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Case57.幽霊屋敷で出会った男⑤
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「香澄さん、待ってください」
私は思わず駆け寄り、立ち去ろうとする彼女の腕を掴んだ。
「離して! 私は家にいなかったって行ったじゃない! それで十分でしょう!」
「それだけでは足りないんです。ここ数日間の行動を教えてください。香菜子さんにもお聞きしたいので、話を通して頂けませんか」
彼女は怯えた瞳で私を見て、消え入るような声で尋ねた。
「・・・・拒否権は?」
「無いとは言いません。しかし、お話ししてくださると助かります。あなたのお兄さんの無念を晴らすためでもありますからね」
しばらく悩んでいた彼女だったが、やがて頷き、私を自室に通した。
驚くべき事実を聞かされると、知らぬまま。
ーカイリ『幽霊屋敷で出会った男』第5章ー
※
「内部犯ですって? 馬鹿にしないで頂戴! わたくしは昨日から仕事、文雄さんは家にいたけれど、正が死んだと思わしき時間は家にいなかった! 香織も友人と外出していたのよ? わたくしたちに殺せるわけないじゃない!」
風香は眉を吊り上げて怒鳴った。海里は冷静に言葉を返す。
「外部犯の可能性は著しく低いんです。こんなことを言いたくはありませんが、犯人は皆さんのうちの誰かです」
海里はそう断言し、3人を見回した。風香は海里を睨みつける。
「わたくしたちがやったという証拠でもあるの⁉︎ これは、霊の仕業ですわ‼︎」
「そうだとすれば、随分丁寧な霊ですね。割った窓ガラスをわざわざ新しいものに変える幽霊など、居るとは思えないのですが?」
海里が皮肉を込めて言うと、圭介が応じた。
「それは同感だな。だが、霊がいないと断言はできねえ」
圭介の言葉に海里は少し驚いていた。だが、すぐに落ち着きを取り戻し、口を開く。
「あなたも粘りますね。では、犯人は霊が割った窓を新しいものにするなどという、面倒な行動を取ったと本気で思っているのですか?」
「犯人は霊の仕業だと思ってなかったんじゃねえの? この家にいる誰かが、立石正を殺す理由を知っていた。だから割れた窓ガラスを回収し、新しいものに付け替えた」
筋が全く通らないとは言い切れなかった。邸宅に防犯カメラなどない以上、正面から否定する理由はないからだ。
海里は眉を顰めて尋ねる。
「つまり、犯人は2人いると?」
「霊が犯人の場合はな。人間が犯人なら1人でやれば片付く話だろ。問題は、そこの警察2人が浴びたと言った強風だ」
「ええ、それは理解していますよ。しかし、この状況でもまだ幽霊の話を持ち出すなど、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。本当に霊が犯人だというなら、この家の人間、全員殺してしまえばいい話」
「言うねえ」
海里は風香から距離を置き、圭介の前に立った。ゆっくりと口角を持ち上げて不敵な笑みを浮かべ、彼に向かって言い放つ。
「もう1度言います。この事件は人為的殺人です。幽霊の仕業ではない。
確信が持てないのであればいてくださって構いませんが、幽霊ではないと確信されたその時は・・・・お引き取り頂くということでよろしいですね?」
海里の言葉に圭介は笑った。怒るのかと思ったが、その笑みには子供のような無邪気さが現れている。
「・・・・はっ・・・面白え。受けてたってやるよ、江本海里」
『それで除霊師と対決? あなたも随分馬鹿らしい喧嘩を見たのね』
「2人とも乗り気だし、構わないかと思ってね。
それより、立石家について教えてくれない? 情報を待っていると解決が長引くし、本人たちに聞いても、何も話してくれないんだよ」
『・・・・玲央あなた、私を便利屋扱いしてない? もしそうだったら切るわよ』
「そんなことないって。今回は仕方ないと思ってよ」
電話越しに小夜の溜息が聞こえた。彼女は少し間を開けた後、説明を続ける。
