竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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償い煙は3本と少し 〜竹一族の記憶(六)〜

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 血を流して倒れる僕と、、部屋の一部に飛び散った鮮血ーー。誰もが悲鳴を上げずにはいられない状況を初めに目にしたのは、十蔵さんだった。
 父と母は報告を受けて狼狽しながらも僕の治療を急ぎ、気絶しているだけなのに衣服が乱れている清二の不自然さに首を傾げた。兄と姉は人目もはばからず泣き叫び、何が起こったのだと繰り返し父と母に尋ねたーーというのが、僕が気絶していた間の出来事だ。目を覚ますと一夜明けており、氷枕を変えに来た母と顔を合わせた。
「三郎・・・・! 目が覚めたのね。良かった・・・・。傷は痛くない? 他に怪我はしていない?」
「大丈夫。ありがとう、母さん」
「お礼なんていいのよ。今、お父さんたちを呼んでくるから」
 慌てて母が出て行ってすぐ、父たちが部屋に駆け込んできた。兄と姉は僕に泣きつき、父は優しく抱きしめてくれた。
「本当に良かった・・・・。三郎、もうしんどくはないか?」
「心配しすぎだよ。大丈夫だってば」
 子供らしくはにかむと、父は頷きつつも真剣な表情を作った。正面から僕の目を覗き、はっきりとした声で尋ねる。
「何があった? 父上は、いつも通り三郎を呼び出して、修行をつけていたんだろう? こんな怪我を負うなんて・・・・」
 僕は考えつつも困ったような表情を作り、用意してきた言葉を発した。
「よく・・・・わからないんだ。いつも通り修行をしていたんだけど、急に小刀を取り出して、何かの修行かと思って近づいたら、腕を切られた。叫ぼうとしたけど、怖くて気を失っちゃって・・・・。
 でも、気を失う寸前、胸を抑えて苦しそうにするお祖父様の姿を見たんだ。お年だし、何かの発作だったのかも」
「仮にそうだしとても、切りつける理由にはならないが・・・・」
「うん。もしかしたら、お祖父様も混乱していたんじゃないかな。小刀の近くには水の入ったコップと薬の袋があったから、苦しくて薬を飲もうとして、間違えて取ったことに混乱して、思わず・・・・みたいな。
 そうじゃないと変だよ。それとも僕・・・・何か悪いことしちゃやったのかな」
 そんなことはないわ、と母がフォローに入ってくれた。
「お義父様は三郎に期待を寄せていらっしゃるし、怒ったとしても切りつけるなんてあり得ない。私も、混乱されていたんだと、思うけど・・・・でも」
「父は健康で持病がない。薬は頭痛薬くらいだ。頭が痛くなって薬を飲みたいからって、孫を切りつけるなんてあり得ないし許されることではない。・・・・乱心されたのか・・・・?」
 やっぱり父さんは、そう言うよね。もし父親に非があったとしても、孫を切りつける愚行を、乱心以外で表現したくないよね。明確な殺意や意図を持って切りつけたなんて思いたくないよね。
 どれだけ横暴になろうと、父さんは清二を見捨てられない。それはわかっていた。だからこそ、父さんだけでも真実を知ってもらわなくちゃ。
「お祖父様と話した方がいいんだろうけど、今はまだ会うのが怖いよ。父さん、話を聞いてきてくれない? 起きられていたら、でいいからさ」
「・・・・三郎と同じ時に目を覚まされているから、詳しく聞いて来よう。律子、三郎を見ていてくれ」
 母さんが頷くのを見届けるなり、父さんは部屋を後にした。
 きっと父さんは気づくだろう。だけど、気づいたところで法に則って罪を問うことはできない。僕にも、清二にも。だから、取る選択なんて決まっている。
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