聖夜交錯恋愛模様

神谷 愛

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第2話 聖夜に交わる二人の思い

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「んんっ」
部屋になる水音はきっと私たちの興奮を高める舞台装置で、私たちはその舞台で踊る演者で、誰かが書いたストーリーの上で踊っているのだろう。だってそうじゃないと考えられないぐらいに全部が都合よく進んでいる。
互いの思いを存分に吐き出した後に必要なのは、甘いキスと静かな夜だ。ってどこかの哲学者が言ってた。ってこの前聞いた。
まだ明かりが消えない街と綺麗なイルミネーションを傍目どころか視界に入れることもなく、互いの唇を貪る。三年越しの、彼女はどれぐらいか知らないけど、キスはたった数分だけじゃ足りない。私の三年溜まった劣情と欲望が今にも口から飛び出してきて私の代わりに彼女を犯してしまいそうだ。
「正子・・・」
彼女の制服の中に滑り込ませた手が彼女の硬くなっている突起に触れる。か細い声が私の今にも爆発しそうな欲にガソリンをかける。でも、ここで暴発することほど台無しにする行動もない。
「聖子、一緒にシャワー浴びよ」
「一緒に?」
「一緒に」
「・・・。いいよ」
「早く、脱いで」
「はいはい。なんかキャラ変わった?」
「変わってないよ。早く聖子といちゃつきたいなって思ってるだけ」
「はいはい」
私達は互いの服を脱がしながらまたキスをする。彼女の私よりも少し小さいブレザーのボタンを外していく。たった二つしかないボタンで留められた薄い布っ切れがないだけでずっと煽情的に見える。
白いワイシャツをゆっくりと彼女の呼吸が揺らす。薄い下着を浮かすほどに膨らんでいる突起がワイシャツの上からでも見える。きっと指でつまめてしまうほどに自己主張をする突起に目をやりながら私は彼女のワイシャツに手をかけた。
ワイシャツのボタンをゆっくりと外していく。一つ外すたびに刻まれる鼓動が早くなる。全部外すころにはもしかして私の心臓は爆発四散しているかもしれない。そんなことを思ってしまうぐらいには鼓動がどんどん早くなっていく。
バクバクとうるさい心臓とともに私は彼女を生まれたばかりの姿にして、彼女もまた私を生まれたばかりの姿にした。
「ね、早く」
どちらが口にしたかもわからない台詞が私たちをシャワールームの中に蹴りこんだ。

「あ、ああ、はぁ」
熱めのシャワーの下で私たちは今日何度目かのキスを交わした。でもキスだけで足りるほど私たちは冷静じゃなかったし、シャワーの熱さが脳みそを沸騰させたかのように彼女の体を貪ることしか考えさせなかった。
いつしか彼女の口中に這わせた舌は彼女の体の上を滑っていく。彼女の熱とお湯の熱が混ざり合って私の脳内をふやかす。
「ん」
彼女のお世辞にも大きいとは言えない乳房を私の舌がマーキングするようになぞっていく。彼女の甘い匂いと甘い味が私を包み込んで、そのままローストになりそうなほどの甘ったるい熱をどんどんと送り込んでいる。
「聖子、もっかい」
私のわがままを笑顔で受け止めてくれた彼女とのキスは今日いったい何回目なのか、もう数えることも面倒くさい。数なんて興味ないほど、これから先にきっとキスをすることは確定しているのに、今日何回のキスを彼女と重ねられるのかを気にしている自分もいる。
ぬちゃりとした感触に手を見ればいつの間にか彼女の下半身にまで手が下りていて、自分の手に粘性の高い液体が付いている。間違ってもお湯とは言い訳の利かないその液体の分泌主は恥ずかしそうに顔を逸らしている。
「聖子」
「なによ」
「別に顔そらさなくてもいいじゃん」
「だって、恥ずかしいし」
「恥ずかしくないって、ほら」
私は彼女の手を自分の秘裂にあてがう。私も彼女と同じぐらい、いや、ずっと上回るくらいにはしっかりと濡れていて、彼女の指に白い膜を作る。
「正子もすごいね」
「さっきからずっとだよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
軽口の間にも互いの手は互いの体をまさぐる様に這い回る。背中、肩、肩甲骨を回り、首筋から鎖骨を通り脇を尻目に腹部を下る。そのまま太腿までくれば愛液で出来ている道を上って終着点へ。
「んんっ」
どちらが漏らしたかもわからない声がシャワールームに響く。
「もう出ない?熱くなってきちゃった」
「確かに」

火照った体をいつの間にかエアコンが切れた部屋をいい感じに冷ましていく。でも大きめの窓は部屋の熱をほとんど持っていって、少し寒い。
「さむ」
聖子がぼやくようにしてエアコンの電源を入れる。その姿は昨日まで見ていた親友の姿がそのままで少し戸惑う。いや、ただの親友は一緒にシャワールームでいちゃついた後にバスローブを着てキスをしないけど。
「・・・どうしたの、正子」
「いや、聖子だなぁって」
「何言ってるの」
「ううん、なんでもない」
部屋の寒さは脳内の熱まで持って行ってしまったようで私の理性が脳内に刺さる。主に、明日からのこの親友との関係性について。
「正子?」
さっきとは逆に抱き着いてきた聖子の顔は楽しそうでもなく、恋を叶えた顔でもなく、今から色のプールに飛び込もうとする女の顔だった。
「せっかくの聖夜なのに寝るには早くない?」
「そうかもね」
私はこれからの問題は先送りにして彼女と一緒にプールに飛び込むことにした。明日できることは今日するな。誰かの言葉だけど、今日はそれに従おう。
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