『立石家の現当主・立石文雄は2代目当主よ。と言っても、彼も婿養子だから、実際の当主は立石風香ね』
小夜の言葉に玲央は眉を動かした。
「彼も? 先代も婿養子だったのか?」
『ええ。前当主・立石晋一の妻、立石鈴香が正式な当主だった。彼女は1年前、老衰でこの世を去ったわ。確か、73歳だった』
「若いな・・・。現在、立石晋一はどこに?」
『立石家本宅の近くに山があるでしょう? その頂上に別宅があって、彼はそこに住んでいるの。元々、お金に興味がない人物で、社会的地位の高い立石鈴香が、お金を彼の両親に渡して夫にしたのよ』
「なるほど・・・情報はそれくらい?」
小夜はしばらく黙った。やがて、彼女は声を顰めて続ける。
『立石鈴香の死が、身内による殺人だという噂があるわ』
玲央は眉を顰めた。
「なぜそんな噂が?」
『家族仲が悪かったのよ。立石鈴香は、自分の娘である風香同様、香織を後継にしようとしていた。でも、香織に自由な人生を生きて欲しいと願った風香は、母親をーーってね』
「よくある話だけど、何だか違和感があるな。ここに来てからの2人は、ずっと喧嘩腰だ。立石正に対する発言も嘘臭かった。一体、なぜ・・・・」
玲央の呟きに、小夜は驚くべき言葉を発した。
『2人の待遇が違っても仕方ないと思うわよ。正は風香の実の息子じゃないもの』
「なっ・・・⁉︎」
驚く玲央に対し、小夜は淡々と続けた。
『文雄の浮気。まあ、鈴香が揉み消したみたいだけど・・・』
「金で決められた結婚だとしても、名誉を汚すようなことができるのか? 彼はそんな人間に見えなかったけど」
小夜は電話越しに苦笑して答えた。
『忘れたの? 社会的地位の高い人間なんて、人の命も、名誉も、心も、何とも思っちゃいない。身内の友人ですら平気で奪い、己の欲のために動く。例えそれが、“外”から来た人間だったとしても、同じこと。
どうせいつか闇に染まるのよ。人は、人に嫌われないために人を見捨てて、人を裏切る。あなたも知ってるでしょ?』
小夜の口調は、何かを嘲笑うようだった。玲央はその言葉を聞き、悲しげな顔をしながら、「そうだね。それが人間ってものだった」と言った。電話越しに、小夜の微かな笑いが聞こえる。
玲央は気持ちを切り替えるように息を吐き、続ける。
「とにかく、ありがとう。毎度巻き込むつもりはないと言っておきながら、結局は君を頼るなんて、無茶苦茶な話だね」
『あら、自覚があったのね。嬉しいわ』
そう言った小夜の声は楽しそうだった。今度は玲央が苦笑いを浮かべる。
「からかわないでよ。じゃあ、また」
『ええ』
電話を切ると、背後に海里がいた。玲央は怒らずに愛想笑いを浮かべる。
「盗み聞き? 趣味が悪いよ、江本君」
「・・・・上司に電話をすると嘘をついて、小夜さんに? なぜそうまでして隠すのですか? 彼らにバレても、何ら問題はないでしょうに」
「聞かれたくない会話ってのがあるのさ。それで? 神道君はまだいるの?」
海里はこれ以上聞いても無駄だと思ったのか、静かに頷いた。
「ええ。しかし、彼の言葉は全て嘘です。彼は、初めからこの家に幽霊がいるとは思っていない。あくまで仕事として、ああ言ってるだけでしょう」
「だろうね。彼が見たいのは、霊ではなく君の推理だろうから」
玲央はスマートフォンを仕舞い、壁に預けていた体を起こした。海里も踵を返して歩き始める。
並んで歩きながら、玲央は言う。
「容疑者を増やす。別宅にいる表向きの立石家先代当主・立石晋一慎だ。俺は今から彼に会いに行くから、江本君は龍と捜査を続けてくれ」
「分かりました。しかし大丈夫ですか? 倉庫にあった武器・・・1つ失くなっていたのでしょう? もしそれを立石晋一が持っていたら・・・・」
「そう簡単にやられるほど弱くないし、初めて会う人を信用しないよ。仮にも警察官だ」
そう言いながら、玲央は立石家の前に止めてあった龍の車に乗り込んだ。扉を閉め、窓を開けて海里と話を続ける。
「何が、どこまで聞けるかは分からない。聞ける範囲で聞いてくるよ」
