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現代篇
3話 しがらみ
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◆❖◇◇❖◆
湿っぽく陰鬱な夜のベッドタウンには、虫の音色さえない。女の啜り泣きにも似た夜風が、か細く鳴りながら電線を揺らしている。
此処は昭和の中盤にベッドタウンとして開発された街だが、最近著しく過疎化が進み、暮れ時を過ぎれば人通りは疎か車さえも全く通らない。
音もなくただ存在だけが異様に濃い集団住居の群れは、まるで廃墟のようだ。
ゆるく吹き上げる夜風はどこか微かに生臭く、腐臭にも似た瘴気を孕んでいた。
宵闇に浮いた半月は野ざらしの髑髏のように無機質な色を晒して、浩々と下界を照らしている。
だが、唐突にその『半月』が大きく引き攣って、チェシャ猫の口に………嘲笑の形に歪んだ。
歪みながらゆっくりと掻き消えたあと、今度は黒い闇の表面にくぱりと紅く細い亀裂が犇る。
【じゅる…】
だらしなく滴る唾液に絖る牙の覗く“それ”は、間違いなく口だった。
朧に明暗を繰り返しながら闇を漂う様子は、人魂、もしくは水母にも似ている。
その『何か』は不安定に蠢きながら建物の影が作りだす漆のような闇の中で粘土細工のように形を変えた。
【ぐふぅぅぅ…ウウウゥ…ウウウウウ…】
やがて不可解な鳴き声と共に影から滲み出して現れたのは、凶悪で鋭利な鈎爪を持つ血膿色の獣だった。
ケモノ……いや。形はそのものだが、元は“人や獣の霊魂だったもの”が濃い執着を持ちながら変異を起こしたいわゆる怨霊体なのである。
堕落者と呼ばれるこの怪物は、霊力の高い幽霊や生身の人畜を好んで襲う性質があり、おそらく今もどこか余所で魂魄を捕食してきたのだろう。
生臭い腐臭を纏い、全体的に血膿色に見える身体は一部だけ黒い地色を残して斑になっていた。
血走った眼は銀光を弾いて、凶悪に赤い。
【アァァァァァァァ――――……っ!! 】
悲鳴じみた咆哮が冷気を揺るがせ、地響きが闇を攪拌する。夜空に向けた咆哮に篭るのは果たして、歓喜か悲しみか。
それは誰にも解らない。或いは、そこに意味など存在しないのかも知れなかった。
【ふ、グ、うフふ、ふゥ……エモの…ミツ、ケタ】
異獣は舌足らずな声で鳴き、大きく跳躍すると巨体を撓やかに操ってそのまま闇に溶け込んでいった。
◆❖◇◇❖◆
【なあ、なにか俺に言うことねえか?】
「…むしろ、説教なら山ほどある。テレビの次は電子レンジを壊すとは、ろくな事をしないな…」
忙しなく湯気を噴く薬缶の音を背景に、穏やかな夜には似つかわしくない不穏な空気が部屋中にミッチリ熾烈に展開されている。
というのも、原因は啓司が『うっかり』透過したせいで電子レンジが故障したからなのだが、当の犯人は『不可抗力であり自分は悪くない』とへそを曲げているのだ。
どうしても、自業自得を認めたくないらしい。
【だから俺のせいじゃねえって! ちょっと擦り抜けただけで壊れるかよ?!】
「それは霊障だ。れ・い・しょ・う! 霊と家電は相性が悪いのだっ」
【だからって急に殴るこたないだろうが。…ったく、ひっでえ怪力だなぁ…】
※ちなみに右フックを食らって、頬が腫れている。
「なんだと! なんならもう一発いっとくか?」
【おう、やれるモンならやってみな!】
「貴様…っ」
まさに売り言葉に買い言葉…。
“危険だからやめておけ”と勘が言うが衝動は止まらない。啓司の男としての意地とプライドが闘争へ駆り立てるが……。
────ぼきぃ…っ!
