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Extra.1 もう少しだけ
Act.2-02☆
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「――衛也君」
しばらく沈黙が続いたが、夕純さんが俺の名前を口にした。
「衛也君は、私との結婚を望んでくれているの……?」
遠慮がちに、けれどもはっきりと訊ねてきた。
改めて問われ、俺はまた、どう答えていいのか悩んだ。正直なところ、結婚のことは全くと言っていいほど考えていない。ただ、夕純さんに新たな命が宿ったとなれば、知らんふりなど出来るはずがない。
「責任は取りますよ」
そう答えるのが精いっぱいだった。
そんな俺を、夕純さんはどう思っただろう。何も言わず、先ほどと同様、俺をジッと見据える。
「――ごめん……」
しばらくして、夕純さんが謝罪してきた。俺から視線を逸らし、俯きながら訥々と続ける。
「私、とんでもなく調子に乗り過ぎていたのね。衛也君が優しくしてくれるから、ついつい……。でも、結局は衛也君を困らせてばかりで……。
ほんと、私ってダメだわ。いいトシなんだし、身のほどを知れ、って……ね……」
全て言い終わらないうちに、夕純さんから嗚咽が漏れ始めた。肩は小さく震え、両膝に置いた手を見ると、そこに透明な雫が止めどなく落ちてゆく。
夕純さんを泣かせてしまった。いくら返答に迷ったとはいえ、『責任を取る』なんて突き放すような言い回しは良くなかった。
俺は泣き続ける夕純さんを神妙な面持ちで見つめていた。慰めたい。でも、どうしたら傷付いた夕純さんを癒せるのか。
そのうち、俺の身体はほとんど無意識に夕純さんを抱き締めていた。何度も夕純さんは抱いているのに、今夜はいつにも増して小さく思える。夕純さんに言われた通り、本当にメチャクチャに壊してしまいそうで怖い。
「夕純さん」
俺は夕純さんの耳元で囁いた。
「謝らなくてはならないのは俺の方ですよ。俺は思いやりに欠けた人間ですから、傷付けるようなことしか言えないし出来ない……。でも、これだけは信じてくれませんか? ――俺は、夕純さんを大切だといつも思っています。これからも……」
俺の中で夕純さんが頭をもたげた。俺を真っ直ぐに見つめる瞳は涙で濡れている。
俺は目元を細め、口元に笑みを湛えた。
「泣いてる夕純さんも可愛い」
つい、そんなことを言ってしまった。
夕純さんはみるみるうちに唇を尖らせ、俺を恨めしげに睨んできた。
睨まれた俺は、「冗談ですよ」と肩を竦めた。
「泣いてる顔より、夕純さんの笑ってる顔が一番好きです」
そこまで言うと、唇で涙を拭う。そのまま下まで滑らせてゆき、小さく開いたままの夕純さんの口に俺のそれを重ね合わせた。
夕純さんの舌に俺の舌を絡ませると、夕純さんも俺に応えてくる。むしろ、夕純さんの方が積極的に。
俺は口付けをしたまま、夕純さんの下肢へと手を伸ばす。滴り落ちんばかりの愛液で、秘所は濡れそぼっている。
今度は俺が夕純さんを感じさせたい。そう思って、指を花芯へと入れようとしたのだが――
「や……っ……」
夕純さんが首を横に振って抵抗を示した。
「どうしたんです?」
夕純さんに拒絶されたことを怪訝に思いつつ、訊ねてみる。
夕純さんは俺の両肩を掴んだ状態で、「衛也君が……」と掠れ気味な声で言葉を紡いだ。
「衛也君が、欲しいの……。指じゃなくて、衛也君ので私をいっぱいにしたいの……」
「――そんなに、俺のが欲しいんですか?」
改めて問うと、夕純さんは何度もコクコクと頷く。十歳も年上の女性とは思えないほど、可愛らしい反応だ。
「分かりました」
俺は小さく笑みを浮かべ、夕純さんの唇に軽くキスした。
「ただし、ちゃんとゴムは着けますから、いいですね?」
念を押すと、夕純さんは先ほどと同様に首を縦に動かした。
夕純さんが先に俺から離れた。そして、彼女のベッドのヘッドボードに用意されていたコンドームの箱から中身をひとつ取り出し、ゆっくりと封を破る。何も言ってこなかったが、俺に着けようとしてくれているのだろう。
