竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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母の御魂は四つ辻に眠る 〜竹一族の記憶(五)〜

十三

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 これ以上先延ばしにしたら決意が揺らぐ。そう思って、私は律子に打ち明けた日の夜、奏子の元へ行った。
「・・・・私は、ここに来るべきではありませんでしたね」
 開口一番、奏子は言った。私はすぐに否定した。
「違う。連れてきたのは私だ。私が全てを壊した。何もかも、私が選択を間違えたから起こったことだ」
「そんな・・・・。全て零士さんが悪いだなんて、そんなことありません。私自身が、早く決断するべきだったんです。叶いもしない恋にうつつを抜かして居続けるより、黙っていなくなるべきだったんです」
「その迷いも、君に決断を強いるようなことをした私のせいだ。律子には・・・・もう何をしても償えない」
 どこで何を間違えたのか。時間が戻るなら戻ってほしかった。だが、そんなこと起こるはずもない。決断のままに、私たちは突き進むしかなかった。


 その日から、いくらかの日数が過ぎた時、仕事中に倒れた奏子を病院で診察してもらうと、妊娠していることがわかった。私は子供が増えることに喜びは覚えたが、それでも、表立って感情を露わにすることができなかった。
「よくやった。性別の判明は、まだ先だな?」
 報告をした直後の父の言葉は、それだった。吐き気がした。
「・・・・はい。父上は、どちらがいいとお考えですか」
「もう1人くらい男がほしい。律子の子は女なのだから」
 順調に行けば、当然だが先に律子の子が生まれ、続けて奏子の子が生まれるはずだった。
 だが、妊娠発覚から数週間経ち、奏子の子供が男子と判明した直後、律子は流産した。
「お母さん・・・・妹、どこ行っちゃったの?」
 兄になると張り切っていた賢三は、突然お腹が小さくなった律子に、そう尋ねた。私たちは、お空に行った、としか言えなかった。


 私たちが何もできずに過ごしていると、父はあろうことか、一樹たちに奏子のお腹の子は私との子供だと打ち明けた。私たちは、まだその子について話すことを躊躇っていて、一樹たちが理解できる年になったら話すと考えていた。にも関わらず、父は話した。
「え? な、なんで? お父さんとお母さんは結婚してるのに、どうして奏子さんがお父さんとの子供・・・・え? え?」
 美桜の疑問は子供たち全員が抱いていることだったが、詳しく説明できるはずがなかった。理解できないかどうかじゃなく、ただ話せなかった。
「なぜ子供たちにあんなことを! 私たちは今話すつもりなんてなかった・・・・早すぎると判断していたんですよ⁉︎」
「父親は誰だと聞くだろうから、先に話した方がいいだろう」
「だからと言って真実を話すなんて馬鹿げている! 何の罪もない彼女を、分家だけでなく子供たちにも責めさせる事態になりかねない!」
 そんな情など、父が考えるはずもなかった。だが私は、あくまで責めた。そうしなければならなかった。
「責める? 分家の人間は、あの女もお前も、同列に扱うのに?」
「私のことはどうでもいい! 彼女の話をしているんです! そうならないために、私たちは真実を先延ばしにするつもりだったと言うのに!」
「そうか。上手くいかなくて残念だったな。せいぜい励め」
 この言い争いを奏子が聞いていたことを、私は、この時知らなかった。知っていれば良かったのかもしれない。なぜならーー




 翌朝、奏子は姿を消したから。
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