…パラパラパラ…。
【や、や、やっぱり遠慮しまっす!】
目前で呆気なく木っ端微塵になった万年筆を見た彼は、脅威を前にして即座に戦線離脱を宣言した。
なにを隠そう、この男は基本的に小心なのである。
「そうか、それは(実力行使ができなくて)残念だ。まったく、修理と買い換え…どっちが安いだろうな?」
【う…。すんません…】
「謝罪したからといっても、すぐに許される訳では無いぞ。そう、肝に銘じておけ」
鋭い眼光に睨まれた啓司が萎らしく背を丸めるが、毛頭許すつもりのないソラは、語気荒く切り捨てる。初対面が悪かったことも影響してか、何かと距離を縮めてこようとする青年霊にソラは依然と警戒していた。
「出る」と噂の部屋なので、家賃は相場よりかなり格安で助かるし、イスナからの依頼を果たすことは即すなわち自身の腹を満たす事に繋がるので、文句はない。
しかし、だ。想像していた生活とのギャップ(幽霊との同居)が激し過ぎて、なんとも言えない不快感が未だにソラを意固地にさせていた。
【ちぇっ。なんだよ、被害者はこっちだっつーの…】
返ってくるだろう毒舌と再びの拳骨に構えていたが、いつまで待ってもソラからの反撃はない。
不思議に思って様子を窺うと、ソラは淡々とダンボールの中身を仕分けている。
ダンボールの中身を見つめるソラの眼差しは、まるでなにかを堪え…悼んでいるようだった。
【お、おい…?】
『……道具の細部に至るまで、しっかり手入れが行き届いていた。……お前は、常に死を見据えていたのだな……』
身を乗り出すようにしてソラの肩に触れた瞬間…啓司の胸中を痺れの塊が鋭く貫通していく。
彼女(?)から伝わってきたのは“誰かの死を悼む”細い糸のように頼りない思念だった。
(これは、哀惜だ。亡くした誰かを想って…いや、悲しんでいる。コイツにも…大事なヤツ、いたんだろうか…。きれーな顔してるもんなァ。そりゃ…恋人ぐらい、いるよなァ…)
伝わってきた思念を傍受して、啓司はきつく息を詰める。
背を向けて段ボールを漁っているソラの横顔はどこか寂しそうで、今にも泣き出しそうな具合さえ窺える。
一体、誰を想っているのだろう。
そんな気がかりが生まれて、思わず閉口する。
「…滅多やたらと触るな、煩わしい」
馴れ合い=肚の探り合いが嫌いなソラは、不意に肩へと乗った大きな手の感触を振り払いそうになる衝動を抑えながら再び奥歯を噛み締めた。
なぜだか、この青年霊に触れられると無意識に身体が悸く。
おそらく拒否だとは思うがイスナの記憶を読み取る方が重要なので、ごちゃごちゃしい理由の追求解明など正直面倒くさい。
【でもさお前、いま自分がどんな顔してるか解ってるか?】
「…それこそ…どうでもいいな」
光の加減によって色彩を変える紫灰色の双眸は、まるでガラス玉のようだ。
目に光がないソラのその表情は、一切の同情を遮断して只管に「無」。
吐き捨てて云う麗人に、啓司は渋面を作る。
『触るな』と拒絶を放つ理由は詮索しないが、過剰に接触を拒むソラを不憫に思うと同時にそれ程に他人を信頼できないのかと、無性に悲しくなった。
【よかねえっての。あのな、少なくても俺は心配するぞ】
「なぜ」
【ん?】
「なぜ貴様は…会って間もない奴の事を律儀に気にかける。そこが不可解だ」
【俺さ、お前のこと…もっと知りたいんだよ。だからさ、あとちょっと…ちょっとでいいから歩み寄れねえかな。せっかくの美人なんだ、そんな風にカリカリ怒ったら勿体ねえぜ?】
逃がすもんか!とばかりに言い募る啓司の薄いブラウンの双眸が、直とまっすぐにソラを捉える。
「なん、だと…」
それがなんだか熱を帯びているように見え、嫌悪のせいか体感温度が更に2度ほど下がった。
「…私を…知りたい?」
……一体、自分の“なに”を知りたいというのだ?得も然程あるまいに、不可解でしかない。
どうして、そんな真っ直ぐな目で私を見る…。
甘い言葉を吐きつける?……
「一体なんのつもりだ…。ふざけるな」
まさか、……まさかこの男は私を「女」だと思っているのではあるまいか…?
