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Case34.若女将の涙③
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几帳面な彼女には似合わない荒涼とした部屋だった。だが、それは整理整頓されていないわけではない。何者かによって荒らされているのだ。
引き裂かれた布団と襖。銃弾のような穴が空いた壁。所々に散見される血飛沫ーー。作り物とすら感じる空間を、私はしばし呆然と見つめていた。
「あれは何でしょうか」
聡さんの声が指し示すものの正体は、私も理解していた。彼の視線と指の先には、茶色い長方形の机と、ナイフで机に突き刺さっている1枚の紙がある。
私は引きずるように足を動かし、ナイフを引き抜いた。
紙に視線を落とした時、私は自然と眉を顰めた。
ーカイリ『若女将の涙』第3章ー
※
「10年前の事件?」
「はい。渉さんはご存知ありませんか? 知り合いの話によると、10年前もこの旅館で人が亡くなり、雪美さんの父親である信良さんが逮捕されています」
面倒を避けるため、海里は龍の名前を出さずに尋ねた。一見怪しい言い方だったが、渉は深入りすることなく首を傾げる。
「・・・・聞いたことがありませんね。お父上は子供の頃に亡くなったとしか聞いていませんし。幼い頃からの許嫁と言っても、お互いのことをよく知っていたわけではありませんから」
「・・・・そうですか・・・・」
海里は再び考え込んだ。
榊家が事件を隠したがるのは自然の話だった。幼い頃からの許嫁でも知らないとなると、相当隠されていたことは想像に苦くない。ただ、旅館の評判に関わるという理由は納得できるものの、知られる可能性がゼロではないことも事実である。
しかしそもそも、10年前に殺されたのはどこの誰だったのかすら、海里はまだ分かっていなかった。
「騒がしいですね、渉さん。お客様には部屋で待機してもらうよう言ったはずですよ」
「お義母さん・・・・!」
短い白髪。固く結んだ唇。どこか疲れた虚な瞳。山吹色の着物。海里は女性を見るなり思考を止め、会釈をした。
「申し訳ありません。皆さんには事情聴取のため、部屋には戻らず留まって頂いています。ーー梨香子さん」
名前を呼ばれた女性は目を細め、海里を訝しんだ。しかし、すぐに思い出したようで、息を漏らす。
「・・・・ああ・・海里さんですか。そういえば、泊まりに来ると雪美が言っていましたね」
「はい。今回の事件の捜査中です。警察の方から許可は頂いています」
「そう・・・・」
海里は梨香子を見て眉を顰めた。昔は、もう少し明るく、快活な話し方をする女性だった。夫と娘の死によって変わったのだろうと思い、思わず俯く。
梨香子は海里の気持ちを察してか、すぐに口を開いた。
「あなたが気に病むことではありません。夫も、子供たちも、不幸であっただけ。わたくしが望むのは、事件の真相を明らかにすることだけです。よろしくお願いしますね」
「もちろんです」
梨香子は会釈し、奥の部屋に入っていった。渉が首を傾げて尋ねる。
「過去の事件はお聞きにならないのですか?」
「後々、分かることですし・・・・何より、傷心状態である方に、無理に話を聞くわけにはいきませんから」
海里は五十嵐から返されたメモ帳を開き、事件の情報を見返した。今のところ、捜査に進展はない。龍の調査結果が頼りになるかもしれなかった。
「江本さん」
「五十嵐さん。何か?」
「捜査に進展がありました。
被害者は昨夜の23時頃、仕事が終わった後にロビーに来ています。偶々起きていた宿泊客が目撃していました」
「23時? 確か、ここの旅館は22時半には客室・御手洗いを除くすべての部屋の明かりが消える仕組みになっていたはずです。雪美さんは、真っ暗なロビーを徘徊していたのですか?」
海里は、かつて雪美から聞いた話を思い出しながら告げた。五十嵐は頷く。
「はい。話を聞く限り見回りですが、懐中電灯すら持っておらず、スマホの光で彼女であると認識したらしいです」
ますます訳が分からなくなり、海里は首を傾げる。
