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7つ館に罪禍は宿る 〜竹一族の記憶(四)〜
十七
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珍しい来訪者の名前を聞いて、退社するなり自宅へ駆け戻った。中庭で車を停めさせて降車し、きっちりと駐車された本家の車に一瞥を向けてから玄関を潜る。
「お帰りなさいませ。東の奥の間でお待ちです」
頷いて慌ただしく居間へ上がり、姿見で身なりを確認した後、東の奥の間へ歩を進めた。
しかし、なぜ急にここへ? お盆はまだ先のはずだが。それも、ご当主でも長子でもなくーー
奥の間の襖を開けると、掛け軸を見つめる1人の青年が正座していた。
「賢三殿。お待たせいたしました」
おもむろに振り返った彼は、ご当主の奥方に本当によく似ている。柔和な顔立ちを、兄弟で最も色濃く受け継いでいると言っていいだろう。
「とんでもない。こちらこそ、突然の訪問失礼しました。一雄叔父さん」
茶も菓子もいらなかった。礼儀として手土産は渡したけれど、今日は穏健に話をしに来たわけじゃない。何の用もなく、こんな場所に足など運ばない。
「先日、兄と1つの依頼をこなしたんです。少し面倒だったのですが、無事終わりまして」
世間話が面倒だったので、早速話を切り出した。
「ほう。どのような?」
「某県の山中で亡者が殺人を行ったというものです。最も、初めは亡者とわからず人間による殺人だと思われましたがーー調査の結果、戦国時代に敗れた武将とその配下が死んだ場所だと判明しまして。
しかもキリシタンだったらしく、七つの大罪に準じた殺害方法を取ったために、中々凄惨なものを見ましたよ」
「それは大変でしたなあ。しかし、無事に祓えたようで何よりです」
「ええ、本当に。兄の力は必須でしたが、何より彼の力がなければ」
「彼?」
聞き返してくるか。まあ無理もない。視ることと多少近づけないようにすることができる程度の能力では、詳しい知識は与えられない。その体裁を守るためにも、聞き返さなければならないんだろう。
「山彦です。妖怪と思われがちな存在ですが、色々と説がありまして、木霊と考えられたりするそうですよ」
「そうなんですか。それは知りませんでした。しかし、なぜそんな話を私に?」
しらばっくれるとはいい度胸だ。そろそろ、本題に入ってもいいだろう。
「私は情報収集に長けた妖怪に頼み、今回の依頼で訪れた山のことを調べてもらいました。その結果が先ほどの話ですが、それに加えて、“ある事”を耳に挟みまして」
「“ある事”?」
「ええ。
あの山のかつての所有者が一雄叔父さんであり、祓うべき亡者の存在を知りながら無視し、現在の管理人である今回の“客人”に、山を売却したということですよ」
やけに部屋が冷えていた。真夏であるはずなのに、震えるように寒い。風邪でもひいたのだろうか。それとも、背中を伝う冷や汗のせいか。
「賢三殿、突然何の話ですか。私はそんな・・・・。仮にそうだとして、何の得が」
「大物の依頼は兄さんにしか回らない。加えて、兄さんが依頼の助太刀を頼むのは僕しかいない。この2つさえわかっていれば、依頼を仕込むことは可能です。問題は、そんなことをして何がしたいのかということ。
しかし、これは簡単ですよね。あなたは、兄さんと僕を始末したかったんだ」
その一言に思わず顔を上げた瞬間、素早く正面から口を塞がれ、叩きつけられるように、畳へ背中を打ちつけた。
「お帰りなさいませ。東の奥の間でお待ちです」
頷いて慌ただしく居間へ上がり、姿見で身なりを確認した後、東の奥の間へ歩を進めた。
しかし、なぜ急にここへ? お盆はまだ先のはずだが。それも、ご当主でも長子でもなくーー
奥の間の襖を開けると、掛け軸を見つめる1人の青年が正座していた。
「賢三殿。お待たせいたしました」
おもむろに振り返った彼は、ご当主の奥方に本当によく似ている。柔和な顔立ちを、兄弟で最も色濃く受け継いでいると言っていいだろう。
「とんでもない。こちらこそ、突然の訪問失礼しました。一雄叔父さん」
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「先日、兄と1つの依頼をこなしたんです。少し面倒だったのですが、無事終わりまして」
世間話が面倒だったので、早速話を切り出した。
「ほう。どのような?」
「某県の山中で亡者が殺人を行ったというものです。最も、初めは亡者とわからず人間による殺人だと思われましたがーー調査の結果、戦国時代に敗れた武将とその配下が死んだ場所だと判明しまして。
しかもキリシタンだったらしく、七つの大罪に準じた殺害方法を取ったために、中々凄惨なものを見ましたよ」
「それは大変でしたなあ。しかし、無事に祓えたようで何よりです」
「ええ、本当に。兄の力は必須でしたが、何より彼の力がなければ」
「彼?」
聞き返してくるか。まあ無理もない。視ることと多少近づけないようにすることができる程度の能力では、詳しい知識は与えられない。その体裁を守るためにも、聞き返さなければならないんだろう。
「山彦です。妖怪と思われがちな存在ですが、色々と説がありまして、木霊と考えられたりするそうですよ」
「そうなんですか。それは知りませんでした。しかし、なぜそんな話を私に?」
しらばっくれるとはいい度胸だ。そろそろ、本題に入ってもいいだろう。
「私は情報収集に長けた妖怪に頼み、今回の依頼で訪れた山のことを調べてもらいました。その結果が先ほどの話ですが、それに加えて、“ある事”を耳に挟みまして」
「“ある事”?」
「ええ。
あの山のかつての所有者が一雄叔父さんであり、祓うべき亡者の存在を知りながら無視し、現在の管理人である今回の“客人”に、山を売却したということですよ」
やけに部屋が冷えていた。真夏であるはずなのに、震えるように寒い。風邪でもひいたのだろうか。それとも、背中を伝う冷や汗のせいか。
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