【BL】健全・BL詰め合わせ

彩華

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【BL】ケンちゃん、僕のお嫁さんになってくれる?【幼馴染】

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■こんな設定
・幼馴染BL

**************


■ケンちゃん、僕のお嫁さんになってくれる?■

 初めて告白されたのは、幼稚園の頃だった。

「ねぇ、ケンちゃん。好きだよ」

そんな、たどたどしくて文字の少ない告白。
幼稚園で好きだなんて言われたら、ハンバーグが好きだとか、飛行機が好きだとか。そんな軽い感覚だと思って返事した。

「俺も、お前のこと好き」

嫌いじゃない。うん。お前、ピーマンみたいに苦くないし。
好きだったらどうしたんだ? と特に考えることも、声のする方を見ることなく。ただ黙々と砂場の山に集中していれば、続いた言葉に思わず相手の方を見た。

「じゃあ、ケンちゃん。僕のお嫁さんになってくれる?」

「は?」

なんで?

************
*******

 「……はっ!」

驚いたように目を見開けば、見知った天井。俺の部屋だ。どうやら、さっきまでの夢らしい。

「あー……クソッ、無駄に早起きしちまった……」

文句を言いつつベッドから上半身を起こす。枕元に置いている携帯を見れば、まだ時間は朝の6時。目覚ましよりも早い時間。

「マジかよ。二度寝すっかな」

そう思ったが、チラついたのは先ほどまで見ていた鮮明な夢。

『ケンちゃん』

ケンジという名前の俺を、ケンちゃんだなんて可愛く呼ぶ。
幼稚園の頃、家が近所だった「タケル」だ。
俺よりも小柄で、いつもニコニコして俺と同じ男。クリクリとした大きな目に、丸い顔。俺と一緒にいれば、いつも女の子? と間違われていたっけ。まぁ、タケルの顔は確かに可愛かったもんな。分かる。
はーっ……と息を吐きながら、頭をボリボリと掻いた。

「タケルの奴、元気にしてんのかな?」

懐かしいと思ったが、もうタケルはこの街にいない。
ありがちな親父さんの転勤で、小学校に上がる前に引っ越した。引っ越しの日、「嫌だ!」と泣き叫ぶタケルを叔母さんが宥めながら、頭を下げて車に乗ったのを鮮明に覚えている。バタンと閉まるドアの向こうで、俺も思わず貰い泣き。

『タケル』

『ケンちゃん』

大きな目から、ボロボロとビー玉みたいな涙を流し。窓越しに聞こえなかったけれど、何度も「ケンちゃん」と口が動いていた。

「もう10年以上前になるのか」

結局二度寝も出来ず、制服に着替える。母さんがアイロンをかけてくれたカッターシャツに、袖を通す。紺色のブレザーは、出かける時に最後に。手持ち無沙汰にカタンと机の引き出しからハガキを一枚取り出してクスリと笑った。

「なんて書いてるか、分からねぇよ」

小さなハガキに、ぐしゃぐしゃとクレヨンで書いた文字。
引っ越した後に届いたハガキを、今でも大事に取っている。力強く書いている文字は読めないが、ケンだけはしっかりと読めて、また会いたいと思った。

「今どこにいるかも分からねぇけど」

思い出したのは嬉しかったが、連絡が途絶えた今となっては少しだけ寂しい。

「ケーン、起きなさーい」

朝から妙にしんみりしてしまったと思えば、俺を呼ぶ母さんの声がした。
起きてますよと、トントンと足音を立てて階段を降り。どうだ? という顔をすれば「あら、珍しい」と言われた。

「頂きます」

遅刻しない程度に、母さんが準備してくれた朝ご飯を食べる。お昼に米を食べるからと、朝はパン。だが、1枚では腹持ちしないので2枚。コーンスープを飲んでいると、母さんが意味ありげにニヤニヤと笑っていた。

「……何?」

「なんでも? ケン、そういえば今日転校生来るんだって?」

「あー……そういえば」

クラスの女子たちが、キャアキャア最近賑やかだったのを思い出す。入学式から、はや一か月。桜は散ってしまった中、遅れてきた新入生のように俺たちのクラスに転校生が来るらしい。分かっているのは、男だということだけ。

