【完結・BL】マンネリ化を解消したかっただけなのに!【店員×社〇人】

彩華

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63】伊織君、俺ね

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63】伊織君、俺ね

 ドキドキと、近い距離に心臓が煩かった。それでも、揶揄うようにアナニーにハマっているんだと言われ、恋人は? なんて言うから。俺が好きなのは異性じゃないし、ペニスを扱くだけじゃ満足にイケないのにとか。色んな感情がまとめて、「俺は男の人が好き」だと伝えれば、一瞬ピリついた空気のあと中村さんが言った。

「俺もね、男の人が好きなんだ」

「ぇ、あ……あ、あはは……」

(じゃあ、俺。フラれたな)

ジワリと視界が歪む気がする。ああ、涙だと気付いたのは学生じゃなくなってから、まともに泣いたことが無かったから忘れていた。こんなところで泣くわけにはいかない。まだ目の渇きを潤す程度の、ジワリと目が潤んでいるくらいだ。

「え、伊織君……!?」

「あ、ちがっ……、その……、ちょっとドライアイで防御本能的な……」

苦しいと思った。初めての恋に浮かれていて、お店に入る前までは気持ちの伝えても……だとか。そんなことを思っていたのに、中村さんに好きな人がいると聞いただけで、気持ちが一気に沈んでいく。一周回って、ローションと一緒にバイブかディルドでも買って帰ろうかとすら思えてくる。もう俺の腹のナカ、アナルを慰めてくれるのはアダルトグッズだけだ。

肩に置かれた両手が離れ、内心安堵する。これ以上、こんな姿を見られたくない。一旦中村さんが俺から離れた。お店の入口の方へ向かう背中を見ながら、これはすぐに帰れないのでは……!? と気付いた。

「中村さん、すぐに帰りますよ?」

「やだ」

「え?」

ガチャン、と鍵が締まる音がした。

「ごめんね」

何で中村さんは謝っているんだろう。え? と戸惑う俺に、更に驚く言葉が続いた。

「伊織君、明日は休み?」

「明日は……休みですけど」

そういえば、今日は金曜日だった。暦通りに、明日は休み。けど、今どうして俺の休みが関係あるんだろう?

「俺の勘違いだったらごめん。まぁ、でも勘違いだったとしても、伊織君にはまっとうな恋愛が出来ない身体にするつもりだったんだけど」

「は?」

「俺ね、伊織君に好きな人がいるって聞いて結構ショックだったんだよ。伊織君に好かれている人が羨ましいなって。俺だって、伊織君とエッチなことしてるのになって。そしたらさ、伊織君の身体を俺じゃなきゃ満足出来ない身体にしておけば良かったって」

後半の言葉が、随分と物騒に思えるのは俺の気のせいだろうか。

「中村さん?」

「伊織君。俺ね、伊織君のこと好きなんだ」

「…………え?」

(え? 今中村さん、俺に好きだって言わなかったか??)


******
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