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母の御魂は四つ辻に眠る 〜竹一族の記憶(五)〜
十五
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ここからは私がお話しします。少し時間を戻りますが、奏子様が烏天狗一族の里に来たことについて、話を付け加えておきます。
ただ、実を言いますと、奏子様がお腹に宿っていた四音様と一族の里に来られた時、私は里を留守にしておりました。近畿の山に住む天狗たちと、仲間を引き連れて修行に行っておりましたので。ですから、父から聞いた話で始まるのですが・・・・。
父は常日頃から人間の里に使者ーー普通の烏にしか見えませんので、見分けるのは非常に困難ですがーーを送っておりました。日の出前に竹一族の屋敷を出られた奏子様を見つけたのも、そんな一羽の使者でございます。
「覚えていてくれる? ありがとう。それとね、私のお腹にいる、この子・・・・きっといつか、ここを通ると思うの。そうしたら、呼びかけてあげて。名前は変わっているかもしれないし、あなたの声が聴こえないかもしれないけど・・・・。
こんなことを頼んで、ごめんなさい。でもきっと、あの家の人たち以外に、私を覚えていてくれる人は、いないから」
奏子様は誰かと話をしておられました。しかし、周囲に人間はいなかった。ーーそうです。あの方が話をされていたのは、四音様・・・・あなた様が数時間前に会われた怪異です。人の姿や声を真似る、それ以外の害はない怪異です。
使者が怪異と話されている奏子様を見つけた時、怪異はすでに奏子様のお姿をしていました。橙の着物と紺の帯、足袋に下駄。三味線を背負い、何も宿ってはいませんが、わずかに膨らみの感じる腹部・・・・。使者を通して見ていた父は大層驚いたそうですが、怪異を祓わないことに決めたそうです。
「お久しぶりでございます、奏子様」
使者を通して、父はそう呼びかけました。奏子様は羽音を聞かれていたらしく、烏に話しかけられたことに驚いてはいましたが、すぐに状況を理解されたようでした。
「まあ。あなたは、以前竹一族の夕食に来られていた方ですね?」
やはりと言うべきか、奏子様は父の声を覚えておりました。1度聞いた声を忘れないのは、四音様と同じでございます。
「はい。烏天狗一族の長・黒鉄と申します。つかぬことをお伺いしますが、もしやお屋敷を出られたのですか?」
「ええ。私が居ては、誰も穏やかに暮らせない。律子さんの大切な子供を奪うような真似をしてまで、家にいたいなんて我儘、口にできませんから」
「なるほど。しかし、そのお身体で放浪など、危険ですし子供にも良くない。ーー如何でしょう? 奏子様さえよろしければ、我が一族の里に来られませんか?
妖怪の里ではありますが、竹一族の追手や数多の人間の里の災難から、お守りすることはできるかと」
父は驚くほど早く、そう言ったそうです。きっと、己がいたことで現状を作り出してしまったと思っていたのでしょう。父なりの、償いをしたかったのです。
奏子様は流石に悩まれていましたが、お腹の子供の安全が第一だと思われたのか、父の提案に頷きました。父は返事を受けて里への入口を開き、使者ごと奏子様を里に連れ帰ったのです。
私が奏子様にお会いしたのは、それから1週間ほど経った日のことでございます。
ただ、実を言いますと、奏子様がお腹に宿っていた四音様と一族の里に来られた時、私は里を留守にしておりました。近畿の山に住む天狗たちと、仲間を引き連れて修行に行っておりましたので。ですから、父から聞いた話で始まるのですが・・・・。
父は常日頃から人間の里に使者ーー普通の烏にしか見えませんので、見分けるのは非常に困難ですがーーを送っておりました。日の出前に竹一族の屋敷を出られた奏子様を見つけたのも、そんな一羽の使者でございます。
「覚えていてくれる? ありがとう。それとね、私のお腹にいる、この子・・・・きっといつか、ここを通ると思うの。そうしたら、呼びかけてあげて。名前は変わっているかもしれないし、あなたの声が聴こえないかもしれないけど・・・・。
こんなことを頼んで、ごめんなさい。でもきっと、あの家の人たち以外に、私を覚えていてくれる人は、いないから」
奏子様は誰かと話をしておられました。しかし、周囲に人間はいなかった。ーーそうです。あの方が話をされていたのは、四音様・・・・あなた様が数時間前に会われた怪異です。人の姿や声を真似る、それ以外の害はない怪異です。
使者が怪異と話されている奏子様を見つけた時、怪異はすでに奏子様のお姿をしていました。橙の着物と紺の帯、足袋に下駄。三味線を背負い、何も宿ってはいませんが、わずかに膨らみの感じる腹部・・・・。使者を通して見ていた父は大層驚いたそうですが、怪異を祓わないことに決めたそうです。
「お久しぶりでございます、奏子様」
使者を通して、父はそう呼びかけました。奏子様は羽音を聞かれていたらしく、烏に話しかけられたことに驚いてはいましたが、すぐに状況を理解されたようでした。
「まあ。あなたは、以前竹一族の夕食に来られていた方ですね?」
やはりと言うべきか、奏子様は父の声を覚えておりました。1度聞いた声を忘れないのは、四音様と同じでございます。
「はい。烏天狗一族の長・黒鉄と申します。つかぬことをお伺いしますが、もしやお屋敷を出られたのですか?」
「ええ。私が居ては、誰も穏やかに暮らせない。律子さんの大切な子供を奪うような真似をしてまで、家にいたいなんて我儘、口にできませんから」
「なるほど。しかし、そのお身体で放浪など、危険ですし子供にも良くない。ーー如何でしょう? 奏子様さえよろしければ、我が一族の里に来られませんか?
妖怪の里ではありますが、竹一族の追手や数多の人間の里の災難から、お守りすることはできるかと」
父は驚くほど早く、そう言ったそうです。きっと、己がいたことで現状を作り出してしまったと思っていたのでしょう。父なりの、償いをしたかったのです。
奏子様は流石に悩まれていましたが、お腹の子供の安全が第一だと思われたのか、父の提案に頷きました。父は返事を受けて里への入口を開き、使者ごと奏子様を里に連れ帰ったのです。
私が奏子様にお会いしたのは、それから1週間ほど経った日のことでございます。
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