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44】何かあった?
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44】何かあった?
「お疲れ様です。お先に失礼します」
「お疲れ様~」
「お疲れ様です」
今日は残業も無く、仕事が終わった。いつもなら憂いしいと軽い足取りが、今日は違った意味で浮いている気がする。気持ちばかりが焦るように、速足で駅に着き電車に乗った。ゆっくりと電車の外を眺めるわけでもなく、携帯を開いてメッセージ画面を見る。短く、仕事が終わりましたとだけ中村さんに連絡した。
ドキドキドキ。
(いや、まだ中村さんに会ってもないのに)
心臓ばかりが煩い。恋愛ドラマとか、漫画でこういうシーンを見て来たけれど、あながち間違いじゃないのかと学んだ。……今度何か恋愛系の漫画を読んでみようかな。
(中村さんに会ったら)
会ったら、やっぱりお試しの件は断ろう。うん、やっぱりそれが良い。
自分に言い聞かせながら、頭の中で事前練習。仕事が忙しくて、ごめんなさい。有難うございました。でもグッズは買います。よし、大丈夫。言える。
深呼吸しながら、数回繰り返していれば降りる駅に着いた。いつものように降りて、あとは中村さんのお店へ向かう。もう迷子にもならない。見知った道を歩き、スムーズに辿り着き、お店の扉を開けた。
「こんばんは、伊織君」
「こんばんは……」
(先に見つかってしまった)
というより、中村さん待ってたよな? と思えるほど、扉を開ければすぐに中村さんが立っていた。
「待ってました?」
「うん……伊織君に会えるの、何だか久しぶりだし。おかしいよね、メッセージはちょいちょい送ってくれているのに」
「俺も、久しぶりな気がするんで嬉しいです」
「伊織君……!」
ぱぁっ……! と笑顔を浮かべる中村さん。(普段はSッ気ないんだよなぁ)
「今日はどうしたの? あ! いや、会えただけでも嬉しいんだけど、何かあったのかなって」
「実は……」
今がチャンスだ。言えなくなる前に、練習したことを口から言おう。それだけで良いんだ。
すぅっ……と息を吸い込んで、声を出した。
「ご厚意でして貰ってるお試しなんですけど、ちょっと仕事が忙しくなっちゃって。なかなか試せることもないかなぁって思って、それで……辞退させて欲しいなって思って……お店にはグッズを普通に買いに来るので……」
「そう……なんだ。うん。勿論。俺も、伊織君の迷惑になりたいわけじゃないから、全然大丈夫だよ。寧ろ俺の方こそ試してくれて有難う。おかげでレビューを参考にしてくれたお客さんからの反響もあったんだよ」
「それは良かったです」
思わず目を逸らす。これで良い。俺の下心だけで、中村さんを利用するようなことは出来ない。これで良い。出来たら、俺のこの気持ちもどこかにいってくれたら。そう思っていたのに。
「えっと、俺の勘違いだったらごめんね? 伊織君」
俺の逸らせたに顔を持って来て、中村さんが視線を合わせる。思わずドキンとしてしまう心臓に、静まれと願った。
「何かあった?」
何かあった? あったといえば、あった。あったけれど……。
(中村さんのことが好きだと気づきましたと言えるわけない)
*******
別の話も新しく始めてみました
読んで頂けると嬉しいです
「お疲れ様です。お先に失礼します」
「お疲れ様~」
「お疲れ様です」
今日は残業も無く、仕事が終わった。いつもなら憂いしいと軽い足取りが、今日は違った意味で浮いている気がする。気持ちばかりが焦るように、速足で駅に着き電車に乗った。ゆっくりと電車の外を眺めるわけでもなく、携帯を開いてメッセージ画面を見る。短く、仕事が終わりましたとだけ中村さんに連絡した。
ドキドキドキ。
(いや、まだ中村さんに会ってもないのに)
心臓ばかりが煩い。恋愛ドラマとか、漫画でこういうシーンを見て来たけれど、あながち間違いじゃないのかと学んだ。……今度何か恋愛系の漫画を読んでみようかな。
(中村さんに会ったら)
会ったら、やっぱりお試しの件は断ろう。うん、やっぱりそれが良い。
自分に言い聞かせながら、頭の中で事前練習。仕事が忙しくて、ごめんなさい。有難うございました。でもグッズは買います。よし、大丈夫。言える。
深呼吸しながら、数回繰り返していれば降りる駅に着いた。いつものように降りて、あとは中村さんのお店へ向かう。もう迷子にもならない。見知った道を歩き、スムーズに辿り着き、お店の扉を開けた。
「こんばんは、伊織君」
「こんばんは……」
(先に見つかってしまった)
というより、中村さん待ってたよな? と思えるほど、扉を開ければすぐに中村さんが立っていた。
「待ってました?」
「うん……伊織君に会えるの、何だか久しぶりだし。おかしいよね、メッセージはちょいちょい送ってくれているのに」
「俺も、久しぶりな気がするんで嬉しいです」
「伊織君……!」
ぱぁっ……! と笑顔を浮かべる中村さん。(普段はSッ気ないんだよなぁ)
「今日はどうしたの? あ! いや、会えただけでも嬉しいんだけど、何かあったのかなって」
「実は……」
今がチャンスだ。言えなくなる前に、練習したことを口から言おう。それだけで良いんだ。
すぅっ……と息を吸い込んで、声を出した。
「ご厚意でして貰ってるお試しなんですけど、ちょっと仕事が忙しくなっちゃって。なかなか試せることもないかなぁって思って、それで……辞退させて欲しいなって思って……お店にはグッズを普通に買いに来るので……」
「そう……なんだ。うん。勿論。俺も、伊織君の迷惑になりたいわけじゃないから、全然大丈夫だよ。寧ろ俺の方こそ試してくれて有難う。おかげでレビューを参考にしてくれたお客さんからの反響もあったんだよ」
「それは良かったです」
思わず目を逸らす。これで良い。俺の下心だけで、中村さんを利用するようなことは出来ない。これで良い。出来たら、俺のこの気持ちもどこかにいってくれたら。そう思っていたのに。
「えっと、俺の勘違いだったらごめんね? 伊織君」
俺の逸らせたに顔を持って来て、中村さんが視線を合わせる。思わずドキンとしてしまう心臓に、静まれと願った。
「何かあった?」
何かあった? あったといえば、あった。あったけれど……。
(中村さんのことが好きだと気づきましたと言えるわけない)
*******
別の話も新しく始めてみました
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