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田舎の,あるいは山の主
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さっき高校生みたいと言ったが、あれは正確じゃない。後から考えればたぶん高校生が一番近い見た目だったってだけだ。え?しょうがないだろう。直後にインタビューを受けたわけじゃない。いったい俺が何歳だと思ってるんだ。記憶何てそんなものだろ?うん、わかってくれたのなら良かったよ。
それでそいつは泣きながら歩いている俺の前に急に出てきた。いや、後ろからね。
「泣いてんじゃん、坊や」
って感じでな。気障だろ?いや、あれは真似できないね。しかもあんな田舎の中でだ。生粋の気障野郎だったね。ん?怪しく思わなかったのかって?そりゃあ・・・思わなかったね。まあ、泣いてる中学生にそんな求めても酷だろうよ。
んでそいつはずっとそこの田舎にいるらしいってことがわかったのさ。つまらないだろう?なんて言われて素直にうん、なんて言っちゃったけどな。それでその田舎の中を案内してもらうことになったんだ。
最初はどこだったかな。そうそう、あいつの家だ。どこの家もほとんど人の気配がなかったんだけど、そいつの家からはなんとなく人の気配を感じたかな。でも結局最後までそいつの家族には会わなかったな。なんでも仕事が忙しくて、夏はほとんど一人らしくてな。一人で遊ぶことにかけては達人だ、なんて嘯いてたがったよ。・・・そういえばゲームとかの類はなかったような気がするな。双六とかボードゲームとか、そういうものが多かったような気がする。誰かと遊ぶものばっかりだな、確かに不思議だ。ふん、ま、今考えたってしょうがないさ。俺は記憶を辿って話すことしかできないしな。
二人でさっきの双六とかボードゲーム、あとはトランプとかかな。流石に二人で遊ぶには物足りないものばっかりだったからすぐに二人そろって白けちゃって。流石にその時には励まそうとしてくれてるんだなってのはわかったからさ、妙に嬉しかった気がするな。不思議だよな、親にどれだけ励まされてもどうにもならなかったのに、見知らぬ奴に励まされて嬉しくなるなんてな。あんがい、誰かを励ますのは無関係な奴のほうが向いているのかもしれないな。
白けた空気の中でバツが悪そうな顔で白状したよ。ここにあるものは数えられるぐらいしか遊んだことがないってな。それはなんとなく察してたから別に不思議でもなかったけど、家族とやったりしないのかって言っても首を振るばっかりだったよ。
だから聞いてやったんだ。いつも遊んでいるところで一緒に遊ぼうってな。意外と気が利くだろう?ガキの頃のほうが空気を読めたのさ、ふふん。いや、なんか悲しくなってきたからやめよう。
すごい嬉しそうな顔で家を飛び出たよ。おもちゃの箱にテープがついてたりしてた時点でなんとなく察してたはいたんだけどな。どう考えても一緒に遊ぶ仲間が大勢いるような場所じゃないし、引っ越した時に色々買ってから行ったのかもしれないな。
結局そいつがいつも遊んでるのは山の中とか田んぼとかだったな。田んぼって言ってももう何も生えてない干からびた田んぼだったけどな。実は使っていたのかもしれない、って?それはそうだな、言うのが十数年ほど遅いけどな。田んぼの中で追いかけっこなんて小学生みたいなことをしたよ。干からびてるからあちこちで蹴躓いたりもしたけど、久しぶりに心の底から笑ったんじゃないかな。
それにしても今考えてもすごいな。田舎って言われて思う光景のまんまだぜ。畦道、田んぼ、入道雲、街灯の一本もない道、写真に撮ったら賞でも取れたんじゃないかな。え?ダメなの?そうか、そりゃ、みんな思いついてる上に使い古されたか。残念、あと十年ぐらい早く気づいていたらな。
田んぼを走り回って、それから、そうそう、山にも行ったな。そう、山。名前何て知らなかったし、今も知らないけど。何て名前だったんだろうな。昔は、っていうか今もだけど俺は絵に描いたような都会っ子だったから。最初の一日は息切れしながら必死に着いていったよ。もう全身が汗と泥と切り傷だらけでな、祖父たちにえらく心配させたよ。そいつのことを話したら不思議そうな顔をしてたけどな。そんなやつ見覚えがないって。
そんな怪訝な顔をするなよ。田舎がどこでもお隣さんのことをその日の夕飯まで知悉してるわけじゃないんだぜ。あんだけ家同士が離れてれば知らないやつが一人二人増えてたって気づきやしないさ。たぶんな。俺に言われても知らんよ、別に田舎暮らしをしてるわけじゃないし、結局あの時以来田舎なんてとんと行ってもいない。
さて、これからド派手な山と田んぼの入り混じった冒険譚を聞かせてやりたいところなんだけどな。なんでそんな不思議そうな顔をする。外と時計をよく見てみろ。いくら大学生だって行っても暗くなる前に帰ったほうがいいんじゃないか?それに、俺ももう腹が減った。続きは明日にしょう。そんな不安そうな顔をしなくてもちゃんとここにいるさ。引っ越す予定も捕まる予定も今のとことないからな。