この態度から推察すると、あながちハズレでもなさそうだ。
だとしたら、とてつもなく不毛で、不愉快。
そもそもの話、この身体には、性別が判別できる特徴が存在しないのだから。
【お前は、まあたそうやって言う…。少しは歩み寄りというやつをだな…】
「止めておけ。知ってどうする。必ず後悔すると分かっていながら、なぜ自ら進んでリスクを負おうとする?頼むから、必要以上に構ってこないでくれ。……迷惑だ」
言葉に宿る最もデリケートな感情を感じ取ったソラの機嫌は、急転直下に悪化した。
受け止めるだなんて、できる訳がない。
未知の異形に対して人間を含めた誰もが神経質になり、個人の常識・物差しを押し付け、理解されないと分かれば拒絶・排斥に動くのだろう。
今までだって長いことそうだったじゃないか。他人に絆されてはいけない。
「私の事は放っておけ」
さもなくば死ぬぞ、と声を低くして脅せば啓司はシャボン膜のように揺らいで姿を消した。
……そうだ、それが互いに一番フェアな方法だ……。
堕落者を狩る以上、この青年霊にも確実に死を伴う災厄が及ぶだろう。
宿敵を前に志半ばで散ったイスナのように、もう二度と目前で命が失われる惨劇は見たくはない。
なにより自分は、彼女の遺志を果たすために此処にいる。
依頼を果たすまでの関わりなのだ、不必要に愛着が湧くのは好かない。
啓司の気配が消えたことに静かに安堵しながら、作業を再開したその時だった。
【……あのなあ……んなコト言われて、放っとけるかよ…】
体温のない腕が無遠慮に腰へまわり、そのままソラの身体を抱き取っていた。
「何のつもりだ、離せ。今度こそ消し炭になりたいか」
【まあまあ、そんなにカリカリすんなって。な?】
事情に踏み込まれたくないソラは啓司の胸板を殴り付け、脛を蹴って暴れるが、腕には更なる力が込められる。
強くありながらも、逃げようと思えば簡単に逃げ出せる力加減は…間違いなく自身を女性として扱っているのは明らかだった。
「明らかに距離感がおかしいだろう、離せ! おい、聞こえないのか貴様っ」
大まかに意図を汲み取ったソラの胸中に何とも言い難い強烈な怒りの感情が湧き上がる。
怒りのまま声を荒げれば、啓司の怜悧な目許が悲しげに弛んだ。
【消し炭は嫌だけどさ、お前が自分の気持ちに嘘つく方が…俺は嫌だな…】
「っ…」
だからどうしたと撥ね付けるのは簡単なのに、啓司の真摯な眼差しに囚われた瞬間、金縛りにあったような感覚に陥る。
「や……っ、めろ。離せったら!」
【いやだ】
───────どぐんっ!!
「……くっ、余計な、世話を焼くのは止せ…」
さらに心臓が重く振動する感覚を得たソラは、渦巻きつつある“衝動”に背を震わせる。
どくどくと全身が脈打ち、熱い魔力が遂に頭を擡げようとしていた。
────いけない。────
これ以上、魔力が膨張すれば“今の容姿”を保てないばかりか、建物ごと破壊してしまう虞れがある。
鎮まれ、鎮まれ…鎮まれ、鎮まれ…。
ソラは奥歯を噛み締め、膨張を続ける魔力を抑え込むが…魔力の膨張が留まる様子はない。
【おい、どうした…ひでえ汗だぞ】
汗ばんで震えるソラの異状を感じた啓司が咄嗟に額に触れようとするが、乾いた音と共に手は叩き払われる。
「…やめろっ!馴れ馴れしく触れるなと、何度いえば理解する。貴様のアタマは水樽か」
叩き払われた衝撃に加え、魔的な痛覚を思い知らされた啓司だが、同時に氷よりも冷たいソラの“体温”に目を瞠った。
【お前…っ、生身なのに、なんでこんなに冷てェんだよ?!】
「…これが私の平熱だ。本人が認めているのだから、みっともなく食い下がるんじゃない」
噛み付く彼に対して容赦なく毒舌論破するものの、長いこと人ではない者として過ごしてきたソラはすっかり生身の人気に必須な補足設定を忘れていた事を暗に指摘されてようやっと己の失態に気が付いた。
【はあ!? お前、氷漬けかってくらいだぜっ】
情けないやら、恥ずかしいやら…そんな感情も加味されて苛立ちは刻々と膨張していく。
「いい加減にしないか…。まったく、貴様のせいで余計な時間を取られた…」
相変わらずと口喧しい啓司を煩わしく思いながら、ソラはゆっくりと溜息を吐き出す。
