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■急に口を開いたと思ったら■
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■急に口を開いたと思ったら■
いつもの同じ朝、同じ満員電車で今日も一日が始まり、会社にやって来た……はずだったが、変わったことが一つある。
「う゛っ……!」
やめろ! 無駄にキラキラするな! 眩しい!!
思わず目を瞑ってしまったのは、昨日まで隣が空いていた俺の隣にドストレートに好きな顔の先輩が座っていること。
「おはよう、水野」
「おはようござます」
良かった。気づかれてない。可愛くなった俺の、梅干を食べたあとのような顔を見られなくて良かったと内心思いながら顔には出さす。
気にしてませんよ~、上司と部下ですよ~と雰囲気を出しながら、自分の席に着いた。
簡単に準備して、今日の予定の相談。
「加藤先輩、今日はどうします?」
「……」
「先輩?」
俺、何か変なこと言ったか? と顔を上げるとキョトンしている加藤先輩。つられて俺もキョトンとしながら、首を傾げる。
「いや……何かさ」
「はい」
「未だに加藤先輩って呼んでくれるんだなって」
「ジワジワきて」と続く言葉に、言葉を失うのは俺の方。
「そ…んなの、当たり前じゃないですか。加藤先輩なんだし」
「そうだけどさ。線引きするって言ってたし、役職で呼ばれるんじゃないかなって思ってたから」
「あ」
(ああああ、そうだった! 加藤先輩は俺の上司だった……! 社内メールで検索かけても、ちゃんと主任と記載される役職の持ち主だった……!)
何で昨日のうちに気付かないと思ったが、それは先輩も同じだ。お互い懐かしくて忘れていた。
「すみません、加藤主任」
気を付けなちゃなと、一応昨日貰った名刺の役職にマーカーで線を引けば「待って」と言われた。
「良いよ。水野は、俺のこと加藤先輩って呼んでよ」
「な?」と問うような眼差しに、思わず唇を噛む。だから、そういうところ何だって! 先輩自覚あります? ありますよね? 昔より、やっぱり質が悪くなってますよ! 朝から心の中の俺は元気いっぱい。
ははっ、と軽く笑っていると、昨日の女性陣たちが「加藤主任」と声をかけてきたので黙って気配を消した。
「加藤主任、おはようございます」
「主任、今日は外回りですか?」
「こっちの生活には慣れましたか?」
昨日も同じこと聞いてなかったっけ? と思ったが、黙っておく。入社したての頃は、俺もこうだったなぁとかと思っていると、俺にも話が振られた。
「水野君は可愛いし、加藤主任は恰好良くて。このゾーン目の保養ですよ」
「本当ですよ」
黄色い声が弾みながら、俺のことも褒めてくれた。可愛いと言われることは嬉しいので、「有難うございます」と笑って答える。
その間も黙ったままだった加藤先輩が、俺を見て。それから女性陣を見て。ようやく口を開いた。
「水野、可愛いよな」
「な……っ」
何言ってるんですか、の言葉は「キャアアア!」と言う女性陣の声に掻き消された。
■急に口を開いたと思ったら■
俺が可愛いのは知ってますよ!!
********
いつもの同じ朝、同じ満員電車で今日も一日が始まり、会社にやって来た……はずだったが、変わったことが一つある。
「う゛っ……!」
やめろ! 無駄にキラキラするな! 眩しい!!
思わず目を瞑ってしまったのは、昨日まで隣が空いていた俺の隣にドストレートに好きな顔の先輩が座っていること。
「おはよう、水野」
「おはようござます」
良かった。気づかれてない。可愛くなった俺の、梅干を食べたあとのような顔を見られなくて良かったと内心思いながら顔には出さす。
気にしてませんよ~、上司と部下ですよ~と雰囲気を出しながら、自分の席に着いた。
簡単に準備して、今日の予定の相談。
「加藤先輩、今日はどうします?」
「……」
「先輩?」
俺、何か変なこと言ったか? と顔を上げるとキョトンしている加藤先輩。つられて俺もキョトンとしながら、首を傾げる。
「いや……何かさ」
「はい」
「未だに加藤先輩って呼んでくれるんだなって」
「ジワジワきて」と続く言葉に、言葉を失うのは俺の方。
「そ…んなの、当たり前じゃないですか。加藤先輩なんだし」
「そうだけどさ。線引きするって言ってたし、役職で呼ばれるんじゃないかなって思ってたから」
「あ」
(ああああ、そうだった! 加藤先輩は俺の上司だった……! 社内メールで検索かけても、ちゃんと主任と記載される役職の持ち主だった……!)
何で昨日のうちに気付かないと思ったが、それは先輩も同じだ。お互い懐かしくて忘れていた。
「すみません、加藤主任」
気を付けなちゃなと、一応昨日貰った名刺の役職にマーカーで線を引けば「待って」と言われた。
「良いよ。水野は、俺のこと加藤先輩って呼んでよ」
「な?」と問うような眼差しに、思わず唇を噛む。だから、そういうところ何だって! 先輩自覚あります? ありますよね? 昔より、やっぱり質が悪くなってますよ! 朝から心の中の俺は元気いっぱい。
ははっ、と軽く笑っていると、昨日の女性陣たちが「加藤主任」と声をかけてきたので黙って気配を消した。
「加藤主任、おはようございます」
「主任、今日は外回りですか?」
「こっちの生活には慣れましたか?」
昨日も同じこと聞いてなかったっけ? と思ったが、黙っておく。入社したての頃は、俺もこうだったなぁとかと思っていると、俺にも話が振られた。
「水野君は可愛いし、加藤主任は恰好良くて。このゾーン目の保養ですよ」
「本当ですよ」
黄色い声が弾みながら、俺のことも褒めてくれた。可愛いと言われることは嬉しいので、「有難うございます」と笑って答える。
その間も黙ったままだった加藤先輩が、俺を見て。それから女性陣を見て。ようやく口を開いた。
「水野、可愛いよな」
「な……っ」
何言ってるんですか、の言葉は「キャアアア!」と言う女性陣の声に掻き消された。
■急に口を開いたと思ったら■
俺が可愛いのは知ってますよ!!
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