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45】言えるわけないけれど、これくらいなら許してくれるだろう
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45】言えるわけないけれど、これくらいなら許してくれるだろう
俺がお試しを辞退しますと伝えたあと。中村さんが、俺と視線を合わせて言った。
「何かあった?」
何かあった? あったといえば、あった。あったけれど……。
(中村さんのことが好きだと気づきましたと言えるわけない)
中村さんの表情は、詮索するでもなく。多分、俺を心配してくれているだけ。優しい。優しいけれど、好きになってしまったからと伝える勇気も無い。だが、上手くかわす言葉も出てこない。社会人として、それなりに世を渡り歩いて来たというのに、穏便な。相手を傷つけない嘘一つ浮かばない。ドキドキしたままの心臓が、頭の回転を鈍らせるみたいだ。
「仕事の他に何かあったりした? 俺で良かったら、話を聞くくらいなら出来るよ?」
「……ぁ」
ドキドキドキドキ。
言えるわけないけれど、中村さんの心配を無下にも会話を終わらせることも出来ず。多分、伝えることが出来ないなら、このくらいなら許してくれるだろうと言い訳するように俺の口は動いてしまった。
「ぇと……実は……仕事も忙しいですけど、他にそのっ……好きな人が出来て……」
「好きな人……」
「はい」
「そっか。良かったね! 伊織君が好き人になるような人だもん。素敵な人なんだろうね。無事に成就することを願っているよ、それから応援も。話したいことがあったら言ってね」
「はい。有難うございます。じゃあ」
「うん。今日は顔を見れて嬉しかったよ。またね」
「はい、また……」
好きな人が出来たと言った時、中村さんの表情が変わった。俺に好きな人がいることが意外だったのかもしれない。それもそうだよな、でなきゃ自慰用にオナホとかアダルトグッズ買いに来ないだろうし。
言ってしまったという緊張を感じつつ、俺はせっかく来たのに足早にお店を後にしようとした。丁度扉の前で、身体を反転すればすぐ外に出られる。クルリと背を向けようとした時、パシッと腕を掴まれた。
「本当にごめん……! 伊織君の余裕がある時で良いから、今日みたいにフラッと顔だけでも見せてくれると、嬉しい……な」
ドキドキドキ。
いつも余裕そうな表情だった中村さんが、どこか必死な表情で内心驚いた。
(どうして中村さんは、こんなことしたんだろう?)
仲の良い友達の一人として、思ってくれているんだと思うと、それだけでも嬉しいと思った。
「勿論です」
俺がそう言うと、今度こそお店を後にする。小さく手を振って帰りながら、自分にこの恋心が落ち着いてくれるのを願った。
*******
俺がお試しを辞退しますと伝えたあと。中村さんが、俺と視線を合わせて言った。
「何かあった?」
何かあった? あったといえば、あった。あったけれど……。
(中村さんのことが好きだと気づきましたと言えるわけない)
中村さんの表情は、詮索するでもなく。多分、俺を心配してくれているだけ。優しい。優しいけれど、好きになってしまったからと伝える勇気も無い。だが、上手くかわす言葉も出てこない。社会人として、それなりに世を渡り歩いて来たというのに、穏便な。相手を傷つけない嘘一つ浮かばない。ドキドキしたままの心臓が、頭の回転を鈍らせるみたいだ。
「仕事の他に何かあったりした? 俺で良かったら、話を聞くくらいなら出来るよ?」
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「ぇと……実は……仕事も忙しいですけど、他にそのっ……好きな人が出来て……」
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「はい」
「そっか。良かったね! 伊織君が好き人になるような人だもん。素敵な人なんだろうね。無事に成就することを願っているよ、それから応援も。話したいことがあったら言ってね」
「はい。有難うございます。じゃあ」
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「はい、また……」
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ドキドキドキ。
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(どうして中村さんは、こんなことしたんだろう?)
仲の良い友達の一人として、思ってくれているんだと思うと、それだけでも嬉しいと思った。
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