「お願いします」
「うん。あと、立石風香・香織のここ数日の行動を調べてくれ。立石正についての発言をした際、2人は嘘をつき、動揺していた。その理由が見つかるかもしれないから」
「分かりました。お気をつけて」
車が出て行くのを見送ると、海里は屋敷の中に入り、龍と玲央が危険に晒された部屋に再び向かった。
「香織さん?」
龍と玲央が危険に晒された部屋に向かう途中、海里は自分を監視するように見つめる香織に気がついた。しかし、海里の顔を見た香織は走り去ろうとする。海里は慌てて追いかけ、彼女の腕を掴んだ。
「待ってください。お聞きしたいことがあります」
「・・・話すことなんて何もないわ! 私は家にいなかった! それだけで十分でしょ⁉︎」
「それだけでは事件解決に足りないんです。ここ数日の行動を教えてください。風香さんにもお聞きしたいので、案内してくださると助かります」
「・・・・拒否権は?」
香織は震える声で尋ねた。海里は怖がらせないようゆったりと答える。
「無いとは言いませんが、できれば答えて頂きたいですね。あなたのお兄さんの無念を晴らすためでもありますから」
香織は酷く怯えた顔をしていた。海里は彼女の表情に違和感を覚えながらも、決して視線を逸らさなかった。
やがて、香織が深い溜息をつく。
「分かったわよ。ただし、おばあちゃんの部屋でね」
目的の部屋に行けるなら都合が良いと感じ、海里は黙って頷いた。
部屋に入った香織は、扉を閉めるなり鍵をかけた。海里に向き直り、重い口を開く。
「私、従姉の所に行ってたの。あんまり家にいたくなかったから」
「なぜです?」
「パパとママが喧嘩するからよ。パパは、お兄ちゃんを後継にしようとしていたけど、ママはお兄ちゃんに立石家を相続させるつもりがなかったの。だから、ずっとーー」
そこで言葉を止め、香織は顔を曇らせた。海里は頷く。
「なるほど。では、その従姉さんに話を聞くことはできますか?」
海里の問いに、香織は心底不思議そうな顔をした。なぜそんな顔をするのかと訝しんでいると、香織は驚くべき言葉を口にする。
「できるも何も、知り合いじゃないの? 私の従姉、天宮小夜なんだから」
私は思わず駆け寄り、立ち去ろうとする彼女の腕を掴んだ。
「離して! 私は家にいなかったって行ったじゃない! それで十分でしょう!」
「それだけでは足りないんです。ここ数日間の行動を教えてください。香菜子さんにもお聞きしたいので、話を通して頂けませんか」
彼女は怯えた瞳で私を見て、消え入るような声で尋ねた。
「・・・・拒否権は?」
「無いとは言いません。しかし、お話ししてくださると助かります。あなたのお兄さんの無念を晴らすためでもありますからね」
しばらく悩んでいた彼女だったが、やがて頷き、私を自室に通した。
驚くべき事実を聞かされると、知らぬまま。
ーカイリ『幽霊屋敷で出会った男』第5章ー
※
「内部犯ですって? 馬鹿にしないで頂戴! わたくしは昨日から仕事、文雄さんは家にいたけれど、正が死んだと思わしき時間は家にいなかった! 香織も友人と外出していたのよ? わたくしたちに殺せるわけないじゃない!」
風香は眉を吊り上げて怒鳴った。海里は冷静に言葉を返す。
「外部犯の可能性は著しく低いんです。こんなことを言いたくはありませんが、犯人は皆さんのうちの誰かです」
海里はそう断言し、3人を見回した。風香は海里を睨みつける。
「わたくしたちがやったという証拠でもあるの⁉︎ これは、霊の仕業ですわ‼︎」
「そうだとすれば、随分丁寧な霊ですね。割った窓ガラスをわざわざ新しいものに変える幽霊など、居るとは思えないのですが?」
海里が皮肉を込めて言うと、圭介が応じた。
「それは同感だな。だが、霊がいないと断言はできねえ」
圭介の言葉に海里は少し驚いていた。だが、すぐに落ち着きを取り戻し、口を開く。
「あなたも粘りますね。では、犯人は霊が割った窓を新しいものにするなどという、面倒な行動を取ったと本気で思っているのですか?」