俺もあえて何も言わなかった。初めてセックスした時も、それ以後も、いつもではないにしろ、夕純さんは自ら進んで着けてくれた。着けてもらうのは俺も決して嫌じゃない。
俺自身にコンドームが被せられてから、俺も一応、根元まで入っていることを確認する。
「衛也君」
夕純さんを横にしようとしたら、軽く身体を押さえられた。まだ、何か不満でもあるのだろうか。
「どうしたんです?」
再び夕純さんに訊ねる。
夕純さんは口の端を上げ、逆に俺を仰向けにさせてきた。まさか、と思ったが、その〈まさか〉だった。
俺を見下ろす格好になった夕純さんが、そのまま俺の上に乗ってくる。そして、俺自身を右手で握りながら、そのまま夕純さんの腰を落としてきた。
「こんな女は嫌い?」
呆然としていた俺に、夕純さんが哀しげに笑みながら訊いてくる。これが夕純さんじゃなければ、ウザいと思ったかもしれない。けれども、相手が夕純さんだと思うと自然と許せてしまう。惚れた弱み、というやつだろうか。
「いいえ」
俺は微笑みながら、夕純さんの手に俺の手を絡ませた。
「どんな夕純さんも俺は好きですから。夕純さんの好きなように動いて下さい」
この言葉に安堵したのか、夕純さんは哀しそうな表情を引っ込め、今度は嬉しそうにニッコリした。
俺の上で夕純さんが身動きを始める。最初はゆっくり、徐々に律動の速度が増してゆく。
「あ……っ……いい……もり……や……くん……っ……」
夕純さんが動くたびに、ベッドもギシギシと軋む。過去にどれほどのことを仕込まれたのかと驚くほど、夕純さんの腰の動きはいやらしい。
俺も我慢が出来なくなってきた。ずっと夕純さんにされるがままになっていたが、夕純さんから手を離し、代わりにその両手で腰を押さえて下から突き上げた。
「や……っ……あぁ……っ……」
夕純さんが嬌声を上げる。動きもさらに速まり、肌と肌がぶつかり合う音と秘所からの水音とが艶めかしいほどに響き渡る。
「も……イッちゃ……もり……やくん……っ……!」
「いいですよ……イッて……」
腰を押さえたまま、先ほどにも増して腰をぶつける。
夕純さんが俺を締め付けてきた。俺もイキそうになったが、すんでのところでグッと堪えた。
絶頂に達した夕純さんは、繋がったままで俺の上にぐったりと身体を押し付ける。
しばらく沈黙が続いたが、夕純さんが俺の名前を口にした。
「衛也君は、私との結婚を望んでくれているの……?」
遠慮がちに、けれどもはっきりと訊ねてきた。
改めて問われ、俺はまた、どう答えていいのか悩んだ。正直なところ、結婚のことは全くと言っていいほど考えていない。ただ、夕純さんに新たな命が宿ったとなれば、知らんふりなど出来るはずがない。
「責任は取りますよ」
そう答えるのが精いっぱいだった。
そんな俺を、夕純さんはどう思っただろう。何も言わず、先ほどと同様、俺をジッと見据える。
「――ごめん……」
しばらくして、夕純さんが謝罪してきた。俺から視線を逸らし、俯きながら訥々と続ける。
「私、とんでもなく調子に乗り過ぎていたのね。衛也君が優しくしてくれるから、ついつい……。でも、結局は衛也君を困らせてばかりで……。
ほんと、私ってダメだわ。いいトシなんだし、身のほどを知れ、って……ね……」
全て言い終わらないうちに、夕純さんから嗚咽が漏れ始めた。肩は小さく震え、両膝に置いた手を見ると、そこに透明な雫が止めどなく落ちてゆく。
夕純さんを泣かせてしまった。いくら返答に迷ったとはいえ、『責任を取る』なんて突き放すような言い回しは良くなかった。
俺は泣き続ける夕純さんを神妙な面持ちで見つめていた。慰めたい。でも、どうしたら傷付いた夕純さんを癒せるのか。
そのうち、俺の身体はほとんど無意識に夕純さんを抱き締めていた。何度も夕純さんは抱いているのに、今夜はいつにも増して小さく思える。夕純さんに言われた通り、本当にメチャクチャに壊してしまいそうで怖い。
「夕純さん」
俺は夕純さんの耳元で囁いた。
「謝らなくてはならないのは俺の方ですよ。俺は思いやりに欠けた人間ですから、傷付けるようなことしか言えないし出来ない……。でも、これだけは信じてくれませんか? ――俺は、夕純さんを大切だといつも思っています。これからも……」
俺の中で夕純さんが頭をもたげた。俺を真っ直ぐに見つめる瞳は涙で濡れている。
