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命令に従い堕ちた淫乱は己の欲望を貪る

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「んっ、んむぅっ! んぐっ、んくっ、んうぅぅんっ」

丸い金具と黒革が一つになった開口具へと接続されたチューブを通して流し込まれる液体状の食事を一生懸命に飲み干しながら、俺は自分で耳にしても間抜け極まりない悦び色の呻きをはしたなく放っている。
生命を維持させる栄養剤と、発情を促す媚薬を混ぜ合わせた精液の香りと味を付けた食事を舌で愉しみ喉で堪能しながら、俺はご主人様から与えられた拘束具の圧迫に更なる興奮を加速させつつ無様な裸体を淫らに火照らせ続けている。
左右の足を折り畳んだ状態に固定する黒革製の器具をぎちぎちと軋ませながらご主人様に命令された背後の壁に背中を預けたつま先立ちを保ち、誤って口に食事を運ぶチューブを外してしまわないよう足と同じ器具で伸ばすことを禁じられた腕の跳ねを抑え限界まで開いた状態を作り、黒革の目隠しの下で被虐の恍惚に蕩けた目を見開きつつ大粒の涙を頬に伝わせている俺は、これ以上無いくらいに惨めだろう。四肢の自由に加え視界と言葉を封じられた事実に歪んだ至福を募らせながら異常な食事を夢中で嚥下し、限界まで膨張した乳首と男根を嬉しそうにビクビクと脈打たせている俺は、過去の俺が見たら心からの嫌悪を抱くくらいに悍ましく情けない存在だろう。
だが、ご主人様に淫乱な本性を暴かれ、快楽に溺れ続ける以外の道を選び取れない生物へと貶められてしまった俺はもう、以前の日々には戻れない。戻りたいとも思えない。俺を放置したご主人様が嬉々として無慈悲な指示を下してきても、快感の没収という気が狂う程の拷問を常日頃意識させられている俺はもはや、目隠しの向こうから聞こえてくる制止を聞き流しながら悦楽漬けの至福を優先する行動しか取れはしないのだ。

「先輩! 駄目です……正気に、正気に戻って下さいっ!」
「あぉ、んあおぉ」

かつての仕事仲間が、俺が捜査員として生きていた頃に部下だった男が、発情しきった俺に対する絶望に震える声で正義への帰還を言葉で促す。
けれど、俺はそれに対して無意識に漏れる唸り以外の返事を行わない。口のチューブを外された俺は食事に付けられた精液臭を荒く乱れた吐息に混ぜて零しつつ、汗ばんだ髪を掴んで俺を無理矢理部下の上に跨がらせ無言で命令を浴びせるご主人様の意向を汲み取ったという名目で、異物の挿入を欲しがり放置された瞬間からヒクヒクと収縮を繰り返していた尻穴に目隠し越しではっきりとは分からないが仰向けの体勢で身動きを封じられ俺と同じように媚薬で勃起を強要された部下の男根をつるりと飲み込んでいく。

「ほぉっ、あぉぉんっ!」
「く、あぁぁ! うぁ、そ、んな……先、輩……っ!」

尻穴を貫く部下の男根が、摩擦を待ち望んでいた腸壁に甘い刺激を注ぎ込む。憎むべき悪の思惑に沿って、少なからず敬意を払っていた同性の尻穴に男根を挿入させられた。屈辱の事実に打ちひしがれる部下の声すらも欲望を肥大化させる材料に変換させながら尻穴を締め上げ乳首と男根の硬度を引き上げさせた俺を見たであろうご主人様は、言葉を発する代わりに髪を鷲掴みにしていた手を離して次の指示を俺に出した。
それは、不自由な肉体を酷使して、抗えない姿となった部下の男根を淫猥に苛めという指示。一方的な命令の体を取りつつも、実際はありとあらゆる仕打ちと辱めを愉悦に変える最低な淫乱に堕ちた俺が欲している、みっともなく快楽に溺れろという指示だ。

「あっ、あぉ、んあっ、おぉぉ!」
「ふぐっ、んぎ、あぁぁ! しぇんぱい、りゃめ……こんにゃ、あ、うくぅぅぅっ!」

部下のことを全く考えずに拘束に許された範囲で肉体を上下に激しく往復させ、俺は自らの尻穴を部下の男根で掻き毟っていく。
可愛がっていた部下を張型扱いしている。自慰の道具に貶めている。そんな己の醜悪ささえも甘い幸福を増幅する燃料に置き換えながら、俺は近くで交尾の見た目をした自慰の光景を観察しているご主人様を悦ばせる為に肉体の上下に緩急を付け、部下と俺の淫らな痴態を一層見応えと聞き応えのある物となるよう服従に満ちた工夫を凝らしていくのだった。
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