竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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償い煙は3本と少し 〜竹一族の記憶(六)〜

十四

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 父さんって煙草吸うんだな、と思いながら縁側に立っている姿を見つめた。その顔は、どこか悲しげで、複雑な感情を宿している。何を考えているのか、俺にはわからなかった。
「四音。あんまり近くによっちゃダメだ。煙、吸っちゃうぞ」
「一樹兄さん。いや、それはわかってるんだけど、珍しいと思ってさ。仕事中でも吸わないし、家でも喫煙スペースとか作ってないし」
「・・・・まあ、この時期だけだからな。死者への弔いってところか」
 迎え火と送り火があるのに? と尋ねるのはやめた。なんだか野暮な気がしたからだ。
 それに、一樹兄さんも、お盆の時は父さんと同じ表情をする。
「俺も成人したら、一緒にやった方がいい?」
「ダメだ。体に悪い」
「弔いって言ったのにかよ」
 何かを隠していることは知っている。賢三兄さんよりもわかりやすい2人だから、俺でもわかった。体に悪いと言いながら続けるのは、何かしらの深い理由があることも。
「そういや、今日も出てたな。一樹兄さんの結婚相手の話」
 拗ねた表情を見せてからわざと話題を変えると、一樹兄さんは苦笑した。兄さんは今年25歳で、昨今の晩婚化を考えると早い。だけど、一族としては早く進めたい話なんだろう。父さんと違って分家の人間からしか相手を選べないから、妙な争いが激化している。
「まあ、父さんと母さんは25歳で俺を産んでるわけだからな。同じくらいにと思われるのは当然だ。問題は、相手が応じてくれないってことで」
「やっぱり決めてるんだな。知ってたけど」
 一樹兄さんと年の近い分家の子供たちは少なくない。だけど、兄さんが誰と結婚したいかは、家族なら百も承知だ。ただ、周りがうるさいから進まないってだけの話。そういうところが面倒臭えな、この一族。
「まあ、そのうちどうにかなるだろうから、これ以上は何も言わないよ。
 ところで、賢三兄さん、いつ帰ってくると思う?」
「送り火の日だろうな。あいつ、本当に顔出さなくなったから。分家の顔すら見たくないんだろ」
「顔ねえ・・・・。別に俺も見たくねえけどな」
 呟いた声は、思った以上に大きかったのか、一部の分家がギョッとしていた。昔なら気になっていたはずだが、今は特に何とも思わない。母さんの話を聞いて、本当に良かった。
 俺はおもむろに縁側に出て、父さんの隣に立った。俺の姿を認めて慌てて煙草を消す姿は、とても喫煙者と思えない。
「急にどうした?」
「空が見たくなった」
 父さんは笑って同じように見上げた。やっぱり、星はうっすらとしか見えない。
「・・・・あそこにいるのかな。ご先祖様」
「ああ、きっとな」
 虫の声は聞こえない。ただ、夜風の冷たさが身に染みて、夏にりょうをもたらしていた。
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