竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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償い煙は3本と少し 〜竹一族の記憶(六)〜

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 血の滴る音を聞いた時、清二の背中から触手のようなものが何本も伸びているのが見えた。よく見ると赤い。あれが、“縁”なんだ。
 今、それが一斉に切れた。妖怪や怪異が、縁切りの呪文を唱えたからだろう。烏天狗一族は、本当にやってくれたんだ。
 安堵と同時に、数多の妖怪や怪異が僕の血に触れる気配がした。敢えて姿を消してもらっているが、それはわかる。初めに触れたのが、黒鉄さんの息子であることも。
「“鋼”」
 驚く清二を半ば無視して、僕はつぶやいた。ずっと考えていた名前だった。
「君の名前だよ。鋼、僕の右腕になって。一緒に行こう・・・・僕の命がある限り」
 凄まじい数の妖怪や怪異との縁を感じて、目眩がした。後ろ向きに倒れた僕を、姿を見せた鋼が受け止めた。
「かしこまりました。この命が尽きても、三郎様と共に参ります」
 思わず笑みをこぼしながら、僕は無数の名前を妖怪や怪異に与えた。縁を結べば、僕の考えを読むことができる。1つ1つ口にするなんてこと、流石に大変すぎる。
「さ、三郎・・・・お前・・よくも・・・・」
 荒い呼吸を吐き、着物に皺がつくほど胸元を掴んだ清二が僕を睨んだ。そんな目をしても無駄だよ。もう、に助かる道はない。
「除霊師でありながら、身勝手に人を呪い殺した罰だ。ご心配なく・・・・全ての縁を切る気はない。たった1つだけ、残してやったよ。お前が最も望んだ縁をね」
「何の、話・・・・」
「ーーとおる。思い出させて差し上げて」
 いきなり力を使うなんて無茶だ。だけど、これは計算の内。見せてしまった方が、より効果的な復讐になる。 
 ぼんやりと透の姿が見えた。けむくじゃらの不思議な人影だ。おもむろに右手を上げ、清二の額に人差し指を当てる。その瞬間、清二は怯えたように目を見開いた。
「やめろ・・・・やめろ!」
「断る。寧ろ、ありがたいと思ったら? たった1人だけ、お前と縁を切る必要がないと思っているんだからさ」
 喉が潰れたような叫びが上がる前に、僕たちの背後から現れた烏天狗が清二の口を塞いで音を立てず畳に叩きつけた。黒鉄さんだった。
「あなたは変わられてしまった。一体いつからなのか、今となってはわかりません。振り返る気もありません。
 我々は新たな主と共に歩みます。ですから、もうお休みください。未来は、すでに育っていますから」
 透に教えてもらったのか、黒鉄さんは眠りの呪文をつぶやいた。清二が眠りに落ちると同時に、僕も意識を失った。
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