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■妬いてしまうということは■
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■妬いてしまうということは■
「……」
「…………ふふっ」
ジーッと見つめているのは、会社のパソコン画面じゃない。パソコンと比べると小さな携帯の画面。随分と機嫌良さそうな声は、誰の物でもない。正真正銘、俺の声。
隣に、加藤先輩は居ない。また一人で営業に出て行っている最中、休憩がてら俺はこの間手に入れた先輩との2ショット画像を見ていた。
(あー……)
(やっぱり顔が良いなぁ……)
学生時代とは互いに成長し大人になったけれど、それでも変わらず顔が良い先輩。誰にも見られないように、そっと画像を個人携帯に送った。(勿論、ロックもかけたしフォルダに入れた)
*****
「お、水野君。な~にニヤニヤしてるの~?」
「山本さん!?」
「何か見てニヤついてたね? 当ててあげようか? 加藤主任との、この前の写真でしょう?」
「な゛っ……! ち、がいます……よ……?」
「いやいや、水野君。嘘つくの下手過ぎでしょ」
「……山本さんだって、同じ写真貰ったじゃないですか」
「うん! とっても助かってる!!」
ポンッと俺の肩を叩いたのは、山本さんだ。急いで携帯を下ろして、何もありませんよ?と振る舞おうと先手を打たれた。
隠したって無駄だという様に、山本さんが「この名探偵・山本の推理を~」と言葉を続ける。山本さんも、先日無事に俺と同じく。田中さんのアシストもあり、加藤先輩の写真を手に入れた。バン! と俺に同じ画像を見せてきたや山本さん。その顔は、どこか自慢げだ。
「山本さん、何でそんなに自慢げなんですか」
「そりゃあ、イケメン画像が手に入ったら自慢したくもなるわよ」
「山本さんは、加藤主任とそのっ……恋人になりたいんですよね?」
デリケートな問題だと思ったが、あまりに自慢げだったので聞いてみた。どうして聞いてしまったのか、自分の気持ちに目を背けるようにしながら。それでも、聞いてしまったのは、もし山本さんが……とか。山本さんに限らず、加藤先輩の隣に俺じゃなくて綺麗な女の人がいる未来がすぐに来てしまえば?
そんな風に思ってしまう自分が、不意に顔出して山本さんに聞いていた。
問われた山本さんはといえば、別に気にする様子もない。それどころか、ニヤリと笑って言った。
「おやおやおや~?水野君、それはどういう意味で?」
「俺は別に……!」
深い意味なんて無いです。
そう言い切る前に、またタイミング良く帰って来たのは加藤先輩だ。
「失礼。山本君、悪いが妬いてしまうよ」
「加藤主任!?」
ギィッ、とそのまま俺の椅子が引かれた。俺と山本さんとの間に距離ができ、間に先輩が壁のように入り込む。片手に鞄を抱えたまま、俺の前に見えているのは先輩の背中だけ。
「主任、山本さんは別に何もしてないですよ!」
田中さんがいない今、俺が山本さんを守らなくてはと声を掛ければ「分かっている」と先輩の返事が返って来た。
「何も無いのは分かっているが、やはり水野を取られてしまうと、妬いてしまうんだ」
「な……に言ってるんですか!」
「し、しししし、失礼しました……!」
山本さんが、急いで加藤先輩の前から自分の席へと戻って行く。田中さんが山本さんの声を聞いてか、遠くで「こら~イケメン何してんだよ~」と言いながら。静かに椅子に座った先輩が、何か弁明するわけでもなく。
「言葉の意味だ」
と言ったので、俺はまた「そうですか」と短い返事をすることしか出来なかった。
(山本さんに嫉妬してるってことは、やっぱり俺のこと好きなんだよな?)
■妬いてしまうということは■
(駄目だ駄目だ。俺の心臓。鼓動を速くするんじゃない!)
******
久しぶりの更新でした!
「……」
「…………ふふっ」
ジーッと見つめているのは、会社のパソコン画面じゃない。パソコンと比べると小さな携帯の画面。随分と機嫌良さそうな声は、誰の物でもない。正真正銘、俺の声。
隣に、加藤先輩は居ない。また一人で営業に出て行っている最中、休憩がてら俺はこの間手に入れた先輩との2ショット画像を見ていた。
(あー……)
(やっぱり顔が良いなぁ……)
学生時代とは互いに成長し大人になったけれど、それでも変わらず顔が良い先輩。誰にも見られないように、そっと画像を個人携帯に送った。(勿論、ロックもかけたしフォルダに入れた)
*****
「お、水野君。な~にニヤニヤしてるの~?」
「山本さん!?」
「何か見てニヤついてたね? 当ててあげようか? 加藤主任との、この前の写真でしょう?」
「な゛っ……! ち、がいます……よ……?」
「いやいや、水野君。嘘つくの下手過ぎでしょ」
「……山本さんだって、同じ写真貰ったじゃないですか」
「うん! とっても助かってる!!」
ポンッと俺の肩を叩いたのは、山本さんだ。急いで携帯を下ろして、何もありませんよ?と振る舞おうと先手を打たれた。
隠したって無駄だという様に、山本さんが「この名探偵・山本の推理を~」と言葉を続ける。山本さんも、先日無事に俺と同じく。田中さんのアシストもあり、加藤先輩の写真を手に入れた。バン! と俺に同じ画像を見せてきたや山本さん。その顔は、どこか自慢げだ。
「山本さん、何でそんなに自慢げなんですか」
「そりゃあ、イケメン画像が手に入ったら自慢したくもなるわよ」
「山本さんは、加藤主任とそのっ……恋人になりたいんですよね?」
デリケートな問題だと思ったが、あまりに自慢げだったので聞いてみた。どうして聞いてしまったのか、自分の気持ちに目を背けるようにしながら。それでも、聞いてしまったのは、もし山本さんが……とか。山本さんに限らず、加藤先輩の隣に俺じゃなくて綺麗な女の人がいる未来がすぐに来てしまえば?
そんな風に思ってしまう自分が、不意に顔出して山本さんに聞いていた。
問われた山本さんはといえば、別に気にする様子もない。それどころか、ニヤリと笑って言った。
「おやおやおや~?水野君、それはどういう意味で?」
「俺は別に……!」
深い意味なんて無いです。
そう言い切る前に、またタイミング良く帰って来たのは加藤先輩だ。
「失礼。山本君、悪いが妬いてしまうよ」
「加藤主任!?」
ギィッ、とそのまま俺の椅子が引かれた。俺と山本さんとの間に距離ができ、間に先輩が壁のように入り込む。片手に鞄を抱えたまま、俺の前に見えているのは先輩の背中だけ。
「主任、山本さんは別に何もしてないですよ!」
田中さんがいない今、俺が山本さんを守らなくてはと声を掛ければ「分かっている」と先輩の返事が返って来た。
「何も無いのは分かっているが、やはり水野を取られてしまうと、妬いてしまうんだ」
「な……に言ってるんですか!」
「し、しししし、失礼しました……!」
山本さんが、急いで加藤先輩の前から自分の席へと戻って行く。田中さんが山本さんの声を聞いてか、遠くで「こら~イケメン何してんだよ~」と言いながら。静かに椅子に座った先輩が、何か弁明するわけでもなく。
「言葉の意味だ」
と言ったので、俺はまた「そうですか」と短い返事をすることしか出来なかった。
(山本さんに嫉妬してるってことは、やっぱり俺のこと好きなんだよな?)
■妬いてしまうということは■
(駄目だ駄目だ。俺の心臓。鼓動を速くするんじゃない!)
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久しぶりの更新でした!
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