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13】平気で私が言えない言葉を口にする
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13】平気で私が言えない言葉を口にする
「え? 何でいるんだい?」
「俺か?」
「うん……」
馬を借りようと馬舎へやって来れば、このタイミングでギルベルトがいた。他の者たちは、嬉しそうにギルベルト様だとか、アーサー様と私たちに声をかけてくれる。私だけが、いかにもという感じに反応してしまい。それこそギルベルトに会いたくなかった雰囲気を出してしまったこともあり、ギルベルトがズンズンと私の方へとやって来た。
(嬉しいけど、今じゃないんだ。今じゃ! 何なら、少しセンチメンタルな私にとって、ギルベルトの登場は、一層センチメンタルになってしまう)
「この管理も騎士団がやっているからな。俺もちょっと見回りと、皆の様子を見に来たんだ。何だよ、俺の顔を見たくなかったのか?」
「う、うぅ゛っ……できれば今は、見たくなかったかな」
「何でだよ、って。まぁ、良いか。アーサー、今日は久しぶりにゆっくり出来るんだろう? 俺もこれから暇なんだ。馬を借りに来たなら、一緒に森に行かないか」
ギュッと目を瞑りながら、思わず口に出してしまった。閉じたままの瞳で、ギルベルトの表情は見えない。ただ声色は、拗ねたような声だった。(顔を見たくなかったと言われたんだ。拗ねるはずだ)
ギルベルトからの誘いに閉じた目を開く。私の様子を気遣ってくれたんだろう。ギルベルトは、いつだって私に優しい。いや、皆に優しい。センチメンタルだと言いながら、ギルベルトと二人きりと思うと申し出を断る理由もない。
「……行く」
(私って、意外と現金な奴だったんだな)
ギルベルトのことで悩んで、それでギルベルトの提案で嬉しくなって。
(私ばかり。ギルベルトも、私みたいに悩めば良いのに)
「よし、決まりだ。悪い、俺とアーサーに馬を見繕ってくれ。森に行って来る」
「分かりました」
ギルベルトの声かけに、騎士団の人が馬を連れて来てくれた。
「有難う」
スムーズに馬の手綱を受け取って、お互いに馬に跨る。
「じゃあ、行くか」
「…………はぁ」
こんなに恰好良くて、信頼もあって。騎士団長として戦ったら強いわけで。
「どうしたんだ? 人の顔を見て、大きな溜息をついて」
「ギルベルトが恰好良すぎて、ズルイと思っただけだよ。じゃあ、お先に!」
「あ! おい!」
ズルイ。本当にズルイ。
散々センチメンタルだとか思っていたが、こんなに恰好良いのだから、ライバルが多すぎるじゃないか。そんな私の拗らせた恋心が、珍しく拗ねたように顔を出し。まるで子供のように駆け出してギルベルトを置いて先に森へと駆けて行った。
その後。
二人だけで遊んだ場所を巡ったりして、ギルベルトを独り占めした私の機嫌は帰るころにはすっかり良くなっていたわけで。
「アーサー」
「何だい?」
「機嫌が治ってくれて良かったよ。俺は、アーサーの可愛い顔が好きだからな」
「……ッ!」
平気で私が言えない言葉を口にするんだから、本当にズルイ。
(これがアルファというものなのか……?)
ぐぬぬと思いながらも、やっぱりギルベルトが好きだと思ってしまった。
*******
「え? 何でいるんだい?」
「俺か?」
「うん……」
馬を借りようと馬舎へやって来れば、このタイミングでギルベルトがいた。他の者たちは、嬉しそうにギルベルト様だとか、アーサー様と私たちに声をかけてくれる。私だけが、いかにもという感じに反応してしまい。それこそギルベルトに会いたくなかった雰囲気を出してしまったこともあり、ギルベルトがズンズンと私の方へとやって来た。
(嬉しいけど、今じゃないんだ。今じゃ! 何なら、少しセンチメンタルな私にとって、ギルベルトの登場は、一層センチメンタルになってしまう)
「この管理も騎士団がやっているからな。俺もちょっと見回りと、皆の様子を見に来たんだ。何だよ、俺の顔を見たくなかったのか?」
「う、うぅ゛っ……できれば今は、見たくなかったかな」
「何でだよ、って。まぁ、良いか。アーサー、今日は久しぶりにゆっくり出来るんだろう? 俺もこれから暇なんだ。馬を借りに来たなら、一緒に森に行かないか」
ギュッと目を瞑りながら、思わず口に出してしまった。閉じたままの瞳で、ギルベルトの表情は見えない。ただ声色は、拗ねたような声だった。(顔を見たくなかったと言われたんだ。拗ねるはずだ)
ギルベルトからの誘いに閉じた目を開く。私の様子を気遣ってくれたんだろう。ギルベルトは、いつだって私に優しい。いや、皆に優しい。センチメンタルだと言いながら、ギルベルトと二人きりと思うと申し出を断る理由もない。
「……行く」
(私って、意外と現金な奴だったんだな)
ギルベルトのことで悩んで、それでギルベルトの提案で嬉しくなって。
(私ばかり。ギルベルトも、私みたいに悩めば良いのに)
「よし、決まりだ。悪い、俺とアーサーに馬を見繕ってくれ。森に行って来る」
「分かりました」
ギルベルトの声かけに、騎士団の人が馬を連れて来てくれた。
「有難う」
スムーズに馬の手綱を受け取って、お互いに馬に跨る。
「じゃあ、行くか」
「…………はぁ」
こんなに恰好良くて、信頼もあって。騎士団長として戦ったら強いわけで。
「どうしたんだ? 人の顔を見て、大きな溜息をついて」
「ギルベルトが恰好良すぎて、ズルイと思っただけだよ。じゃあ、お先に!」
「あ! おい!」
ズルイ。本当にズルイ。
散々センチメンタルだとか思っていたが、こんなに恰好良いのだから、ライバルが多すぎるじゃないか。そんな私の拗らせた恋心が、珍しく拗ねたように顔を出し。まるで子供のように駆け出してギルベルトを置いて先に森へと駆けて行った。
その後。
二人だけで遊んだ場所を巡ったりして、ギルベルトを独り占めした私の機嫌は帰るころにはすっかり良くなっていたわけで。
「アーサー」
「何だい?」
「機嫌が治ってくれて良かったよ。俺は、アーサーの可愛い顔が好きだからな」
「……ッ!」
平気で私が言えない言葉を口にするんだから、本当にズルイ。
(これがアルファというものなのか……?)
ぐぬぬと思いながらも、やっぱりギルベルトが好きだと思ってしまった。
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