「明かりを持たずに? 彼女はロビーで何を?」
「旅館の入口へ歩いていったとのことですが」
その言葉を聞き終わるなり、海里は入口へ歩き出した。自動扉が開くと外へ一歩踏み出し、辺りを見渡すが、特段変わった様子はなかった。
仕方なく戻ろうかとした時、地面にある何かが陽光に反射した。
「これは・・・・?」
まばらに埋められた石の側に、1本の鍵が落ちていた。桃色のマスキングテープが持ち手に貼られており、差込部分は欠けてはいないが、持ち手が壊れかけている。海里はハンカチを出し、そっと鍵を包んで持ち上げた。
「何かあったんですか?」
駆け寄ってきた渉に向き直り、海里は尋ねた。
「これがどこの鍵か分かりますか? そこに落ちていました」
鍵を見た渉は少し考え込んでいたが、すぐにハッとして口を開いた。
「雪美の部屋の鍵です。お義母さんが体調を崩しやすくなってから、彼女は全ての部屋の鍵を所持しています。当然、自分の部屋の鍵も所持していますが、他の鍵と混同しないように、マスキングテープで印をつけていた・・・・間違いなくそのテープです」
「鍵・・・・五十嵐さん」
「何ですか?」
「雪美さんの着物の袖の中に鍵はありませんでしたか? 1つや2つじゃない、旅館の部屋全ての鍵です」
「ちょっと待ってください」
五十嵐は急足で上司の元へ戻り、鍵のことを尋ねた。戻ってきた彼女は、少しばかり顔を曇らせている。
「そんな物は見つからなかったらしいです。着物の裾の中に、確かに鍵を持っていたと思われる証拠ーー鉄の匂いや跡は残っていた。でも、鍵自体はどこかに消えてしまっていたと」
「遺体発見現場にも無いと?」
「ええ。どうしますか?」
海里はハンカチに包んだ鍵を見つめた。少しの間考え、鍵を握りしめる。
「渉さん。雪美さんの部屋に案内してください。彼女の部屋に何か証拠があるかもしれない。
現在私たちが調べられる部屋は、現場と雪美さんの部屋しかない以上、この鍵を使うしかありませんから」
「分かりました。着いて来てください」
※
「龍」
名前を呼んだ玲央の声に対し、龍は顔を上げずに尋ねた。
「何か用か? 今忙しい」
「明日のこと、忘れてないよね? 予定空けといてよ」
玲央の言葉に龍はすかさず頷いた。
「分かってる。それより、お前に聞きたいことがある」
「ん?」
龍はようやく顔を上げ、コピーした資料を玲央に手渡した。全体に目を通すなり、玲央は目を細める。
「月影旅館の殺人事件か。この事件の被害者って、確か・・・・」
「ああ。お前、この事件のこと調べてただろ。何か知ってることはないのか?」
龍の言葉に玲央は黙り、やがて声を潜めて呟いた。
「・・・・あれは冤罪だったんだよ」
「冤罪?」
龍の眉が動いた。
「榊信良は誰も殺していなかった。京都府警は誤認逮捕をしたのさ」
玲央は軽いため息をついた。側にあった椅子に腰を下ろし、資料を捲り始める。
「彼らは当時別の事件をーー割と大きな事件を追っていて、他の事件に時間を費やすことが困難な状況にあった。被害者側からすれば無茶苦茶な話だが、彼らにとっては別件の方が重要だったんだ。
そして彼らは適当な、けれど最もらしい理由を作って、榊信良を逮捕した」
「なぜ起訴されたんだ? 誤認逮捕である以上、家族でも宿泊客でも、アリバイの証明ができたはずだろ」
「確かに、事件当日家族は彼と共にいた。その姿を宿泊客も見ている。でも、それを証明する証拠がなかったんだよ。当時から、月影旅館では防犯カメラが外された。それも、榊信良の指示でね。やましいことがあったわけじゃなくて、宿泊客が気にしてしまうという、配慮から外したらしいけど」
「自分の取ったやり方に、足元を救われたってことか?」
玲央は頷いた。龍は深いため息をつく。
「家族はどうにかして無実を証明しようとしたが、そうこうしているうちに信良は死んでしまった。元々、体が弱かったらしい。報われない話だよ」
玲央は俯いた。龍は海里との電話の内容を思い出しながら言う。
「今回の殺人事件は、10年前と関わりがあると江本は言った。お前はどう思う?」
「・・・・安易に決めつけていいのか分からないけど、可能性はゼロでは無いんじゃない?