人ならば長く生きるうちに大体の記憶を忘れていくのだが、異形は違う。
過ごした年代の分だけ記憶も“その時々に懐いた感情”も鮮明に残って忘れられないのだ。
【なんだよそりゃ…俺のせいだってか、冗談じゃねえぜ】
「…は?」
腕を組んでふてぶてしく口を突き出す啓司に頬を引き攣らせながら、ソラは増加する怒りのボルテージのまま彼を睨む。
お前さえ大人しくしていれば…わざわざ噛み付いてきさえしなければ過去を彷彿する「余計な感情」は生じなかったのだ、まったく要らないことをしてくれる。
「…すると、貴様自身には責任はないと?そうか。…貴様がどういう輩なのか…よくわかった…」
《ジジッ………………ジジジジッ、ジッ…………》
ごくゆっくりとソラから漏れだす濃密な魔力に反応して室内灯の光源がふいに落ち、続けざま磁気嵐の火花が耳障りなノイズを起こす。
衣装箪笥が、サッシに嵌った窓ガラスが、床があたかも地震の横揺れのように小刻みにゆれて異変を示し始めた。
【な…っ、なんなんだよコレ…】
喩えるなら、切れかけたコンビニの消毒灯が明滅する音と、それにTVの砂嵐の音声を重ねたような騒音が轟々と部屋を満たしている。
《バチジジッ………………ジジジジジジジジジッ、ジッ…………。》
【な…なにが起きてんだ? なあっ、答えろよ!】
しきりに問いかける青年霊に対し、嫌悪と怒りの感情に染まり、冷めきったソラは応えない。
やがて、明暗を繰り返しながらメゾンハイツ2号棟201号室がある“場”に、存在するハズのない剥き出しの岩窟が浮彫になって顕れた。
誰も応えない代わりに、猛獣の唸り声じみた風鳴りが啓司を萎縮させ、幾重にも裂けたカーテンのように生温く頬を撫でていく。
深山の暗い岩窟独特の冷たい土の匂いが、ゆっくりと啓司の胸を満たした。
【聞いてんのかよっ、なんとか言ったらどうな……ヒッ!】
必死に解答を捜してもがく啓司だったが、唐突にソラの可細い首が捻れて内部から大木の切り株のように膨れ上がる決定的な形態変化を目の当たりにした瞬間、ついに短い悲鳴を漏らして尻もちをついて後退った。
「……ふん。…貴様も、やはりだな。私が畏ろしいか、人の子」
“ソラだったもの”の全身がそのまま大きく大きく膨張し、全身の筋を軋ませながら群青の羽毛が覆い尽くしてゆく。
青黒い闇が空間全てを支配するのに伴って、生温い吐息がゆっくりとその場に渦巻いた。
「……どうした……何時にも増して、ひどい顔だ」
やがて遂に、乾いた羽音と共に巨大な翼を持つ異形が居住まいを正して上体を擡げる。
生ぬるい闇というよりも「生命体」の胎内にいるような感覚に陥った啓司は、パッチリと開いた長い睫毛に縁取られた金碧の双眸に射竦められた時……滲む恐怖をそのままに固唾を飲んだ。
【お、お前は…】
……一体……何者なんだ?……
目は口ほどに物を言うという諺のとおり、口に出さずとも彼の言わんとする疑問を拾ったソラは自虐的な気分で胸を反らす。
「ああ、そうとも。わたしは人ではない。その様子だと、それ以外の“なにか”を見るのは初めてのようだな。どうだ……怖いか。怖いだろう。……だから…止めておけ、と先に止めたのだ」
(受け止めると云った癖に、結局は本能的な恐怖には抗えず、見る影もなく身を竦ませ怯えるとは…。人間とは本当に浅はかな存在だ)
恐怖-畏怖-忌避…そんな感情を綯い交ぜにした啓司の眼差しを鑑みて鼻白むが、何故なのか怒りよりも心臓を抉り出されたような痛みがまとわりついてくる。
ソラ自身も大昔は何の変哲もない、ただの人間だった。だから啓司の心情が理解できない訳でもない。
寧ろ、恐怖に囚われて立ち竦むそれが正常な人間の反応なのだと悟ってしまい、ソラは静かに落胆した。
「まあ、人間風情には…仕方のないことだな…」
忌避されるのも、憎まれて矢や鉛玉を撃ち込まれるのも、もう懲り懲りなのだが────自分のような異形など…怖がられても仕方がない。それが正直な感情なのだ。
こんな身になっても、誰か他人に嫌悪されるのはツラいし───みじめである。
「はあ……もういい、面倒くさい」
