。
 かなり大きな問題だけれど、意味がわからないくらい運動神経が良く、複数の武道を極めている兄さんは、難なく力を使いこなしている。だからこそ、山中での除霊は、兄さんにとって最高の場所になる。
「あれでやんすね。いい感じに集まって来やした」
 響の示した先に、膨大な数の魂が集まっている。青白い球体は、多くが想像する人魂と何の違いもない。いつのまにか大樹に触れていた兄さんは、すでに弓を肩に背負って矢筒まで下げていた。その軽装ぶりは、武将というより狩人だ。
「おらの方も準備が整いやした。
 まず、おらは魂の前に姿を見せて突進します。魂はより上空へ逃げようとしやすから、その時にお札を使って退路を塞いでくだせえ。同時におらも、力を使って山の木々を動かし、1分間、魂を足止めしやす。その間に、一樹様と鋼で除霊を」
「わかった。鋼、準備は?」
「いつでも問題ありません。賢三様は、くれぐれもご注意を」
「うん。さあ、始めようか」
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