そもそも、同じ旅館で2度殺人事件が起こること自体、怪しい話だ。前回は旅館の主が犯人になり、今回は若女将が被害者になった。“何も無い”なんて誰が思う? 事情を知っている人間は、誰を怪しむべきかも分かっているはずさ」
玲央の最後の言葉は不可解だった。しかし、龍は追求せずに曖昧な返事をし、資料を海里のスマートフォンへ送った。
※
「ここが雪美の部屋です」
渉の案内で雪美の部屋にやって来た海里は、頷いて扉の鍵穴に持ってきた鍵を差し込んだ。緊張しつつ回すと解除の音が聞こえ、間違いなく彼女の部屋の鍵だと分かる。海里は深呼吸をした後、ゆっくりと扉を開けた。
室内が露わになった瞬間、海里は目を見開いた。
「これは・・・・⁉︎」
部屋は酷く荒らされていた。布団や襖が引き裂かれ、銃弾のような痕があり、壁には血飛沫が散っている。何より目立つのは、机に刺さったナイフだった。よく見ると机とナイフの間に1枚の紙があり、机を傷つけるためにナイフが存在しているわけではないと分かった。
「江本さん、あれ・・・・」
「確認して来ます。渉さんはここでお待ちを」
海里は出来るだけ現場を荒らさないよう机まで歩き、ナイフを引き抜いて紙を手に取った。視線を落とすと同時に、彼は思わず眉を顰める。
『これ以上私の芸術に手を出すな。もし手を出すならば、第2の犠牲者を出す。
再び死人が出ることを貴様は望むか? 望まないのであれば手を引け。 R』
「江本さん?」
何も言わない海里に渉が呼びかけた。海里は独り言のように呟く。
「面倒ですね。これは・・・・一刻も早く、犯人を見つけなければなりません。犯人の言う、“第2の犠牲者”が出る前にーー」
深まる謎。正体不明の犯人・Rとは。
引き裂かれた布団と襖。銃弾のような穴が空いた壁。所々に散見される血飛沫ーー。作り物とすら感じる空間を、私はしばし呆然と見つめていた。
「あれは何でしょうか」
聡さんの声が指し示すものの正体は、私も理解していた。彼の視線と指の先には、茶色い長方形の机と、ナイフで机に突き刺さっている1枚の紙がある。
私は引きずるように足を動かし、ナイフを引き抜いた。
紙に視線を落とした時、私は自然と眉を顰めた。
ーカイリ『若女将の涙』第3章ー
※
「10年前の事件?」
「はい。渉さんはご存知ありませんか? 知り合いの話によると、10年前もこの旅館で人が亡くなり、雪美さんの父親である信良さんが逮捕されています」
面倒を避けるため、海里は龍の名前を出さずに尋ねた。一見怪しい言い方だったが、渉は深入りすることなく首を傾げる。
「・・・・聞いたことがありませんね。お父上は子供の頃に亡くなったとしか聞いていませんし。幼い頃からの許嫁と言っても、お互いのことをよく知っていたわけではありませんから」
「・・・・そうですか・・・・」
海里は再び考え込んだ。
榊家が事件を隠したがるのは自然の話だった。幼い頃からの許嫁でも知らないとなると、相当隠されていたことは想像に苦くない。ただ、旅館の評判に関わるという理由は納得できるものの、知られる可能性がゼロではないことも事実である。
しかしそもそも、10年前に殺されたのはどこの誰だったのかすら、海里はまだ分かっていなかった。
「騒がしいですね、渉さん。お客様には部屋で待機してもらうよう言ったはずですよ」
「お義母さん・・・・!」
短い白髪。固く結んだ唇。どこか疲れた虚な瞳。山吹色の着物。海里は女性を見るなり思考を止め、会釈をした。
「申し訳ありません。皆さんには事情聴取のため、部屋には戻らず留まって頂いています。ーー梨香子さん」
名前を呼ばれた女性は目を細め、海里を訝しんだ。しかし、すぐに思い出したようで、息を漏らす。
「・・・・ああ・・海里さんですか。そういえば、泊まりに来ると雪美が言っていましたね」