どうせこの部屋はワタリギツネとイスナの依頼を果たす為に間借りしているだけなのだし、丁度いい機会だ、ここには必要最低限…寄り付かないようにしよう。
「……これで懲りただろ。もう二度と関わるなよ」
感情の鎮静化に伴って、群青の翼が薄らいで消える。全体的に羽毛が消失して、ソラは鬼梟からイスナの容姿に形状を戻した。
【お、おい……ソラ…?】
「私はもう、此処には二度と立ち入らないから、貴様は…今まで通り此処で過ごせばよい」
【…は?】
はい、さようなら。一件落着。
淡々粛々と告げられた訣別が理解出来ず、啓司は立ち竦んだ。
呆然と立ち尽くす彼を放置して、畳んだダンボールを小脇に挟んだソラは足早に玄関に向かい、靴を履いてそのまま出ていった。
【……おい、待てよ…】
鼻先で鉄扉が閉まるのを、啓司は驚愕冷めやらぬ表情で見送る。
呼びかけに一切反応しないまま、華奢な背中は階段を降りていく。
湿っぽく陰鬱な夜のベッドタウンには、虫の音色さえない。女の啜り泣きにも似た夜風が、か細く鳴りながら電線を揺らしている。
此処は昭和の中盤にベッドタウンとして開発された街だが、最近著しく過疎化が進み、暮れ時を過ぎれば人通りは疎か車さえも全く通らない。
音もなくただ存在だけが異様に濃い集団住居の群れは、まるで廃墟のようだ。
ゆるく吹き上げる夜風はどこか微かに生臭く、腐臭にも似た瘴気を孕んでいた。
宵闇に浮いた半月は野ざらしの髑髏のように無機質な色を晒して、浩々と下界を照らしている。
だが、唐突にその『半月』が大きく引き攣って、チェシャ猫の口に………嘲笑の形に歪んだ。
歪みながらゆっくりと掻き消えたあと、今度は黒い闇の表面にくぱりと紅く細い亀裂が犇る。
【じゅる…】
だらしなく滴る唾液に絖る牙の覗く“それ”は、間違いなく口だった。
朧に明暗を繰り返しながら闇を漂う様子は、人魂、もしくは水母にも似ている。
その『何か』は不安定に蠢きながら建物の影が作りだす漆のような闇の中で粘土細工のように形を変えた。
【ぐふぅぅぅ…ウウウゥ…ウウウウウ…】
やがて不可解な鳴き声と共に影から滲み出して現れたのは、凶悪で鋭利な鈎爪を持つ血膿色の獣だった。
ケモノ……いや。形はそのものだが、元は“人や獣の霊魂だったもの”が濃い執着を持ちながら変異を起こしたいわゆる怨霊体なのである。
堕落者と呼ばれるこの怪物は、霊力の高い幽霊や生身の人畜を好んで襲う性質があり、おそらく今もどこか余所で魂魄を捕食してきたのだろう。
生臭い腐臭を纏い、全体的に血膿色に見える身体は一部だけ黒い地色を残して斑になっていた。
血走った眼は銀光を弾いて、凶悪に赤い。
【アァァァァァァァ――――……っ!! 】
悲鳴じみた咆哮が冷気を揺るがせ、地響きが闇を攪拌する。夜空に向けた咆哮に篭るのは果たして、歓喜か悲しみか。
それは誰にも解らない。或いは、そこに意味など存在しないのかも知れなかった。
【ふ、グ、うフふ、ふゥ……エモの…ミツ、ケタ】
異獣は舌足らずな声で鳴き、大きく跳躍すると巨体を撓やかに操ってそのまま闇に溶け込んでいった。
◆❖◇◇❖◆
【なあ、なにか俺に言うことねえか?】
「…むしろ、説教なら山ほどある。テレビの次は電子レンジを壊すとは、ろくな事をしないな…」
忙しなく湯気を噴く薬缶の音を背景に、穏やかな夜には似つかわしくない不穏な空気が部屋中にミッチリ熾烈に展開されている。
というのも、原因は啓司が『うっかり』透過したせいで電子レンジが故障したからなのだが、当の犯人は『不可抗力であり自分は悪くない』とへそを曲げているのだ。
どうしても、自業自得を認めたくないらしい。
【だから俺のせいじゃねえって! ちょっと擦り抜けただけで壊れるかよ?!】
「それは霊障だ。れ・い・しょ・う! 霊と家電は相性が悪いのだっ」
【だからって急に殴るこたないだろうが。…ったく、ひっでえ怪力だなぁ…】
※ちなみに右フックを食らって、頬が腫れている。
「なんだと! なんならもう一発いっとくか?」
【おう、やれるモンならやってみな!】
「貴様…っ」
まさに売り言葉に買い言葉…。
“危険だからやめておけ”と勘が言うが衝動は止まらない。啓司の男としての意地とプライドが闘争へ駆り立てるが……。
────ぼきぃ…っ!
