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29】【Side.K】呼び方一つが羨ましい
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29】【Side.K】呼び方一つが羨ましい
「は?」
そう口から出たのは、放課後の教室。慣れた様子で、百合が教室に俺たちだけになった時だった。また何食わぬ顔をして、俺の前に席に座る。それから机一つに向かい合って座っていると「そういえば」と世間話をするように言った。
「そういえば、私も先生に会いに行って来た」
「は?」
いや、待て。先生違いかもしれないと、考えないようにする。だが百合は、二度目はハッキリと言った。
「だから、私も水野先生に会いに行って来た」
ブイ、と見せつけてくる様子に、また「は?」と口に出る。
「は……? 何で……??」
「だって圭介だけズルイじゃん」
「ズルイって何だよ……!」
「ちなみに圭介、先生に何て呼ばれてる?」
「久保君」
「私、百合ちゃん」
またブイ、と広げた指を今度は開閉してアピール。俺はといえば、そのまま机に突っ伏して、噛みしめるように。それでいて、絞り出すような声で言った。
「……ッ! 名前呼びの方がズルイだろ……!」
「羨ましい?」
「羨ましい」
変わらず突っ伏したまま返事する俺。モゴモゴと聞こえる声に、百合が「マジ凹みしてんじゃん」と呆れたように言った。突っ伏したままは苦しくなって、しょうがないと頭を上げる。
「当たり前だろ。俺だって、名前で呼ばれたいし」
「私が圭介って呼んであげてるじゃん」
「先生からがいいんだよ」
「どうして?」
「どっ……うしたっていいだろ!」
「ねぇ、圭介。今日一緒に先生に会いに行かない?」
「何でだよ。俺は一人で行くから良い」
そうだ。俺は先生が好きだし、先生にアピールだってしたい。それには一人でいるのが好都合。何より、人前で先生に構ってもらおうとするのは気恥ずかしい。半ば、昔から知っている百合の前でとなれば、猶更。一人で行くに限る。
「何でよ」
「一人が良いからだよ」
「ふーん……今日私と行ったら、圭介って呼んで貰えるかもしれないのに?」
悪魔の囁きのような言葉に、うん? と耳を傾けてしまう。
「何で百合と一緒に行けば、先生が俺の名前を呼んでくれるんだよ」
「先生~、私だけ百合ちゃん呼びって不公平じゃないですか? 圭介のことも、圭介君って呼んで下さいよ~! なんて感じで」
百合が軽く演技して言ったが、なるほど。一理ある。一理あるが、やっぱり二人で先生に会いに行く気にはなれない。
「ねぇ~、圭介~。いいじゃ~ん。一緒に行こうよ~」
「絶っっっっ対! 行かねぇ」
ガタン! と今日は俺の方が先に席を立ち。じゃあな! と帰ることにした。
「圭介のケチ!」
「あ! 何で百合も来るんだよ!」
「私も帰るからだし、家の方向も一緒だからじゃん!」
ギャアギャアと言いながら、廊下を小走りしていると先生に見つかって。
「こら~、二人とも。あんまりイチャつかないように~」
なんて言われてしまい。
「「イチャついてません!!!」」
とハモってしまった。
(あー……。やっぱり名前呼び羨ましいな)
*******
毎日詰んでしまいます><
「は?」
そう口から出たのは、放課後の教室。慣れた様子で、百合が教室に俺たちだけになった時だった。また何食わぬ顔をして、俺の前に席に座る。それから机一つに向かい合って座っていると「そういえば」と世間話をするように言った。
「そういえば、私も先生に会いに行って来た」
「は?」
いや、待て。先生違いかもしれないと、考えないようにする。だが百合は、二度目はハッキリと言った。
「だから、私も水野先生に会いに行って来た」
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「ズルイって何だよ……!」
「ちなみに圭介、先生に何て呼ばれてる?」
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「……ッ! 名前呼びの方がズルイだろ……!」
「羨ましい?」
「羨ましい」
変わらず突っ伏したまま返事する俺。モゴモゴと聞こえる声に、百合が「マジ凹みしてんじゃん」と呆れたように言った。突っ伏したままは苦しくなって、しょうがないと頭を上げる。
「当たり前だろ。俺だって、名前で呼ばれたいし」
「私が圭介って呼んであげてるじゃん」
「先生からがいいんだよ」
「どうして?」
「どっ……うしたっていいだろ!」
「ねぇ、圭介。今日一緒に先生に会いに行かない?」
「何でだよ。俺は一人で行くから良い」
そうだ。俺は先生が好きだし、先生にアピールだってしたい。それには一人でいるのが好都合。何より、人前で先生に構ってもらおうとするのは気恥ずかしい。半ば、昔から知っている百合の前でとなれば、猶更。一人で行くに限る。
「何でよ」
「一人が良いからだよ」
「ふーん……今日私と行ったら、圭介って呼んで貰えるかもしれないのに?」
悪魔の囁きのような言葉に、うん? と耳を傾けてしまう。
「何で百合と一緒に行けば、先生が俺の名前を呼んでくれるんだよ」
「先生~、私だけ百合ちゃん呼びって不公平じゃないですか? 圭介のことも、圭介君って呼んで下さいよ~! なんて感じで」
百合が軽く演技して言ったが、なるほど。一理ある。一理あるが、やっぱり二人で先生に会いに行く気にはなれない。
「ねぇ~、圭介~。いいじゃ~ん。一緒に行こうよ~」
「絶っっっっ対! 行かねぇ」
ガタン! と今日は俺の方が先に席を立ち。じゃあな! と帰ることにした。
「圭介のケチ!」
「あ! 何で百合も来るんだよ!」
「私も帰るからだし、家の方向も一緒だからじゃん!」
ギャアギャアと言いながら、廊下を小走りしていると先生に見つかって。
「こら~、二人とも。あんまりイチャつかないように~」
なんて言われてしまい。
「「イチャついてません!!!」」
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(あー……。やっぱり名前呼び羨ましいな)
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