「母さん、何で知ってんだ?」

「あ! そ、それは……お母さんコミュニティよ!」

「ふーん」

ムシャとパンに噛みついて、目の前の皿は綺麗にパンくずだけになった。

「ご馳走様」

あとは顔を洗って、寝ぐせを整えて。簡単に身支度を済ませれば学校に行く。いつもと変わらないローテーション。

(幼稚園の頃だったら、この後タケルが呼びに来てたんだけどな)

変な期待。夢を見たせいだと思いながら、最後にブレザーに袖を通し。

「行ってきます」

「言ってらっしゃい」

バタンと玄関のドアを閉じ、俺は学校へと向かった。
この時の俺に、時間を戻ることが出来るなら心の準備をしておけと言ってやりたい。




朝のホームルームを知らせるチャイムの音と、同級生の挨拶の声。今日はとりわけ女子たちの期待の声が上がっている。

「ねぇねぇ、いよいよ今日だよ。転校生!」
「イケメンだったら良いなぁ」
「ほんと!」

そうこうしていると、カツカツと廊下を歩く音が近づいて来た。窓際にいる何名かが、「来た!」とクラス中に合図する。

(どんな奴なのかな)

先程まで賑やかだった教室が、だんだんと静かになり。ドアの向こうに先生の姿が映った時には無音になった。クラス中に走る緊張。
「良いかい?」と先生の声がした後、ガラッ! と開いたドア。先生の後に入っていた転校生にクラス中の注目が集まる。

「ひぁぁぁっ……!」

わずかに、女子の黄色い悲鳴が漏れた。


「初めまして」


とうとう現れた転校生。
穏やかな声。大きなクリクリとした目元。失礼かもしれないが、可愛い顔をしているのにグンッ……! と大きな身体。
クラス全体を見つめた後にニコリと微笑めば、「キャァアアアア!」と今度こそ女子の大きな悲鳴が響いた。

「ヤバイ、超イケメン!」
「顔が良すぎる」
「どうしよう~、超恰好良い~!!」

盛り上がる女子と、置いていかれる俺たち男子。確かにイケメンだと思う。

「どうする、ケンジ? クラスのイケメンの座を取られちまうぜ?」

「イケメンじゃねぇし」

揶揄うように、俺の肘を隣の席の田中が小突く。だがそんなことよりも、俺の視線は皆と同じ転校生。目の前の転校生に、どこかタケルの面影を見た。

「こら、静かに。イケメン転校生に興奮するのは分かるが、自己紹介がまだだぞ~」

「はーい」

「じゃあ、自己紹介お願い出来るかな?」

「はい。中村タケルです。小さい頃は、この街に住んでいました。またこの街に戻って来れて嬉しいです。皆さん、宜しくお願いします」

「タケル……?」


ポロリと口に出せば、「知り合い?」と田中が聞いてきた。思わずコクンと首を振ったのが最後。田中が「先生!」と手を上げて大声で言った。

「ケンジ、転校生と知り合いみたいっス!」

「あっ! おい、ばか!」

田中の口を塞ごうとするよりも早く、トントンと話は進み始めてしまったわけで。

「ケンちゃん?」

「そうか。なら慣れるまで、案内を頼めるか?」

「先生、俺席変わるぜ」

ガタガタと田中が机を移動し出す。前もって持って来ていた新しい机を女子が移動させ、俺の隣に。先生も授業開示時間が近くなり、「じゃあ、あの席に」で完了。
呆気にとられる俺をよそに、ニコニコと隣にやって来たタケル。

(お前、本当にタケル?)

なんて言葉は出ず。

「教科書まだ無いんだ。ケンちゃん見せて」

「あ、ああ」

机をくっつけ、教科書を開き。
何も無かったかのように授業が始まるかと思った時だ。

「ケンちゃん」

ひそっ……と、タケルが俺の耳元に近づいてきて囁いた。

「ケンちゃん、僕のお嫁さんになってくれる?」

「は?」

あ、これ本当にタケルだわ。

■ケンちゃん、僕のお嫁さんになってくれる?■

待て待て待て。まさか、正夢? と思うのと、嫁? と色んな情報が多すぎて一時間目の授業の内容が頭に入って来なかった。



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