そうそう、聞き分けが良いのはいいことだ。え?名前?知ってるだろう?というか知ってるからここに来たんだじゃないのか。へえ、インタビューだと必要なのか。
俺の名前は村田龍一、でこっちの弟が、っと写真が倒れてる。この弟が龍二だ。じゃあ、また明日。
それでそいつは泣きながら歩いている俺の前に急に出てきた。いや、後ろからね。
「泣いてんじゃん、坊や」
って感じでな。気障だろ?いや、あれは真似できないね。しかもあんな田舎の中でだ。生粋の気障野郎だったね。ん?怪しく思わなかったのかって?そりゃあ・・・思わなかったね。まあ、泣いてる中学生にそんな求めても酷だろうよ。
んでそいつはずっとそこの田舎にいるらしいってことがわかったのさ。つまらないだろう?なんて言われて素直にうん、なんて言っちゃったけどな。それでその田舎の中を案内してもらうことになったんだ。
最初はどこだったかな。そうそう、あいつの家だ。どこの家もほとんど人の気配がなかったんだけど、そいつの家からはなんとなく人の気配を感じたかな。でも結局最後までそいつの家族には会わなかったな。なんでも仕事が忙しくて、夏はほとんど一人らしくてな。一人で遊ぶことにかけては達人だ、なんて嘯いてたがったよ。・・・そういえばゲームとかの類はなかったような気がするな。双六とかボードゲームとか、そういうものが多かったような気がする。誰かと遊ぶものばっかりだな、確かに不思議だ。ふん、ま、今考えたってしょうがないさ。俺は記憶を辿って話すことしかできないしな。
二人でさっきの双六とかボードゲーム、あとはトランプとかかな。流石に二人で遊ぶには物足りないものばっかりだったからすぐに二人そろって白けちゃって。流石にその時には励まそうとしてくれてるんだなってのはわかったからさ、妙に嬉しかった気がするな。不思議だよな、親にどれだけ励まされてもどうにもならなかったのに、見知らぬ奴に励まされて嬉しくなるなんてな。あんがい、誰かを励ますのは無関係な奴のほうが向いているのかもしれないな。
白けた空気の中でバツが悪そうな顔で白状したよ。ここにあるものは数えられるぐらいしか遊んだことがないってな。それはなんとなく察してたから別に不思議でもなかったけど、家族とやったりしないのかって言っても首を振るばっかりだったよ。
だから聞いてやったんだ。いつも遊んでいるところで一緒に遊ぼうってな。意外と気が利くだろう?ガキの頃のほうが空気を読めたのさ、ふふん。いや、なんか悲しくなってきたからやめよう。
すごい嬉しそうな顔で家を飛び出たよ。おもちゃの箱にテープがついてたりしてた時点でなんとなく察してたはいたんだけどな。どう考えても一緒に遊ぶ仲間が大勢いるような場所じゃないし、引っ越した時に色々買ってから行ったのかもしれないな。
結局そいつがいつも遊んでるのは山の中とか田んぼとかだったな。田んぼって言ってももう何も生えてない干からびた田んぼだったけどな。実は使っていたのかもしれない、って?それはそうだな、言うのが十数年ほど遅いけどな。田んぼの中で追いかけっこなんて小学生みたいなことをしたよ。干からびてるからあちこちで蹴躓いたりもしたけど、久しぶりに心の底から笑ったんじゃないかな。
それにしても今考えてもすごいな。田舎って言われて思う光景のまんまだぜ。畦道、田んぼ、入道雲、街灯の一本もない道、写真に撮ったら賞でも取れたんじゃないかな。え?ダメなの?そうか、そりゃ、みんな思いついてる上に使い古されたか。残念、あと十年ぐらい早く気づいていたらな。
田んぼを走り回って、それから、そうそう、山にも行ったな。そう、山。名前何て知らなかったし、今も知らないけど。何て名前だったんだろうな。昔は、っていうか今もだけど俺は絵に描いたような都会っ子だったから。最初の一日は息切れしながら必死に着いていったよ。もう全身が汗と泥と切り傷だらけでな、祖父たちにえらく心配させたよ。そいつのことを話したら不思議そうな顔をしてたけどな。そんなやつ見覚えがないって。
そんな怪訝な顔をするなよ。田舎がどこでもお隣さんのことをその日の夕飯まで知悉してるわけじゃないんだぜ。あんだけ家同士が離れてれば知らないやつが一人二人増えてたって気づきやしないさ。たぶんな。俺に言われても知らんよ、別に田舎暮らしをしてるわけじゃないし、結局あの時以来田舎なんてとんと行ってもいない。
さて、これからド派手な山と田んぼの入り混じった冒険譚を聞かせてやりたいところなんだけどな。なんでそんな不思議そうな顔をする。外と時計をよく見てみろ。いくら大学生だって行っても暗くなる前に帰ったほうがいいんじゃないか?それに、俺ももう腹が減った。続きは明日にしょう。そんな不安そうな顔をしなくてもちゃんとここにいるさ。引っ越す予定も捕まる予定も今のとことないからな。
そうそう、聞き分けが良いのはいいことだ。え?名前?知ってるだろう?というか知ってるからここに来たんだじゃないのか。へえ、インタビューだと必要なのか。
俺の名前は村田龍一、でこっちの弟が、っと写真が倒れてる。この弟が龍二だ。じゃあ、また明日。
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