俺は目元を細め、口元に笑みを湛えた。
「泣いてる夕純さんも可愛い」
つい、そんなことを言ってしまった。
夕純さんはみるみるうちに唇を尖らせ、俺を恨めしげに睨んできた。
睨まれた俺は、「冗談ですよ」と肩を竦めた。
「泣いてる顔より、夕純さんの笑ってる顔が一番好きです」
そこまで言うと、唇で涙を拭う。そのまま下まで滑らせてゆき、小さく開いたままの夕純さんの口に俺のそれを重ね合わせた。
夕純さんの舌に俺の舌を絡ませると、夕純さんも俺に応えてくる。むしろ、夕純さんの方が積極的に。
俺は口付けをしたまま、夕純さんの下肢へと手を伸ばす。滴り落ちんばかりの愛液で、秘所は濡れそぼっている。
今度は俺が夕純さんを感じさせたい。そう思って、指を花芯へと入れようとしたのだが――
「や……っ……」
夕純さんが首を横に振って抵抗を示した。
「どうしたんです?」
夕純さんに拒絶されたことを怪訝に思いつつ、訊ねてみる。
夕純さんは俺の両肩を掴んだ状態で、「衛也君が……」と掠れ気味な声で言葉を紡いだ。
「衛也君が、欲しいの……。指じゃなくて、衛也君ので私をいっぱいにしたいの……」
「――そんなに、俺のが欲しいんですか?」
改めて問うと、夕純さんは何度もコクコクと頷く。十歳も年上の女性とは思えないほど、可愛らしい反応だ。
「分かりました」
俺は小さく笑みを浮かべ、夕純さんの唇に軽くキスした。
「ただし、ちゃんとゴムは着けますから、いいですね?」
念を押すと、夕純さんは先ほどと同様に首を縦に動かした。
夕純さんが先に俺から離れた。そして、彼女のベッドのヘッドボードに用意されていたコンドームの箱から中身をひとつ取り出し、ゆっくりと封を破る。何も言ってこなかったが、俺に着けようとしてくれているのだろう。
俺もあえて何も言わなかった。初めてセックスした時も、それ以後も、いつもではないにしろ、夕純さんは自ら進んで着けてくれた。着けてもらうのは俺も決して嫌じゃない。
俺自身にコンドームが被せられてから、俺も一応、根元まで入っていることを確認する。
「衛也君」
夕純さんを横にしようとしたら、軽く身体を押さえられた。まだ、何か不満でもあるのだろうか。
「どうしたんです?」
再び夕純さんに訊ねる。
夕純さんは口の端を上げ、逆に俺を仰向けにさせてきた。まさか、と思ったが、その〈まさか〉だった。
俺を見下ろす格好になった夕純さんが、そのまま俺の上に乗ってくる。そして、俺自身を右手で握りながら、そのまま夕純さんの腰を落としてきた。
「こんな女は嫌い?」
呆然としていた俺に、夕純さんが哀しげに笑みながら訊いてくる。これが夕純さんじゃなければ、ウザいと思ったかもしれない。けれども、相手が夕純さんだと思うと自然と許せてしまう。惚れた弱み、というやつだろうか。
「いいえ」
俺は微笑みながら、夕純さんの手に俺の手を絡ませた。
「どんな夕純さんも俺は好きですから。夕純さんの好きなように動いて下さい」
この言葉に安堵したのか、夕純さんは哀しそうな表情を引っ込め、今度は嬉しそうにニッコリした。
俺の上で夕純さんが身動きを始める。最初はゆっくり、徐々に律動の速度が増してゆく。
「あ……っ……いい……もり……や……くん……っ……」
夕純さんが動くたびに、ベッドもギシギシと軋む。過去にどれほどのことを仕込まれたのかと驚くほど、夕純さんの腰の動きはいやらしい。
俺も我慢が出来なくなってきた。ずっと夕純さんにされるがままになっていたが、夕純さんから手を離し、代わりにその両手で腰を押さえて下から突き上げた。
「や……っ……あぁ……っ……」
夕純さんが嬌声を上げる。動きもさらに速まり、肌と肌がぶつかり合う音と秘所からの水音とが艶めかしいほどに響き渡る。
「も……イッちゃ……もり……やくん……っ……!」
「いいですよ……イッて……」
腰を押さえたまま、先ほどにも増して腰をぶつける。
夕純さんが俺を締め付けてきた。俺もイキそうになったが、すんでのところでグッと堪えた。
絶頂に達した夕純さんは、繋がったままで俺の上にぐったりと身体を押し付ける。
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