6 / 31
6】窓越しに見える僕は
しおりを挟む
6】窓越しに見える僕は
突然の告白と、妙な余韻の残る空気が、ガラガラと開いた扉の音で抜けていく。それから再会の時間は、あっという間に幕を閉じた。
「水野先生。久しぶりに教え子と再会出来て、どうでしたか?」
「園長先生」
穏やかに話しかけてくれる園長先生の顔は、再会を僕と同じように喜んでくれていた。僕も出来るならすぐに「嬉しいです」と返事したいが、頭の中に先程の告白が残って出遅れてしまう。僕よりも早く久保君が返事して、帰り支度をする。
「園長先生、有難うございました。また来ても良いですか?」
「勿論だよ、久保尾君。よかったら、今の園児たちにも学校の話とか聞かせてくれると嬉しいな」
「喜んで。遅くまで、失礼しました」
そう言って行儀良くペコリと頭を下げた久保君は、あっという間に帰って行ったのだった。残されたのは、僕一人。園長先生に続いて斉藤先生もやって来て、「どうでしたか?」と園長先生と同じように聞いて来る。
「久保君が、高校生になるなんてなぁ……」
「早いですねぇ」
「あ! 水野先生はまだまだ若いけどね?」
「良いんですよ、園長先生。僕もおじさんの仲間入りしているので」
「まだまだ若いよ、水野君は。それよりも久保君……」
「園長先生、久保君とってもイケメンになってましたねぇ……」
「そうだねぇ……」
園長先生と斉藤先生が、嚙みしめるように言った。
「さぁ、先生方。今日は、この辺で帰りましょうか。明日も宜しくお願いしますね」
「「はい。お疲れさまでした」」
確かに。時間はもう夕方を過ぎていて、お腹も空いた。賑やかな園が、帰りの時は静かで少しだけ寂しい。荷物を片付けて、僕も家へと帰っていく。
タタン、タタン、タタン──────。
朝より人が少なくスペースのある電車の中で、窓越しに外を見ていた。映っているのは、僕の顔。その顔には、確かな疲れの色が浮かんでいる。
「……」
(いくら園長先生たちが若いと言ってくれても、僕も若くは無いよなぁ……)
昔と比べると、体力が落ちたし。体力が回復するまで時間がかかるようになったし。ポツポツ白髪だって目立つようになってきた。
『そのっ……先生。やっぱり俺は、先生が好きなんだけど』
「…………」
頭の中に、また告白の言葉を思い出す。
(おじさんなんかより、可愛い子は沢山いるのに)
なんでだろう? と思いながら。胸の奥でドキンと鳴った心臓に、この時の僕は気づいていなかった。
********
ちょっと詰んだのと、繁忙期になるので更新遅れるかもしれません><
突然の告白と、妙な余韻の残る空気が、ガラガラと開いた扉の音で抜けていく。それから再会の時間は、あっという間に幕を閉じた。
「水野先生。久しぶりに教え子と再会出来て、どうでしたか?」
「園長先生」
穏やかに話しかけてくれる園長先生の顔は、再会を僕と同じように喜んでくれていた。僕も出来るならすぐに「嬉しいです」と返事したいが、頭の中に先程の告白が残って出遅れてしまう。僕よりも早く久保君が返事して、帰り支度をする。
「園長先生、有難うございました。また来ても良いですか?」
「勿論だよ、久保尾君。よかったら、今の園児たちにも学校の話とか聞かせてくれると嬉しいな」
「喜んで。遅くまで、失礼しました」
そう言って行儀良くペコリと頭を下げた久保君は、あっという間に帰って行ったのだった。残されたのは、僕一人。園長先生に続いて斉藤先生もやって来て、「どうでしたか?」と園長先生と同じように聞いて来る。
「久保君が、高校生になるなんてなぁ……」
「早いですねぇ」
「あ! 水野先生はまだまだ若いけどね?」
「良いんですよ、園長先生。僕もおじさんの仲間入りしているので」
「まだまだ若いよ、水野君は。それよりも久保君……」
「園長先生、久保君とってもイケメンになってましたねぇ……」
「そうだねぇ……」
園長先生と斉藤先生が、嚙みしめるように言った。
「さぁ、先生方。今日は、この辺で帰りましょうか。明日も宜しくお願いしますね」
「「はい。お疲れさまでした」」
確かに。時間はもう夕方を過ぎていて、お腹も空いた。賑やかな園が、帰りの時は静かで少しだけ寂しい。荷物を片付けて、僕も家へと帰っていく。
タタン、タタン、タタン──────。
朝より人が少なくスペースのある電車の中で、窓越しに外を見ていた。映っているのは、僕の顔。その顔には、確かな疲れの色が浮かんでいる。
「……」
(いくら園長先生たちが若いと言ってくれても、僕も若くは無いよなぁ……)
昔と比べると、体力が落ちたし。体力が回復するまで時間がかかるようになったし。ポツポツ白髪だって目立つようになってきた。
『そのっ……先生。やっぱり俺は、先生が好きなんだけど』
「…………」
頭の中に、また告白の言葉を思い出す。
(おじさんなんかより、可愛い子は沢山いるのに)
なんでだろう? と思いながら。胸の奥でドキンと鳴った心臓に、この時の僕は気づいていなかった。
********
ちょっと詰んだのと、繁忙期になるので更新遅れるかもしれません><
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
28
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる