【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華

文字の大きさ
24 / 41

■妬いてしまうということは■

しおりを挟む
■妬いてしまうということは■

 「……」

「…………ふふっ」

ジーッと見つめているのは、会社のパソコン画面じゃない。パソコンと比べると小さな携帯の画面。随分と機嫌良さそうな声は、誰の物でもない。正真正銘、俺の声。
隣に、加藤先輩は居ない。また一人で営業に出て行っている最中、休憩がてら俺はこの間手に入れた先輩との2ショット画像を見ていた。

(あー……)

(やっぱり顔が良いなぁ……)

学生時代とは互いに成長し大人になったけれど、それでも変わらず顔が良い先輩。誰にも見られないように、そっと画像を個人携帯に送った。(勿論、ロックもかけたしフォルダに入れた)

*****

 「お、水野君。な~にニヤニヤしてるの~?」

「山本さん!?」

「何か見てニヤついてたね? 当ててあげようか? 加藤主任との、この前の写真でしょう?」

「な゛っ……! ち、がいます……よ……?」

「いやいや、水野君。嘘つくの下手過ぎでしょ」

「……山本さんだって、同じ写真貰ったじゃないですか」

「うん! とっても助かってる!!」

ポンッと俺の肩を叩いたのは、山本さんだ。急いで携帯を下ろして、何もありませんよ?と振る舞おうと先手を打たれた。
隠したって無駄だという様に、山本さんが「この名探偵・山本の推理を~」と言葉を続ける。山本さんも、先日無事に俺と同じく。田中さんのアシストもあり、加藤先輩の写真を手に入れた。バン! と俺に同じ画像を見せてきたや山本さん。その顔は、どこか自慢げだ。

「山本さん、何でそんなに自慢げなんですか」

「そりゃあ、イケメン画像が手に入ったら自慢したくもなるわよ」

「山本さんは、加藤主任とそのっ……恋人になりたいんですよね?」

デリケートな問題だと思ったが、あまりに自慢げだったので聞いてみた。どうして聞いてしまったのか、自分の気持ちに目を背けるようにしながら。それでも、聞いてしまったのは、もし山本さんが……とか。山本さんに限らず、加藤先輩の隣に俺じゃなくて綺麗な女の人がいる未来がすぐに来てしまえば?

そんな風に思ってしまう自分が、不意に顔出して山本さんに聞いていた。
問われた山本さんはといえば、別に気にする様子もない。それどころか、ニヤリと笑って言った。

「おやおやおや~?水野君、それはどういう意味で?」

「俺は別に……!」

深い意味なんて無いです。
そう言い切る前に、またタイミング良く帰って来たのは加藤先輩だ。

「失礼。山本君、悪いが妬いてしまうよ」

「加藤主任!?」

ギィッ、とそのまま俺の椅子が引かれた。俺と山本さんとの間に距離ができ、間に先輩が壁のように入り込む。片手に鞄を抱えたまま、俺の前に見えているのは先輩の背中だけ。

「主任、山本さんは別に何もしてないですよ!」

田中さんがいない今、俺が山本さんを守らなくてはと声を掛ければ「分かっている」と先輩の返事が返って来た。

「何も無いのは分かっているが、やはり水野を取られてしまうと、妬いてしまうんだ」

「な……に言ってるんですか!」

「し、しししし、失礼しました……!」

山本さんが、急いで加藤先輩の前から自分の席へと戻って行く。田中さんが山本さんの声を聞いてか、遠くで「こら~イケメン何してんだよ~」と言いながら。静かに椅子に座った先輩が、何か弁明するわけでもなく。

「言葉の意味だ」

と言ったので、俺はまた「そうですか」と短い返事をすることしか出来なかった。

(山本さんに嫉妬してるってことは、やっぱり俺のこと好きなんだよな?)

■妬いてしまうということは■

 (駄目だ駄目だ。俺の心臓。鼓動を速くするんじゃない!)

******
久しぶりの更新でした!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

無口なきみの声を聞かせて ~地味で冴えない転校生の正体が大人気メンズアイドルであることを俺だけが知っている~

槿 資紀
BL
 人と少し着眼点がズレていることが密かなコンプレックスである、真面目な高校生、白沢カイリは、クラスの誰も、不自然なくらい気にしない地味な転校生、久瀬瑞葵の正体が、大人気アイドルグループ「ラヴィ」のメインボーカル、ミズキであることに気付く。特徴的で魅力的な声を持つミズキは、頑ななほどに無口を貫いていて、カイリは度々、そんな彼が困っているところをそれとなく助ける毎日を送っていた。  ひょんなことから、そんなミズキに勉強を教えることになったカイリは、それをきっかけに、ミズキとの仲を深めていく。休日も遊びに行くような仲になるも、どうしても、地味な転校生・久瀬の正体に、自分だけは気付いていることが打ち明けられなくて――――。

処理中です...