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男は夜景と共に淫猥なダンスを鑑賞する

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周囲に同じ高さの建物は無い。周辺で一番高いビルの屋上から見上げようとも、自分の姿は豆粒のような大きさにしか見えず夜の闇も相まって向こうはこちらの状態には気付けなどしないだろう。
それを理解していても、青年は強い羞恥と恐怖に怯えていた。拘束の為だけに作られた白色の四角い機械に左右の手首から先と足首から先を飲み込まれX字に引き延ばされた裸体を強化ガラス製の壁の前に飾られている哀れな青年は、丸出しの乳首と無防備にさらけ出された男根を震わせながら、恥部を外に向かって露出させられている事実がもたらす恥辱とその情けない格好を誰かに見られはしないかという恐れに絶えず苛まれ続けていた。

「んぐっ、んむっ……むうぅ、んぅんっ」

機械で形作られた四角の中で、まるで絵画のように宙へと固定された裸体をくねくねと踊らせながら青年は屈辱から抜け出そうと試みる。両手両足の自由を奪われた状況から脱出し、辱めと共に非道な男からの支配からも逃れようと考えながら、青年は機械に内蔵された柔らかなクッションによって緩み無く締め付けられている手首から先と足首から先を引き抜こうと必死で足掻く。
だが、青年がどんなに足掻こうとも拘束は全く緩まない。裸体を外界に向かって見せ付けさせられる恥辱から解放されたい思いとは裏腹に、青年は無駄な試行錯誤に合わせてより惨めに乳首と男根を跳ね回らせ、背後で自分を鑑賞している男に汗ばんだ黒髪が揺れる様と形の良い尻肉が悶える光景を提供し余計な興奮と愉悦を男に抱かせる結果を引き寄せてしまう。
この滑稽なダンスを、もっともっと愉しみたい。湧き上がった興奮と愉悦が募らせた願望のままに、笑みの醜悪さを引き上げた男は真紅のソファー側面に存在する収納部分に入れておいた機械のリモコンを手にし、真後ろで自分が取っている行動を把握出来ず怯えることすらも叶わない青年を一層惨めに悶え狂わせる目的で、リモコンを操作した。
残酷な男はテレビのチャンネルを回すのと同じ感覚で、自分だけの所有物に堕とした青年を更に苦しめ心と身体を甘く痛め付ける展開を生み出すリモコンを何の躊躇いも無く弄ってしまったのだ。
リモコンからの電波を受けた青年を拘束する機械が、わずかに駆動音を変化させる。途端、一瞬で変化の内容を嫌でもその身に思い知らされた青年は、口内を貫いている棒と一体化した顔の下半分を覆う白色のマスクへと接続されたチューブ達を振り乱しながら背後の男が望んだ惨めさを増幅させたダンスを意に反して捧げつつ、決して聞き入れられることの無い拒絶と哀願が混ざり合った唸りを虚しく放ち始めた。

「うぅぅっ! んぐっ、うぐぅぅ! あむっ、むぁぉぉっ! うー! んむぅぅぅぅっ!!」

男に飼われ出してから幾度と無く嗅がされた発情を促す媚薬入りの空気を鼻と口を囲うマスク内に流し込まれた青年が、強制的に膨らまされていく淫欲に絶望を示しながらガラス壁に向けて晒した乳首と男根をはしたなく硬く張り詰めさせていく。
男の手で丹念に開発され中を掻き毟られる悦楽を二度と忘れられぬ程に刻み込まれた青年の尻穴が、発情に屈してヒクヒクと収縮を始め早くも分泌量を増やした腸液によってしっとりと湿っていく。
それらの淫らな己の反応に打ちひしがれる青年は今日も男の思い通りに弄ばれてしまうという抗えぬ事実に理性を蝕まれつつやがてガラス越しに裸体を夜の街に晒していることも忘れて苛烈な発情と男に躾けられた箇所を襲う疼きに狂っていき、男は再びソファー側面の収納にリモコンを戻しながら悠然とした鑑賞の態度を取り直し、じわじわと欲望に溺れていく青年が間抜けに鳴き喚きながら少しでも快楽への渇望を散らそうと裸体をよじらせる最高のダンスを青年の真後ろから、夜景と一緒に自身の気の済むまで味わい続けていた。
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