【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華

文字の大きさ
32 / 41

■子供っぽかったのは俺の方だったようで④

しおりを挟む
■子供っぽかったのは俺の方だったようで④

 一度「好きだと認めてしまう」と言ってしまえば、誰に言うわけでもない小さな愚痴だとかが、同じくポロポロと出てしまった。それから最後に、一つ。

「…………加藤主任、顔が良すぎるんですよ……もう俺、全部許しちゃいそうで」

本当、全部これ。先輩の顔を見たら、顔が良いで全部許してしまう。チャラくなって再会した先輩に、チョロくなった俺。初恋の時から、ずっと俺の弱点。認めるのが怖い。認めたくない、悔しい。冷静に理由を並べると、やっぱり俺が子供っぽい。でもあるじゃん? 引くに引けない戦いってやつ。

「……」
「……」

「?」

急に二人が黙り込む。惚気に聞こえたか? と顔を上げれば、嬉しそうに口元を押さえている山本さんと、目を瞑っている田中さん。それから二人の間に黒いスーツの足元。つまり、もう一人いるってこと。

「…………あ゛あ゛っ!!!!」

二度目の悲鳴は、「あ」が一つ多くなっていた。

ダンッ! と二度目の打ち付け。今度は顔を上げたくない。

「なんで……!」

何でいるんですか!! と叫べば、この中で一番素面な先輩の声が聞こえた。

「水野」

ええ、俺が水野ですけど!?

「田中さん、山本さん、何で!?」

酷い! と突っ伏したまま言葉を続ける。「いや~」だとか「そりゃぁ……」と言葉を濁しながら返事をしたのは、また先輩だった。

「水野が酔っていて帰りが心配と連絡があってな。ああ、二人とも乾杯。俺も少し食べて良いかな?」

カキンと、またグラスを合わせる音がした。俺を置いて本当に食事を取っているんだろう。別に良いが、何でそんなに先輩は普通なんだ。

「っていうか、何で主任がここにいるんですかぁあ!!」

畜生! と顔を上げれば、ん? とエビマヨを食べている先輩。それから、皆同じ社用の携帯を取り出して、無言の田中さんと山本さん。そうだよね! 社用は皆番号が分かるもんね!!

「うぅ゛―……」

「ごちそうさまでした」

先輩は行儀が良いまま。満腹になったらしく、食後の挨拶をしていた。


「田中さん、コレ。俺と水野と山本さんの分です」

「山本の分は俺が奢るから、水野の分だけで頼む」

「分かりました。では、半分で」

「わ~い、ご馳走さまです! やったね、水野君」

「ご馳走様です」

ふぅ~満腹だとか、上手かっただとか。俺を置いて会話は続く。
構えとは言わないが、置いて行かないでくらいは言いたい。そろそろお開きの空気を感じ取り、とりあえず俺も帰り支度を整えようと上着を引っ張れば、「じゃあ、イケメン。水野を頼むな」と聞こえてすぐに後ろを振り返った。

「え?」

(まさか、本当にこの状態で俺と先輩を二人きりにすると?)

今度は待って下さいと言えなかった。

******
先ほどより少し加筆しました><
ラッパ反応有難うございます!このシリーズは近々終わらせる予定です。これを書き終わったら、終わらせても良いかな? な感じです。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

【完結】後悔は再会の果てへ

関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。 その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。 数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。 小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。 そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。 末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前

処理中です...