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可愛い男は後輩に独占される

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「先輩の家、綺麗に片付いてますね。俺の家とは大違いだ」

後輩の言葉に、男は何も返事をしない。無視をしている訳でも聞き取れていない訳でもなく、どんな返事をすれば良いのか分からずにいるからだ。
整頓された部屋を眺める後輩と、その後輩を身を強ばらせながら見つめる男。そんな状況がしばらく続いた頃、後輩は壁際で身を固くしている男に気付いて愉しげに笑い、距離を詰めるとからかうような口調で話し掛けた。

「先輩、緊張しているんですか? そんなに固くならなくても良いのに。初めて会った時みたいに、楽にしてたら良いじゃないですか?」
「そ、そんなこと、言われても……」

眼前に迫った後輩の顔から目を逸らし、か細い声を漏らす男に後輩が笑みを濃くする。その笑みを浴びながら肉体を無意識に熱くしていく男の震えを細めた目で堪能しながら、先程よりも愉快さを強めた口調で後輩が言った。

「家に行って良いかって聞いた俺に良いって答えたんですから、元々そのつもりだったんでしょ、先輩? だったら、別に取り繕う必要なんて無いでしょう? シンプルに考えましょうよ」

男が視線を逃がした方向にある壁に手を付き、視界を塞いで羞恥の逃げ場を奪った後輩が更に顔を近付ける。それでも、男は素直になれない。後輩の指摘通り最初からそのつもりであったものの、今日知り合った先輩社員と新入社員という表向きの関係を壊しきれず、またそれ以前に知り合った時の非日常の感覚を思い出せていない男は、何も言えずに身をすくませたままだ。
どうすれば、この男のたがを外せるだろう。後輩は考え、すぐに思い至った。初めて会ったその時と同じように接してやれば良い。後輩は早速、それを実行に移す。男の家という邪魔者がいない状況を利用して後輩の立場を捨て、笑みと声音を獣を剥き出しにした雄の物に変えながら、無意識の自制を行っている男に接し出す。

「難しく考える必要なんて無いだろ? 俺はアンタを食べたい、アンタは俺に食べられたい。あの店で会った時みたいに、本能に任せたセックスに耽って快楽に溺れたい、それだけで十分だろ?」
「あ、う……」

その日の遊び相手を探す男のための店。そこで出会い、後に同じ会社で働くことになると知らぬまま肉欲を貪り合った夜を後輩の言葉で呼び起こされた男は、ズボンの下で勢いよく男根を膨張させ全身を発情させ始めた。
その発情の光景を愉しみ、にわかに立ち上りだした甘い誘惑の香りに自身の興奮を掻き立てられた後輩は、その興奮のままに男の理性を崩しに掛かる。

「ほら、言ってみろよ。俺にどうして欲しい? 嫌なことはしねーし、して欲しいことは全部してやるよ。あの夜と同じように、この可愛い口と声でおねだりしてみな」

もう、男は欲望を抑えられない。下らない建前など、思い出せもしない。
年下の男から寄せられた獣の視線と囁きだけで腰を砕かれた男は、恥じらっていたのが嘘のように腕を動かして目の前の男に抱き付き、甘えるような声で言われたとおりにおねだりを口にした。

「あの日みたいに、めちゃくちゃにして欲しい……俺の、淫乱ケツマ○コをチ○ポでいっぱい掻き回して、精液たっぷり中出しして欲しい……っ!」

ようやく正直に淫欲を示した可愛い男を優しく抱き締め返し、ご褒美の言葉と口付けを降らせながら、後輩が男の呼び方以外の口調を戻して言った。

「はい、お望み通りめちゃくちゃにしてあげますよ。あの日以上に気持ち良くして、俺だけの物に堕としてあげますからね……○○さん」
「あっ、ん、むぅっ……」

噛み付くような口付けを健気に受け入れ、背中に回した手に力を込めつつ口内に侵入した舌に自身の舌を絡めていく年上の男を愉しみながら、後輩の男はあの夜から毎日思い出しては自慰を繰り返していた相手である男を独占出来る可能性を得たことを心から悦び、愛らしい男を自分だけの物にするという決意を改めて募らせながら男の震える肉体を丁寧にまさぐり丹念に悦楽を与えていくのだった。
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