小説探偵

夕凪ヨウ

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Case158.愛の刃①

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「学生時代の恋愛関係?」

 玲央は目を丸くして海里を見た。玲央の隣にいる龍も怪訝な顔をしている。

「はい。お2人ともどうだったのかと気になりまして。」

 海里の言葉に玲央は目を逸らしながら答えた。

「いや、まあ・・・告白とかはよくされたけど・・・・。」
「よくどころじゃないだろ、兄貴。あんた毎日されてたじゃないか。」

 龍の言葉にムッとした玲央はすかさず言った。

「君だって大して変わらないだろ?ほとんど振ってたくせに。」
「好きでもない女と付き合う思考は持ち合わせてねえよ。兄貴は妙な優しさで付き合うから勘違いされるんだろ?」

 2人の会話を、海里は興味深そうに聞いていた。

「君もなんだかんだ付き合ってたけど、結局風子を選んだもんね。子供の頃から両想いだったのに、何で何もしなかったんだか。」
「雫とこじらせてた兄貴に言われたくないな。」
「お2人とも兄弟ですね。恋愛模様まで似るなんて。」

 海里は笑った。龍は少し不満そうな顔をしながら尋ねる。

「そういうお前はどうなんだ?江本。容姿を含め、色々目立っただろ。」

 海里は学生時代を思い出しながら言った。

「そうですね・・・。確かに色んな女性から想いを告げられることはありましたよ。ただ、付き合ったことはほとんどないです。」
「ほとんどってことは何回かはあるんだ?」
「ええ。大学進学に先立って別れましたけど。」

 飄々としている海里の態度に、2人は首をすくめた。


 そもそも、なぜ3人がここにいるのかと言うと・・・・

「親睦深めるために、ご飯行ってきなよ。」
「・・・・何言ってんだ?親父。」

 玲央と龍の父親・武虎の提案だった。近くに良いレストランがあるから、行けばいいと行ったのだ。

「江本君とはもう親しいと思うんだけど。」
「まあまあ。まだお互い知らないこともあるだろうし、学生時代に戻った気分で行ってきなよ!きっと楽しいから。」

 ということである。

「確かに学生時代の話なんてしてませんけど、理由に無理がありませんか?」
「同感。父さんは何を思ってこんなこと・・・。」

 その時、海里は店にあるテレビに目を止めた。先程からずっとはニュースが流れている。

『東京都N区の山中で、男性の遺体が発見されました。身元は都内で働く安芸雄一郎さんだと分かっており・・・。』

 突然、龍が立ち上がった。2人は驚いて目を丸くする。

「東堂さん?どうされたんですか?」
「安芸・・雄一郎・・・って・・まさか・・・・。」

 玲央がハッとし、自分のスマートフォンをいじり始めた。彼は写真の画面をスクロールしながらふと手を止める。

「もしかして、彼?」

 玲央が見せた写真には、学生時代の龍と玲央、そして、1人の少年が映っていた。龍は写真を一瞥し、頷く。同時に、龍のスマートフォンが鳴った。

『東堂警部!今どちらにいらっしゃいますか?』
「警視庁の近くだ。N区の山中か?」
『え?ああ・・はい、そうです!』
「すぐ行く。」

 龍は溜息をつきながらスマートフォンをしまった。

「父さんも手を回すなあ。テレビが付いている店を選んで、俺たちにこのニュースを知らせたかったんだ。龍の記憶力と過去の友人関係から、覚えていると踏んだのかな。」
「タチが悪過ぎるんだよ・・・。」

         ※

「遅かったわね。」
「ちょっと父さんに嵌められて。」
「はあ?」

 アサヒは顔を歪ませた。呆れながら溜息をつき、現場へ案内する。

「全員遺体を見慣れてるから大丈夫だと思うけど・・・ちょっと損傷が酷いから気をつけて。」

 海里たちは遺体を見て言葉を失った。 両腕が焼け爛れ、眼球が潰され、全身に殴打された後がある。極め付けは、額に石で殴られた跡。血は固まっているが、頭蓋骨が割れているのか、骨らしき白い物がが見えた。

「・・・酷いですね。第一発見者は?」
「近所の住民よ。通報時間は1時間前の12時20分。草刈りをしていた時、土の中から見つけたんですって。」
「草刈り中・・・。被害者は、殺された後、土の中に埋められていたということですね。」
「ええ。服はスーツ・・・。サラリーマンね。身元は胸ポケットに入っていた免許証で確認できたわ。5日前から行方不明で、失踪届と捜索願いが出されていたの。名前は・・・」
「安芸雄一郎。」

 アサヒが答える前に龍がそう言った。知り合い?、と尋ねる。

「高校の同級生だ。割と仲は良かったよ。」
「・・・・そうなの。」

 龍はそれ以上遺体を見ようとせず、被害者の所持品に触れた。皮のバッグはまだ新しく、傷1つ付いていない。取り出された中身には、仕事の資料や日用品があった。

「ご結婚されていたんですね。薬指に指輪があります。」
「そうみたいね。現在、奥さんは妊娠中だそうよ。」

 海里は唇を噛んだ。遺体に手を合わせ、横に屈む。

「額だけでなく、他も石で殴られたんですね。力がないからでしょうか。」
「そうとは言い切れないよ。痛めつけるために石をわざわざ選んだ可能性もある。まあどちらにせよ、犯人は普通じゃない。明らかに異常者だ。」

 玲央の言葉に沈黙が流れた。やがて、所持品を調べていた龍は立ち上がり、口を覆いながら去って行った。

「東堂さん!」
「今回の調査は無理かもね。全く・・・父さんも酷なことを。」
「これは武虎さんの計算なんですか?」
「そうとしか考えられない。わざわざテレビのある店であのニュースが流れるなんて普通、ないよ。帰ったら色々聞き出さなきゃ。」

 玲央は溜息をついた。アサヒは首をすくめる。

「でも、龍が来たおかげではっきりしたかもしれないわ。」
「はっきりした?何がですか?」

 アサヒは少し声を顰めて続けた。

「・・・・最近、行方不明者が多かったのよ。気になって調べたら、全員私や龍と同じ年齢で、玲央と龍2人と同じ中学や高校出身だった。偶然にしては出来過ぎね。」

 海里は驚いた。玲央は考え込むように俯く。

「東堂さんも狙われているってことですか?」
「可能性はなくもないけど、そう簡単に警察に手が出せないことは犯人も分かっているはずよ。下手な真似はしないと思うけど。」
「・・・・でも確信はない。アサヒ。後でその調査結果見せて。」
「分かったわ。じゃあ私たちは引き上げるから、後よろしくね。」
「うん。君も色々気をつけてくれ。狙われている可能性は0じゃない。」

 アサヒは全く危機感がないと分かるほど軽く手を振り、言った。

「はいはい。また後でね。資料見せるから。」

 その後、海里たちは調査を進めたが、犯人の手がかりは見つからずに一時引き上げとなった。現場への立ち入りを禁じ、明日の捜査のため、3人はそれぞれの帰路へついた。


 そして翌日、アサヒが消えた。
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