…パラパラパラ…。
【や、や、やっぱり遠慮しまっす!】
目前で呆気なく木っ端微塵になった万年筆を見た彼は、脅威を前にして即座に戦線離脱を宣言した。
なにを隠そう、この男は基本的に小心なのである。
「そうか、それは(実力行使ができなくて)残念だ。まったく、修理と買い換え…どっちが安いだろうな?」
【う…。すんません…】
「謝罪したからといっても、すぐに許される訳では無いぞ。そう、肝に銘じておけ」
鋭い眼光に睨まれた啓司が萎らしく背を丸めるが、毛頭許すつもりのないソラは、語気荒く切り捨てる。初対面が悪かったことも影響してか、何かと距離を縮めてこようとする青年霊にソラは依然と警戒していた。
「出る」と噂の部屋なので、家賃は相場よりかなり格安で助かるし、イスナからの依頼を果たすことは即すなわち自身の腹を満たす事に繋がるので、文句はない。
しかし、だ。想像していた生活とのギャップ(幽霊との同居)が激し過ぎて、なんとも言えない不快感が未だにソラを意固地にさせていた。
【ちぇっ。なんだよ、被害者はこっちだっつーの…】
返ってくるだろう毒舌と再びの拳骨に構えていたが、いつまで待ってもソラからの反撃はない。
不思議に思って様子を窺うと、ソラは淡々とダンボールの中身を仕分けている。
ダンボールの中身を見つめるソラの眼差しは、まるでなにかを堪え…悼んでいるようだった。
【お、おい…?】
『……道具の細部に至るまで、しっかり手入れが行き届いていた。……お前は、常に死を見据えていたのだな……』
身を乗り出すようにしてソラの肩に触れた瞬間…啓司の胸中を痺れの塊が鋭く貫通していく。
彼女(?)から伝わってきたのは“誰かの死を悼む”細い糸のように頼りない思念だった。
(これは、哀惜だ。亡くした誰かを想って…いや、悲しんでいる。コイツにも…大事なヤツ、いたんだろうか…。きれーな顔してるもんなァ。そりゃ…恋人ぐらい、いるよなァ…)
伝わってきた思念を傍受して、啓司はきつく息を詰める。
背を向けて段ボールを漁っているソラの横顔はどこか寂しそうで、今にも泣き出しそうな具合さえ窺える。
一体、誰を想っているのだろう。
そんな気がかりが生まれて、思わず閉口する。
「…滅多やたらと触るな、煩わしい」
馴れ合い=肚の探り合いが嫌いなソラは、不意に肩へと乗った大きな手の感触を振り払いそうになる衝動を抑えながら再び奥歯を噛み締めた。
なぜだか、この青年霊に触れられると無意識に身体が悸く。
おそらく拒否だとは思うがイスナの記憶を読み取る方が重要なので、ごちゃごちゃしい理由の追求解明など正直面倒くさい。
【でもさお前、いま自分がどんな顔してるか解ってるか?】
「…それこそ…どうでもいいな」
光の加減によって色彩を変える紫灰色の双眸は、まるでガラス玉のようだ。
目に光がないソラのその表情は、一切の同情を遮断して只管に「無」。
吐き捨てて云う麗人に、啓司は渋面を作る。
『触るな』と拒絶を放つ理由は詮索しないが、過剰に接触を拒むソラを不憫に思うと同時にそれ程に他人を信頼できないのかと、無性に悲しくなった。
【よかねえっての。あのな、少なくても俺は心配するぞ】
「なぜ」
【ん?】
「なぜ貴様は…会って間もない奴の事を律儀に気にかける。そこが不可解だ」
【俺さ、お前のこと…もっと知りたいんだよ。だからさ、あとちょっと…ちょっとでいいから歩み寄れねえかな。せっかくの美人なんだ、そんな風にカリカリ怒ったら勿体ねえぜ?】
逃がすもんか!とばかりに言い募る啓司の薄いブラウンの双眸が、直とまっすぐにソラを捉える。
「なん、だと…」
それがなんだか熱を帯びているように見え、嫌悪のせいか体感温度が更に2度ほど下がった。
「…私を…知りたい?」
……一体、自分の“なに”を知りたいというのだ?得も然程あるまいに、不可解でしかない。
どうして、そんな真っ直ぐな目で私を見る…。
甘い言葉を吐きつける?……
「一体なんのつもりだ…。ふざけるな」
まさか、……まさかこの男は私を「女」だと思っているのではあるまいか…?
