【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

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8】ファンなのかもしれない

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8】ファンなのかもしれない

 「お、水野君。今日も顔色が良いね」

「おはようございます。分かります?」

「分かる分かる。ってことは、昨日も例の?」

「はい、例のお弁当を食べました」

今日も今日とて、出勤は通常運転だ。窮屈な満員電車と、遅刻しないようにという気持ちで電車を降りる。無事に今日も会社へ辿り着いて準備をしていれば、昨日俺に声をかけてくれた女性。社歴は俺よりも先輩の田中さんが、声をかけてくれた。どうやら俺の顔色は今日も良いらしい。思わず俺も、笑いながら答えてしまった。心無しか、体調も良いように思う。まだ二回しか食べていないのに、気持ち的なものか弁当の力なのか分からないが、効果が凄い。やっぱり食事って大事だな。うん。

「昨日は何を食べたの?」

「先輩は何を食べたんですか?」

「私? 私は……お酒かな♡」

「それ飲み物ですよ!?」

「あはは~。ほら、飲まなきゃやってられない日ってあるでしょう?」

「まぁ、気持ちは分かりますけど。でも良いですね、俺もそういうの言ってみたいです」

「水野君はお酒飲めないからねぇ~。で? 水野君は昨日何食べたの?」

「ハンバーグです」

「また!?」

俺がまたハンバーグと言ったので、同じのを食べたと思ったんだろう。そこで俺が、チッチッチッとしたり顔をする。

「ハンバーグはハンバーグでも、レンコンが入ったハンバーグなんですよ」

「お洒落カフェみたいなメニューね」

「ですよね!? しかも、そこの店員さんがイケメンなんですよ」

思わず前のめりになりながら、最後のイケメン情報はコソッと小さな声で話した。

「なら人気店でしょうね。それに……水野君、その様子だともうお店のファンになってるじゃない」

あはは、と今度は田中さんが笑った。

「そ゛……そんなことは……」

「二日もお弁当買いに行くんだもん。あるでしょう?」

「……ハイ」

そうだ。弁当だ。あそこのお店の弁当のファンなんだ。別に深い意味なんてないんだと思っていると、田中さんが呼ばれた。

「田中さん、ちょっといいですか?」

「はーい、じゃあね。水野君。今日も頑張りましょう」

「はい。…………よしっ!」

さて、今日も仕事だ。
気持ちを切り替え、早速パソコンを開いた俺だった。それから、ほんの少しだけ。

(今日もあの店に行ってみよう)

なんてことを考えていた。
(ああ、これはすっかりファンだ)

********
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