「犯人は霊の仕業だと思ってなかったんじゃねえの? この家にいる誰かが、立石正を殺す理由を知っていた。だから割れた窓ガラスを回収し、新しいものに付け替えた」
筋が全く通らないとは言い切れなかった。邸宅に防犯カメラなどない以上、正面から否定する理由はないからだ。
海里は眉を顰めて尋ねる。
「つまり、犯人は2人いると?」
「霊が犯人の場合はな。人間が犯人なら1人でやれば片付く話だろ。問題は、そこの警察2人が浴びたと言った強風だ」
「ええ、それは理解していますよ。しかし、この状況でもまだ幽霊の話を持ち出すなど、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。本当に霊が犯人だというなら、この家の人間、全員殺してしまえばいい話」
「言うねえ」
海里は風香から距離を置き、圭介の前に立った。ゆっくりと口角を持ち上げて不敵な笑みを浮かべ、彼に向かって言い放つ。
「もう1度言います。この事件は人為的殺人です。幽霊の仕業ではない。
確信が持てないのであればいてくださって構いませんが、幽霊ではないと確信されたその時は・・・・お引き取り頂くということでよろしいですね?」
海里の言葉に圭介は笑った。怒るのかと思ったが、その笑みには子供のような無邪気さが現れている。
「・・・・はっ・・・面白え。受けてたってやるよ、江本海里」
『それで除霊師と対決? あなたも随分馬鹿らしい喧嘩を見たのね』
「2人とも乗り気だし、構わないかと思ってね。
それより、立石家について教えてくれない? 情報を待っていると解決が長引くし、本人たちに聞いても、何も話してくれないんだよ」
『・・・・玲央あなた、私を便利屋扱いしてない? もしそうだったら切るわよ』
「そんなことないって。今回は仕方ないと思ってよ」
電話越しに小夜の溜息が聞こえた。彼女は少し間を開けた後、説明を続ける。
『立石家の現当主・立石文雄は2代目当主よ。と言っても、彼も婿養子だから、実際の当主は立石風香ね』
小夜の言葉に玲央は眉を動かした。
「彼も? 先代も婿養子だったのか?」
『ええ。前当主・立石晋一の妻、立石鈴香が正式な当主だった。彼女は1年前、老衰でこの世を去ったわ。確か、73歳だった』
「若いな・・・。現在、立石晋一はどこに?」
『立石家本宅の近くに山があるでしょう? その頂上に別宅があって、彼はそこに住んでいるの。元々、お金に興味がない人物で、社会的地位の高い立石鈴香が、お金を彼の両親に渡して夫にしたのよ』
「なるほど・・・情報はそれくらい?」
小夜はしばらく黙った。やがて、彼女は声を顰めて続ける。
『立石鈴香の死が、身内による殺人だという噂があるわ』
玲央は眉を顰めた。
「なぜそんな噂が?」
『家族仲が悪かったのよ。立石鈴香は、自分の娘である風香同様、香織を後継にしようとしていた。でも、香織に自由な人生を生きて欲しいと願った風香は、母親をーーってね』
「よくある話だけど、何だか違和感があるな。ここに来てからの2人は、ずっと喧嘩腰だ。立石正に対する発言も嘘臭かった。一体、なぜ・・・・」
玲央の呟きに、小夜は驚くべき言葉を発した。
『2人の待遇が違っても仕方ないと思うわよ。正は風香の実の息子じゃないもの』
「なっ・・・⁉︎」
驚く玲央に対し、小夜は淡々と続けた。
『文雄の浮気。まあ、鈴香が揉み消したみたいだけど・・・』
「金で決められた結婚だとしても、名誉を汚すようなことができるのか? 彼はそんな人間に見えなかったけど」
小夜は電話越しに苦笑して答えた。
『忘れたの? 社会的地位の高い人間なんて、人の命も、名誉も、心も、何とも思っちゃいない。身内の友人ですら平気で奪い、己の欲のために動く。例えそれが、“外”から来た人間だったとしても、同じこと。
どうせいつか闇に染まるのよ。人は、人に嫌われないために人を見捨てて、人を裏切る。あなたも知ってるでしょ?』
小夜の口調は、何かを嘲笑うようだった。玲央はその言葉を聞き、悲しげな顔をしながら、「そうだね。それが人間ってものだった」と言った。電話越しに、小夜の微かな笑いが聞こえる。