この態度から推察すると、あながちハズレでもなさそうだ。
だとしたら、とてつもなく不毛で、不愉快。
そもそもの話、この身体には、性別が判別できる特徴が存在しないのだから。
【お前は、まあたそうやって言う…。少しは歩み寄りというやつをだな…】
「止めておけ。知ってどうする。必ず後悔すると分かっていながら、なぜ自ら進んでリスクを負おうとする?頼むから、必要以上に構ってこないでくれ。……迷惑だ」
言葉に宿る最もデリケートな感情を感じ取ったソラの機嫌は、急転直下に悪化した。
受け止めるだなんて、できる訳がない。
未知の異形に対して人間を含めた誰もが神経質になり、個人の常識・物差しを押し付け、理解されないと分かれば拒絶・排斥に動くのだろう。
今までだって長いことそうだったじゃないか。他人に絆されてはいけない。
「私の事は放っておけ」
さもなくば死ぬぞ、と声を低くして脅せば啓司はシャボン膜のように揺らいで姿を消した。
……そうだ、それが互いに一番フェアな方法だ……。
堕落者を狩る以上、この青年霊にも確実に死を伴う災厄が及ぶだろう。
宿敵を前に志半ばで散ったイスナのように、もう二度と目前で命が失われる惨劇は見たくはない。
なにより自分は、彼女の遺志を果たすために此処にいる。
依頼を果たすまでの関わりなのだ、不必要に愛着が湧くのは好かない。
啓司の気配が消えたことに静かに安堵しながら、作業を再開したその時だった。
【……あのなあ……んなコト言われて、放っとけるかよ…】
体温のない腕が無遠慮に腰へまわり、そのままソラの身体を抱き取っていた。
「何のつもりだ、離せ。今度こそ消し炭になりたいか」
【まあまあ、そんなにカリカリすんなって。な?】
事情に踏み込まれたくないソラは啓司の胸板を殴り付け、脛を蹴って暴れるが、腕には更なる力が込められる。
強くありながらも、逃げようと思えば簡単に逃げ出せる力加減は…間違いなく自身を女性として扱っているのは明らかだった。
「明らかに距離感がおかしいだろう、離せ! おい、聞こえないのか貴様っ」
大まかに意図を汲み取ったソラの胸中に何とも言い難い強烈な怒りの感情が湧き上がる。
怒りのまま声を荒げれば、啓司の怜悧な目許が悲しげに弛んだ。
【消し炭は嫌だけどさ、お前が自分の気持ちに嘘つく方が…俺は嫌だな…】
「っ…」
だからどうしたと撥ね付けるのは簡単なのに、啓司の真摯な眼差しに囚われた瞬間、金縛りにあったような感覚に陥る。
「や……っ、めろ。離せったら!」
【いやだ】
───────どぐんっ!!
「……くっ、余計な、世話を焼くのは止せ…」
さらに心臓が重く振動する感覚を得たソラは、渦巻きつつある“衝動”に背を震わせる。
どくどくと全身が脈打ち、熱い魔力が遂に頭を擡げようとしていた。
────いけない。────
これ以上、魔力が膨張すれば“今の容姿”を保てないばかりか、建物ごと破壊してしまう虞れがある。
鎮まれ、鎮まれ…鎮まれ、鎮まれ…。
ソラは奥歯を噛み締め、膨張を続ける魔力を抑え込むが…魔力の膨張が留まる様子はない。
【おい、どうした…ひでえ汗だぞ】
汗ばんで震えるソラの異状を感じた啓司が咄嗟に額に触れようとするが、乾いた音と共に手は叩き払われる。
「…やめろっ!馴れ馴れしく触れるなと、何度いえば理解する。貴様のアタマは水樽か」
叩き払われた衝撃に加え、魔的な痛覚を思い知らされた啓司だが、同時に氷よりも冷たいソラの“体温”に目を瞠った。
【お前…っ、生身なのに、なんでこんなに冷てェんだよ?!】
「…これが私の平熱だ。本人が認めているのだから、みっともなく食い下がるんじゃない」
噛み付く彼に対して容赦なく毒舌論破するものの、長いこと人ではない者として過ごしてきたソラはすっかり生身の人気に必須な補足設定を忘れていた事を暗に指摘されてようやっと己の失態に気が付いた。
【はあ!? お前、氷漬けかってくらいだぜっ】
情けないやら、恥ずかしいやら…そんな感情も加味されて苛立ちは刻々と膨張していく。
「いい加減にしないか…。まったく、貴様のせいで余計な時間を取られた…」
相変わらずと口喧しい啓司を煩わしく思いながら、ソラはゆっくりと溜息を吐き出す。
人ならば長く生きるうちに大体の記憶を忘れていくのだが、異形は違う。
過ごした年代の分だけ記憶も“その時々に懐いた感情”も鮮明に残って忘れられないのだ。
【なんだよそりゃ…俺のせいだってか、冗談じゃねえぜ】
「…は?」
腕を組んでふてぶてしく口を突き出す啓司に頬を引き攣らせながら、ソラは増加する怒りのボルテージのまま彼を睨む。
お前さえ大人しくしていれば…わざわざ噛み付いてきさえしなければ過去を彷彿する「余計な感情」は生じなかったのだ、まったく要らないことをしてくれる。
