BLエロ小説短編集

五月雨時雨

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男は自らの欲に狂わされつつ悪に快楽を希求する

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「あー……うっ、あぁぁ……っ」

酸素吸入器の要領で装着された鼻と口を囲う透明なマスク。その内部へとチューブを通して流し込まれる淫猥な薬品混じりの空気を呼吸の度に為す術無く体内に取り込まされた男はもう、思考の全てを発情に蝕まれ、縛めを施された裸体を淫らな疲弊へと導かれてしまっている。
自分をこの甘い地獄に追いやった敵に対する怒りはおろか、自身が正義に属する誇り高き捜査員であるという事実すら思い出せない。跳び箱のような形状をした拘束用の台に仰向けで乗せられ、その台の側面に存在する幾本もの黒革で作られたベルトによって両手両足の動きを没収された惨めな状況から逃れようと試みる余裕すら残されていない。
無防備にさらけ出された乳首と男根の体積を無様に引き上げ、足を大きく開かれたせいで丸出しとなっている尻穴が情けなく収縮を繰り返す様を絶えず周囲に披露している。呼吸を支配している淫蕩な薬品が含まれた空気の威力に屈して肥大化させられた淫欲を鎮める手段を封じられた汗塗れの裸体を苦しげによじらせながら、涙に潤んだ目で刺激が欲しいと喚いている己の恥ずかしい場所を虚しく見つめる。
そんな滑稽な痴態を休み無く晒している限界を超えたもどかしさに正気を削り落とされた捜査員にはもはや、理性などありはしない。
じわじわと蓄積するふしだらな衝動を拒み、憎き悪への反抗を滾らせていた過去の己を完全に消失させた今の捜査員は、数時間ぶりに自分を放置した部屋へと帰還した悪の幹部に向かって本能に従ったおねだりを不自由な裸体で示すだけの淫乱でしか無いのだ。

「あっ、あぁ、うあぁ」

人間の言葉を紡ぐこともせず、切羽詰まった唸りを零しながら快感をくださいと懇願する。無自覚に開始した拘束に許された範囲での腰振りに合わせて痛々しいくらいに張り詰めた男根を間抜けに踊らせ、はしたなくヒクついている尻穴を愉快に変形させながら、淫獣に堕ちた捜査員の男が嫌悪していた悪の男に哀願を寄せる。
あの捜査員も、この薬の前では色狂いに堕落することしか出来ない。雄々しく鍛えられた筋肉質な裸体を汗や淫液に塗れさせながら、手足の拘束からではなく生殺しからの解放を請うことしか出来ない。
その情報をこれ以上無く分かりやすく表わすなりふり構わない助けてくださいの態度を勝利の愉悦に染まった残忍な笑みで見つめながら、悪の男は腕を組み逃げ場を遮られた自らの欲に嬲られる捜査員の悶絶を堪能する姿勢を取り、生殺しの継続を無言で言い渡してしまった。

「んっ、ひぃ……あぅ、んふぅ……っ」

潤んだ視界の先に見える男に視線で縋り付き、火照りきった裸体全てで隷属を誓いながら、捜査員が腰をくねらせる勢いを必死に強めていく。胴体すらも揺らして乳首にもダンスを行わせながら、正義であることを自我と一緒に捨て去った捜査員が悪に快楽を希求する。
そうしてじょじょに見応えを増やしていく最高の遊び道具に目を細め口角を吊り上げつつ、悪の男は組織の構成員全てが自由に使える肉便器としての完成が目前に迫った元捜査員の男に対する歓迎と祝福の感情を胸の内に湧き上がらせていた。
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