小説探偵

夕凪ヨウ

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Case222.白と黒の集結②

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 巨大なシャンデリアが輝き、部屋の中は昼間のように明るかった。男女問わずワインを片手に微笑み、次々と財務大臣に挨拶をしている。

「上流階級、って言うのかな。空気感が違うね。」
「まあ、そうね。財務大臣の友人なんて私たちからは想像も付かない金回りでしょうし。」

 アサヒの言葉に玲央は肩をすくめた。部屋の中央では小夜が大臣や議員たちにぎこちなく挨拶をしている。

「兄貴、来るの遅かったな。どこか行ってたのか?」
「ん?あー・・まあ、ちょっとね。小夜との待ち合わせ場所が遠かったっていうか。」

 龍は訝しげに兄を見た。玲央はそれ以上何も言わず、アサヒと会話を続ける。龍は背後を振り返り、父と伯父を見た。

「あっちに行かなくていいのかよ。元々呼ばれたのは2人なんだろ?」
「政府の人間に媚び売ってるほど暇じゃねえよ。そもそも招待状を出したのは大臣の奥方だ。大臣本人は誰が来たかなんて8割方、把握してない。」

 龍と玲央は思わず視線を動かした。確かに、大臣は顔を見てから少し驚き、考え、愛想笑いを浮かべながら挨拶しているのがほとんどだった。

「よく見てるな。」
「お前らもすぐに身につくよ。元が優秀なんだから。」

 武虎と信蔵はパーティー会場に馴染みながら周囲を見渡していた。2人は言う。

「やっぱり何か“いる”気がする・・・。明確な位置は分からないけど、監視カメラや盗聴器だけじゃない。」
「ああ。問題はこれを仕掛けてんのがあの大臣か、そうじゃないか・・・だ。」

 アサヒは自分たちの反対側にいる父と兄を見た。それらしい笑みを浮かべているが、楽しんでいないことは明らかである。

「しかし、残念だぜ。お前らが信頼してる、江本海里って奴に会ってみたかったんだけどな。」
「仕方ないよ。原稿が溜まってたみたいだし。」
「このところ色々あったからな、あいつ。」

 少しの間談笑していると、一回り挨拶をし終えた小夜が歩いてきた。かなり疲れた顔をしており、勧められるワインも断っている。

「大丈夫?」
「あんまり・・。今日は早めに帰って寝たいわ。」
「そうした方がいいよ。顔色も良くないし。」

 2人を見ている信蔵は、不思議そうに首を傾げて言った。

「玲央、お前天宮の嬢さんと付き合ってんのか?」

 水を飲んでいた玲央は思いっきり咳き込んだ。小夜も咳払いをしている。

「何言ってるの、伯父さん。そんなわけないだろ?小夜とは割と付き合いが長いから、そういうことも分かるだけだよ。」

 信蔵は武虎の方を見た。武虎はそっとしておいてやれ、と言わんばかりに苦笑する。

「それにしても、アサヒ。お前はこんな催し事、嫌いだろ?よく来る気になったな。」
「ええ。初めは嫌だったわよ。でも仕事に絡んでいるなら仕方ないし、何より・・・あの2人を見張ってかなきゃいけない気がしたもの。」

 アサヒはうんざりとした顔で2人を見た。微かな薬品臭が龍たちの方まで漂ってくる。

「あの後、実家に戻って何かないか調べたわ。でも・・・何もなかった。残している方がおかしいけど、少しくらいあってもいいものでしょう?もしかしたら定期的に処分しているのかも、って思ったのよね。」
「あり得るな。」

 すると、大臣がグラスを掲げて乾杯の準備が始まった。

「今宵は改革成功のパーティーにお集まり頂き、感謝致します。これからも日本の繁栄と平和を祈ってーーー乾杯‼︎」

 クラッカーが鳴り、音楽がかけられた。手を取り合い、ダンスを始める。

「踊らねえのか?若人たちは。」
「そんな教養ねえよ・・・。」

 東堂家の4人は端に寄ったが、長身で面立ちも整っている彼らは自然と目に留まった。アサヒと小夜は自覚がない4人を見て首をすくめる。

「ん・・・?何だ?今、何か・・・。」
「龍も感じた?よく分からないけど、何かがこっちに向かって来ているような・・・。」

 その瞬間、窓の外に眩い閃光が見えた。4人は瞬時に全てを理解し、玲央は側にいた小夜の腕を思いっきり引っ張った。

「玲央⁉︎」

 窓ガラスが割れ、何かが小夜の横を通り過ぎた。銃弾である。玲央は間一髪で躱したつもりだったが、躱しきれず、小夜は左肩から出血していた。

「小夜!大丈夫⁉︎」
「大丈夫よ、これくらいなら・・・。」

 一気に会場が騒がしくなった。同時に、勢いよく窓ガラスが割れ、武装した男たちが屋敷に侵入した。

「炎の刺青・・・!まさか、こんなところで・・・。」

 龍は苦々しげに呟いたが、最早話す時間すらなかった。男たちは銃を構え、合図なく一斉に斉射した。
                     
         ※

「今の音は・・・?」

 打ち合わせで帰りが遅くなった海里は、わずかに聞こえた銃声らしき音に足を止めた。辺りを見渡したが、悲鳴は聞こえない。

「気のせい・・でしょうか。早く帰らないと・・・。」

 そう言いながらも、海里は不安が拭いきれなかった。
 そして、龍たちが大臣の屋敷のパーティーに招かれていることを、この時思い出したのだ。

(もしそれをテロリストが知れば、警察を潰す絶好の機会になる・・・。銃すら持たない警察官は、彼らにとっては無力そのものだ。)

「こうしてはいられませんね。」

 海里は真衣に帰りが何時になるか分からないと連絡し、踵を返して警視庁に向かった。

(義則さんや撫子さんがいるかもしれない。仮にそのお2人がいなくても、松坂警視や井上警視正がいらっしゃったら・・・!)
                    
         ※

「クソ!こんな時に襲撃してくるなんて・・・‼︎」
「文句は後回しにしろ、玲央。この状況をどうにかしねえと、俺ら全員あの世行きだ。つまらねえ死に方はしたくないだろ?」

 信蔵の言葉に、龍と玲央は頷いた。

「父さんと伯父さんは招待客の避難と警察に連絡してくれ。怪我人は病院に連れて行って欲しい。」
「2人で残る気?無茶だよ。」
「無茶でも誰かが止めないとならないんだ。安心しろって、親父。こんなことで死んだりしない。」
「・・・それならいいけど。」

 2人は物陰からテロリストたちの様子を伺った。闇に紛れて来たのか、大勢ヘリから降りて来る。

「さて・・と、始めようか。」
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