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■ピョコン■
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■ピョコン■
それは、朝起きた時には既に起きていた。
いつも通り、目覚まし代わりの昔使っていた携帯のアラームで遅刻しないように起き。ベッドの上で、軽く背伸び。ん~~! と軽く伸びながら、まだショボショボする目のままシンクへ。
「まだ眠い……」
そうボヤキながら冷凍庫から冷凍の米を取り出して、チン。勿論、昼ご飯用のおにぎりだ。今日のスープは何にしようかと軽く吟味。それから、朝は軽くパンを食べ終え、身支度の準備。歯を磨き終え、バシャ……! と顔に水を浴び顔を洗うまでは良かった……。
目が覚めて、鏡に映った自分を見れば一か所。ピョコンと跳ねている箇所に気付いた。
「……げ」
寝ぐせだ。
もともとストレートの髪質だが、寝ぐせがつけば話は別。ストレートの時は何の問題も無いが、寝ぐせは駄目だ。何をやっても治らない。それこそ、頭を丸々洗い直さないといけない。
「頭を洗ってる時間は無いんだって」
多めの水で毛先を濡らしてみるが、効果は無い。ただビチャビチャになった髪に、滴る水滴が俺の肩を濡らすだけ。まだ着替える前で良かったのが、せめてもの救い。ドライヤーをかけてみても、これまた効果は無し。
「ああっ……! もう!!」
改善策が無いことは、既に分かっている。寝ぐせが付くのは初めてでもないし、会社にそのまま出社したことも何度かある。何度かあるが、今は隣に先輩がいる。
「こんな姿、見られるわけには……」
とまぁ。時間ギリギリまで格闘してみたものの。
「……おはようございます」
ちゃんと遅刻することなく、出社した自分を褒めたい。
「水野君、おはよう。あら?」
「よぅ、水野。お?」
田中さんに、既に来ていた人たちが挨拶を返してくれたが、すぐに視線が俺の髪の毛へと移るのが分かった。その表情が、どこか朗らかに分かっている。大人だから気を遣っているのか、言うか言わないかという程度なんだろう。田中さんは、「寝ぐせか?」と笑って言って、「そうなんです」で終わり。この程度なら、俺のダメージも少ない。
気にしているから、何も言わないで触れないでいてくれて有難うございます! と思いながら足早に席に向かった俺。皆、大人の対応だと安心するのは、まだ早い。一番気にしている存在が、何気に一番子供っぽいことを知っている。
バレないように、せめてもの抵抗にハネている箇所を撫でつけ、ふーっ……と深呼吸。
(いやいや。落ち着け、俺。先輩だって、もう大人なんだ。流石に他の皆みたいに大人の対応とか。弄ったとしても、やんわりと弄って終わる程度かもれしれない)
うーんと思いながらも、きちんと仕事の準備をする俺。(偉い)
「おはようございます」
来た! と、俺が一番心配していた加藤先輩の登場。コツコツと近づいてくる足音に、僅かに緊張する俺。隣にいつも通り座る……と思った瞬間。引いた椅子を止めたのが横目に見えた。それから、俺の髪に触れる感触。スリッ、と加藤先輩が俺の髪を擦るようにして、手を離してみたが変わらず。ピョコンと俺の寝ぐせはハネたまま。
「……ハネてる」
短く一言。その表情は、朝から俺には刺激が強いほど柔和な笑顔だった。
「寝ぐせです!」
「そうですよ! ハネてますよ!」と早口で言葉を続け、今日は一日内勤にしますと言えば、「今日は昼から俺と一緒に外回りだ」と言われた。
■ピョコン■
******
初めてエントリーしてみましたが、反応、お読み下さり有難うございました!
それは、朝起きた時には既に起きていた。
いつも通り、目覚まし代わりの昔使っていた携帯のアラームで遅刻しないように起き。ベッドの上で、軽く背伸び。ん~~! と軽く伸びながら、まだショボショボする目のままシンクへ。
「まだ眠い……」
そうボヤキながら冷凍庫から冷凍の米を取り出して、チン。勿論、昼ご飯用のおにぎりだ。今日のスープは何にしようかと軽く吟味。それから、朝は軽くパンを食べ終え、身支度の準備。歯を磨き終え、バシャ……! と顔に水を浴び顔を洗うまでは良かった……。
目が覚めて、鏡に映った自分を見れば一か所。ピョコンと跳ねている箇所に気付いた。
「……げ」
寝ぐせだ。
もともとストレートの髪質だが、寝ぐせがつけば話は別。ストレートの時は何の問題も無いが、寝ぐせは駄目だ。何をやっても治らない。それこそ、頭を丸々洗い直さないといけない。
「頭を洗ってる時間は無いんだって」
多めの水で毛先を濡らしてみるが、効果は無い。ただビチャビチャになった髪に、滴る水滴が俺の肩を濡らすだけ。まだ着替える前で良かったのが、せめてもの救い。ドライヤーをかけてみても、これまた効果は無し。
「ああっ……! もう!!」
改善策が無いことは、既に分かっている。寝ぐせが付くのは初めてでもないし、会社にそのまま出社したことも何度かある。何度かあるが、今は隣に先輩がいる。
「こんな姿、見られるわけには……」
とまぁ。時間ギリギリまで格闘してみたものの。
「……おはようございます」
ちゃんと遅刻することなく、出社した自分を褒めたい。
「水野君、おはよう。あら?」
「よぅ、水野。お?」
田中さんに、既に来ていた人たちが挨拶を返してくれたが、すぐに視線が俺の髪の毛へと移るのが分かった。その表情が、どこか朗らかに分かっている。大人だから気を遣っているのか、言うか言わないかという程度なんだろう。田中さんは、「寝ぐせか?」と笑って言って、「そうなんです」で終わり。この程度なら、俺のダメージも少ない。
気にしているから、何も言わないで触れないでいてくれて有難うございます! と思いながら足早に席に向かった俺。皆、大人の対応だと安心するのは、まだ早い。一番気にしている存在が、何気に一番子供っぽいことを知っている。
バレないように、せめてもの抵抗にハネている箇所を撫でつけ、ふーっ……と深呼吸。
(いやいや。落ち着け、俺。先輩だって、もう大人なんだ。流石に他の皆みたいに大人の対応とか。弄ったとしても、やんわりと弄って終わる程度かもれしれない)
うーんと思いながらも、きちんと仕事の準備をする俺。(偉い)
「おはようございます」
来た! と、俺が一番心配していた加藤先輩の登場。コツコツと近づいてくる足音に、僅かに緊張する俺。隣にいつも通り座る……と思った瞬間。引いた椅子を止めたのが横目に見えた。それから、俺の髪に触れる感触。スリッ、と加藤先輩が俺の髪を擦るようにして、手を離してみたが変わらず。ピョコンと俺の寝ぐせはハネたまま。
「……ハネてる」
短く一言。その表情は、朝から俺には刺激が強いほど柔和な笑顔だった。
「寝ぐせです!」
「そうですよ! ハネてますよ!」と早口で言葉を続け、今日は一日内勤にしますと言えば、「今日は昼から俺と一緒に外回りだ」と言われた。
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