「…すると、貴様自身には責任はないと?そうか。…貴様がどういう輩なのか…よくわかった…」
《ジジッ………………ジジジジッ、ジッ…………》
ごくゆっくりとソラから漏れだす濃密な魔力に反応して室内灯の光源がふいに落ち、続けざま磁気嵐の火花が耳障りなノイズを起こす。
衣装箪笥が、サッシに嵌った窓ガラスが、床があたかも地震の横揺れのように小刻みにゆれて異変を示し始めた。
【な…っ、なんなんだよコレ…】
喩えるなら、切れかけたコンビニの消毒灯が明滅する音と、それにTVの砂嵐の音声を重ねたような騒音が轟々と部屋を満たしている。
《バチジジッ………………ジジジジジジジジジッ、ジッ…………。》
【な…なにが起きてんだ? なあっ、答えろよ!】
しきりに問いかける青年霊に対し、嫌悪と怒りの感情に染まり、冷めきったソラは応えない。
やがて、明暗を繰り返しながらメゾンハイツ2号棟201号室がある“場”に、存在するハズのない剥き出しの岩窟が浮彫になって顕れた。
誰も応えない代わりに、猛獣の唸り声じみた風鳴りが啓司を萎縮させ、幾重にも裂けたカーテンのように生温く頬を撫でていく。
深山の暗い岩窟独特の冷たい土の匂いが、ゆっくりと啓司の胸を満たした。
【聞いてんのかよっ、なんとか言ったらどうな……ヒッ!】
必死に解答を捜してもがく啓司だったが、唐突にソラの可細い首が捻れて内部から大木の切り株のように膨れ上がる決定的な形態変化を目の当たりにした瞬間、ついに短い悲鳴を漏らして尻もちをついて後退った。
「……ふん。…貴様も、やはりだな。私が畏ろしいか、人の子」
“ソラだったもの”の全身がそのまま大きく大きく膨張し、全身の筋を軋ませながら群青の羽毛が覆い尽くしてゆく。
青黒い闇が空間全てを支配するのに伴って、生温い吐息がゆっくりとその場に渦巻いた。
「……どうした……何時にも増して、ひどい顔だ」
やがて遂に、乾いた羽音と共に巨大な翼を持つ異形が居住まいを正して上体を擡げる。
生ぬるい闇というよりも「生命体」の胎内にいるような感覚に陥った啓司は、パッチリと開いた長い睫毛に縁取られた金碧の双眸に射竦められた時……滲む恐怖をそのままに固唾を飲んだ。
【お、お前は…】
……一体……何者なんだ?……
目は口ほどに物を言うという諺のとおり、口に出さずとも彼の言わんとする疑問を拾ったソラは自虐的な気分で胸を反らす。
「ああ、そうとも。わたしは人ではない。その様子だと、それ以外の“なにか”を見るのは初めてのようだな。どうだ……怖いか。怖いだろう。……だから…止めておけ、と先に止めたのだ」
(受け止めると云った癖に、結局は本能的な恐怖には抗えず、見る影もなく身を竦ませ怯えるとは…。人間とは本当に浅はかな存在だ)
恐怖-畏怖-忌避…そんな感情を綯い交ぜにした啓司の眼差しを鑑みて鼻白むが、何故なのか怒りよりも心臓を抉り出されたような痛みがまとわりついてくる。
ソラ自身も大昔は何の変哲もない、ただの人間だった。だから啓司の心情が理解できない訳でもない。
寧ろ、恐怖に囚われて立ち竦むそれが正常な人間の反応なのだと悟ってしまい、ソラは静かに落胆した。
「まあ、人間風情には…仕方のないことだな…」
忌避されるのも、憎まれて矢や鉛玉を撃ち込まれるのも、もう懲り懲りなのだが────自分のような異形など…怖がられても仕方がない。それが正直な感情なのだ。
こんな身になっても、誰か他人に嫌悪されるのはツラいし───みじめである。
「はあ……もういい、面倒くさい」
どうせこの部屋はワタリギツネとイスナの依頼を果たす為に間借りしているだけなのだし、丁度いい機会だ、ここには必要最低限…寄り付かないようにしよう。
「……これで懲りただろ。もう二度と関わるなよ」
感情の鎮静化に伴って、群青の翼が薄らいで消える。全体的に羽毛が消失して、ソラは鬼梟からイスナの容姿に形状を戻した。
【お、おい……ソラ…?】
「私はもう、此処には二度と立ち入らないから、貴様は…今まで通り此処で過ごせばよい」
【…は?】
はい、さようなら。一件落着。
淡々粛々と告げられた訣別が理解出来ず、啓司は立ち竦んだ。
呆然と立ち尽くす彼を放置して、畳んだダンボールを小脇に挟んだソラは足早に玄関に向かい、靴を履いてそのまま出ていった。
【……おい、待てよ…】
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呼びかけに一切反応しないまま、華奢な背中は階段を降りていく。
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