「はい。今回の事件の捜査中です。警察の方から許可は頂いています」
「そう・・・・」
海里は梨香子を見て眉を顰めた。昔は、もう少し明るく、快活な話し方をする女性だった。夫と娘の死によって変わったのだろうと思い、思わず俯く。
梨香子は海里の気持ちを察してか、すぐに口を開いた。
「あなたが気に病むことではありません。夫も、子供たちも、不幸であっただけ。わたくしが望むのは、事件の真相を明らかにすることだけです。よろしくお願いしますね」
「もちろんです」
梨香子は会釈し、奥の部屋に入っていった。渉が首を傾げて尋ねる。
「過去の事件はお聞きにならないのですか?」
「後々、分かることですし・・・・何より、傷心状態である方に、無理に話を聞くわけにはいきませんから」
海里は五十嵐から返されたメモ帳を開き、事件の情報を見返した。今のところ、捜査に進展はない。龍の調査結果が頼りになるかもしれなかった。
「江本さん」
「五十嵐さん。何か?」
「捜査に進展がありました。
被害者は昨夜の23時頃、仕事が終わった後にロビーに来ています。偶々起きていた宿泊客が目撃していました」
「23時? 確か、ここの旅館は22時半には客室・御手洗いを除くすべての部屋の明かりが消える仕組みになっていたはずです。雪美さんは、真っ暗なロビーを徘徊していたのですか?」
海里は、かつて雪美から聞いた話を思い出しながら告げた。五十嵐は頷く。
「はい。話を聞く限り見回りですが、懐中電灯すら持っておらず、スマホの光で彼女であると認識したらしいです」
ますます訳が分からなくなり、海里は首を傾げる。
「明かりを持たずに? 彼女はロビーで何を?」
「旅館の入口へ歩いていったとのことですが」
その言葉を聞き終わるなり、海里は入口へ歩き出した。自動扉が開くと外へ一歩踏み出し、辺りを見渡すが、特段変わった様子はなかった。
仕方なく戻ろうかとした時、地面にある何かが陽光に反射した。
「これは・・・・?」
まばらに埋められた石の側に、1本の鍵が落ちていた。桃色のマスキングテープが持ち手に貼られており、差込部分は欠けてはいないが、持ち手が壊れかけている。海里はハンカチを出し、そっと鍵を包んで持ち上げた。
「何かあったんですか?」
駆け寄ってきた渉に向き直り、海里は尋ねた。
「これがどこの鍵か分かりますか? そこに落ちていました」
鍵を見た渉は少し考え込んでいたが、すぐにハッとして口を開いた。
「雪美の部屋の鍵です。お義母さんが体調を崩しやすくなってから、彼女は全ての部屋の鍵を所持しています。当然、自分の部屋の鍵も所持していますが、他の鍵と混同しないように、マスキングテープで印をつけていた・・・・間違いなくそのテープです」
「鍵・・・・五十嵐さん」
「何ですか?」
「雪美さんの着物の袖の中に鍵はありませんでしたか? 1つや2つじゃない、旅館の部屋全ての鍵です」
「ちょっと待ってください」
五十嵐は急足で上司の元へ戻り、鍵のことを尋ねた。戻ってきた彼女は、少しばかり顔を曇らせている。
「そんな物は見つからなかったらしいです。着物の裾の中に、確かに鍵を持っていたと思われる証拠ーー鉄の匂いや跡は残っていた。でも、鍵自体はどこかに消えてしまっていたと」
「遺体発見現場にも無いと?」
「ええ。どうしますか?」
海里はハンカチに包んだ鍵を見つめた。少しの間考え、鍵を握りしめる。
「渉さん。雪美さんの部屋に案内してください。彼女の部屋に何か証拠があるかもしれない。
現在私たちが調べられる部屋は、現場と雪美さんの部屋しかない以上、この鍵を使うしかありませんから」
「分かりました。着いて来てください」
※
「龍」
名前を呼んだ玲央の声に対し、龍は顔を上げずに尋ねた。