玲央は気持ちを切り替えるように息を吐き、続ける。
「とにかく、ありがとう。毎度巻き込むつもりはないと言っておきながら、結局は君を頼るなんて、無茶苦茶な話だね」
『あら、自覚があったのね。嬉しいわ』
そう言った小夜の声は楽しそうだった。今度は玲央が苦笑いを浮かべる。
「からかわないでよ。じゃあ、また」
『ええ』
電話を切ると、背後に海里がいた。玲央は怒らずに愛想笑いを浮かべる。
「盗み聞き? 趣味が悪いよ、江本君」
「・・・・上司に電話をすると嘘をついて、小夜さんに? なぜそうまでして隠すのですか? 彼らにバレても、何ら問題はないでしょうに」
「聞かれたくない会話ってのがあるのさ。それで? 神道君はまだいるの?」
海里はこれ以上聞いても無駄だと思ったのか、静かに頷いた。
「ええ。しかし、彼の言葉は全て嘘です。彼は、初めからこの家に幽霊がいるとは思っていない。あくまで仕事として、ああ言ってるだけでしょう」
「だろうね。彼が見たいのは、霊ではなく君の推理だろうから」
玲央はスマートフォンを仕舞い、壁に預けていた体を起こした。海里も踵を返して歩き始める。
並んで歩きながら、玲央は言う。
「容疑者を増やす。別宅にいる表向きの立石家先代当主・立石晋一慎だ。俺は今から彼に会いに行くから、江本君は龍と捜査を続けてくれ」
「分かりました。しかし大丈夫ですか? 倉庫にあった武器・・・1つ失くなっていたのでしょう? もしそれを立石晋一が持っていたら・・・・」
「そう簡単にやられるほど弱くないし、初めて会う人を信用しないよ。仮にも警察官だ」
そう言いながら、玲央は立石家の前に止めてあった龍の車に乗り込んだ。扉を閉め、窓を開けて海里と話を続ける。
「何が、どこまで聞けるかは分からない。聞ける範囲で聞いてくるよ」
「お願いします」
「うん。あと、立石風香・香織のここ数日の行動を調べてくれ。立石正についての発言をした際、2人は嘘をつき、動揺していた。その理由が見つかるかもしれないから」
「分かりました。お気をつけて」
車が出て行くのを見送ると、海里は屋敷の中に入り、龍と玲央が危険に晒された部屋に再び向かった。
「香織さん?」
龍と玲央が危険に晒された部屋に向かう途中、海里は自分を監視するように見つめる香織に気がついた。しかし、海里の顔を見た香織は走り去ろうとする。海里は慌てて追いかけ、彼女の腕を掴んだ。
「待ってください。お聞きしたいことがあります」
「・・・話すことなんて何もないわ! 私は家にいなかった! それだけで十分でしょ⁉︎」
「それだけでは事件解決に足りないんです。ここ数日の行動を教えてください。風香さんにもお聞きしたいので、案内してくださると助かります」
「・・・・拒否権は?」
香織は震える声で尋ねた。海里は怖がらせないようゆったりと答える。
「無いとは言いませんが、できれば答えて頂きたいですね。あなたのお兄さんの無念を晴らすためでもありますから」
香織は酷く怯えた顔をしていた。海里は彼女の表情に違和感を覚えながらも、決して視線を逸らさなかった。
やがて、香織が深い溜息をつく。
「分かったわよ。ただし、おばあちゃんの部屋でね」
目的の部屋に行けるなら都合が良いと感じ、海里は黙って頷いた。
部屋に入った香織は、扉を閉めるなり鍵をかけた。海里に向き直り、重い口を開く。
「私、従姉の所に行ってたの。あんまり家にいたくなかったから」
「なぜです?」
「パパとママが喧嘩するからよ。パパは、お兄ちゃんを後継にしようとしていたけど、ママはお兄ちゃんに立石家を相続させるつもりがなかったの。だから、ずっとーー」
そこで言葉を止め、香織は顔を曇らせた。海里は頷く。
「なるほど。では、その従姉さんに話を聞くことはできますか?」
海里の問いに、香織は心底不思議そうな顔をした。なぜそんな顔をするのかと訝しんでいると、香織は驚くべき言葉を口にする。
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