「何か用か? 今忙しい」
「明日のこと、忘れてないよね? 予定空けといてよ」
玲央の言葉に龍はすかさず頷いた。
「分かってる。それより、お前に聞きたいことがある」
「ん?」
龍はようやく顔を上げ、コピーした資料を玲央に手渡した。全体に目を通すなり、玲央は目を細める。
「月影旅館の殺人事件か。この事件の被害者って、確か・・・・」
「ああ。お前、この事件のこと調べてただろ。何か知ってることはないのか?」
龍の言葉に玲央は黙り、やがて声を潜めて呟いた。
「・・・・あれは冤罪だったんだよ」
「冤罪?」
龍の眉が動いた。
「榊信良は誰も殺していなかった。京都府警は誤認逮捕をしたのさ」
玲央は軽いため息をついた。側にあった椅子に腰を下ろし、資料を捲り始める。
「彼らは当時別の事件をーー割と大きな事件を追っていて、他の事件に時間を費やすことが困難な状況にあった。被害者側からすれば無茶苦茶な話だが、彼らにとっては別件の方が重要だったんだ。
そして彼らは適当な、けれど最もらしい理由を作って、榊信良を逮捕した」
「なぜ起訴されたんだ? 誤認逮捕である以上、家族でも宿泊客でも、アリバイの証明ができたはずだろ」
「確かに、事件当日家族は彼と共にいた。その姿を宿泊客も見ている。でも、それを証明する証拠がなかったんだよ。当時から、月影旅館では防犯カメラが外された。それも、榊信良の指示でね。やましいことがあったわけじゃなくて、宿泊客が気にしてしまうという、配慮から外したらしいけど」
「自分の取ったやり方に、足元を救われたってことか?」
玲央は頷いた。龍は深いため息をつく。
「家族はどうにかして無実を証明しようとしたが、そうこうしているうちに信良は死んでしまった。元々、体が弱かったらしい。報われない話だよ」
玲央は俯いた。龍は海里との電話の内容を思い出しながら言う。
「今回の殺人事件は、10年前と関わりがあると江本は言った。お前はどう思う?」
「・・・・安易に決めつけていいのか分からないけど、可能性はゼロでは無いんじゃない?
そもそも、同じ旅館で2度殺人事件が起こること自体、怪しい話だ。前回は旅館の主が犯人になり、今回は若女将が被害者になった。“何も無い”なんて誰が思う? 事情を知っている人間は、誰を怪しむべきかも分かっているはずさ」
玲央の最後の言葉は不可解だった。しかし、龍は追求せずに曖昧な返事をし、資料を海里のスマートフォンへ送った。
※
「ここが雪美の部屋です」
渉の案内で雪美の部屋にやって来た海里は、頷いて扉の鍵穴に持ってきた鍵を差し込んだ。緊張しつつ回すと解除の音が聞こえ、間違いなく彼女の部屋の鍵だと分かる。海里は深呼吸をした後、ゆっくりと扉を開けた。
室内が露わになった瞬間、海里は目を見開いた。
「これは・・・・⁉︎」
部屋は酷く荒らされていた。布団や襖が引き裂かれ、銃弾のような痕があり、壁には血飛沫が散っている。何より目立つのは、机に刺さったナイフだった。よく見ると机とナイフの間に1枚の紙があり、机を傷つけるためにナイフが存在しているわけではないと分かった。
「江本さん、あれ・・・・」
「確認して来ます。渉さんはここでお待ちを」
海里は出来るだけ現場を荒らさないよう机まで歩き、ナイフを引き抜いて紙を手に取った。視線を落とすと同時に、彼は思わず眉を顰める。
『これ以上私の芸術に手を出すな。もし手を出すならば、第2の犠牲者を出す。
再び死人が出ることを貴様は望むか? 望まないのであれば手を引け。 R』
「江本さん?」
何も言わない海里に渉が呼びかけた。海里は独り言のように呟く。
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