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81.判明!!-2
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「いやはや、さすがです。お手柄でしたぞ、ビア様!!神獣ローアルデに相見え、洗礼の儀なるものを受け、救国の乙女と認めていただくとは!!素晴らしい…大変素晴らしい!!召喚士モール、感銘を受けました!!わたくし自身が貴女様の召喚に携わったと思うとなんとも誇らしい!!」
「あ、はは……そうですかね……」
いつぞやの客間。ローテーブル越しに集まった面々――といってもビアとフェリクス、そしてモールのたった三名ではあるが、彼らはテーブルを囲うようにして座っていた。三人ともどこかそわそわして落ち着きがない。
目の前で満面の笑みを浮かべるモール、緊張と期待で頬が紅潮するフェリクス、そして彼らとは対照的にどこか浮かない顔色のビア。
救国の書が見つかってすぐ、ビアはその内容に目を通していた。しかしあの場にいた他の者たちにはその内容を知らせていない。発表する前にフェリクスに止められたからだ。
「国の一大事でございます。どうか後日、まずは召喚の儀の責任者のモールを含めて話しましょう」
そう言っておきながらフェリクス自身も気になってやまない顔をしていたが、さすがはできた王子である。最後まで公私混同せず今日この日まで待っていた。
そしてついに今、最初のお披露目の時が来たのだ。
「……ではあらためて、書の内容をお読みいただけますかな、ビア様?」
「……はい」
返事をすると、ビアは机の上に手のひらをかざす。力を込めて念じれば、指先から金色の光が舞いくだんの本が現れた。もっとも、これはビアにしか見えていないのだが。
神樹の泉で見つかった救国の書は、ビアが拾い上げようと触れると、突如光を放ちながら浮かび上がった。それはちょうどビアの目の前まで浮かぶと、パラパラとめくれ、一番最初の頁を見開くかたちで停止した。
そう、それはちょうどビアが転移する前に読んだ内容――つまりは職種が書いてあるページだった。
ビアがあらためて本を手に取る。すると救国の書は急に満足したかのようにパタリと閉じ、突然ビアの胸元目掛けて飛んできたのだ。ビアが反射的に身構える。しかし彼女の予想に反して、その身体に痛みや衝撃は走らなかった。その代わり、春の陽気のような温かな感覚が胸に満ちる。
次に目を開けた時、救国の書は姿を消していた。
「本が、胸の中に……消えちゃいました……」
呆然と呟いたビアに、助け舟を入れたのはフェリクスだった。
「大丈夫ですよ、ビア様。あの本は常に救国の乙女と共にあると言い伝えられております。そして、持ち主が念じれば、姿を現すことも消すことも可能なはずです」
――フェリクスの言葉の通り念じれば現れる本を、ビアはあらためて手に取り頁を開く。あの日、神樹の泉で見つかってからもう何度も読み返している頁だ。内容はほぼ頭に入っているのだが、このお披露目に際し、あらためて頭から読み上げるべきだろう。
「……それでは、読みますね」
モールの目がぎらりと光る。フェリクスがごくりと生唾を飲む。
「――――
『名前:(名) ビア
(姓) オクトーバー
性別:女性
年齢:20歳
髪の色:はしばみ色
瞳の色:若草色
国 :ローアルデ中立国
職種:錬金聖女
特性:錬金聖女という少し特殊な聖女。彼女の力は物体の 錬成を解してしか発揮されない。また錬成は、その物体の一般的な作成過程を経る必要がある。少しばかり制限の多い職種といえるが、しかしこの技術を磨き抜けば大聖女をも凌駕する効果を発揮することも不可能ではない。
(~ここからは貴女の物語~)
』」
ビアが一気に読み上げる。最後の一文を読み終えると、彼女は大きくため息をついた。
「………つまり、まあ、なんというか……ちゅ、中途半端な聖女でした!!」
期待させてすみません。そう付け足すとビアはガバッと思いきり頭を下げた。これが正座だったらもはや土下座の域だ。
頭を下げながら、ビアは自分自身に落胆していた。なに、実を言えば相当期待していたのだ、自分に。なんせテオドアを回復に導いたレモネードは、この世界の理に疎いビアですら驚異的な代物だと感じた。それに夢でエルゼリリスにも会い、神獣ローアルデには洗礼を受けている。これはもう聖女確定なのではないかと、無意識に信じ込んでいたのだ。
なのに蓋を開けてみれば、なんかよくわからん二文字が頭についた謎聖女である。“錬金”の二文字に親しみのないビアにはその後の説明文も今ひとつピンとこなかった。
そんなものだからとにかく自分にがっかりしていたし、他の皆もきっと同じ気持ちだろうと決めつけていたのだった。
向かいの二人からはなんの返事も返ってこない。それが怖くてビアはおそるそおる顔を上げる。おっかなびっくり片目で二人の様子を確認すれば、彼らはぽかんとしたまま固まっていた。しばし沈黙が流れる。
「やっ…やややややっ、やりましたぞ!!ビア様!!」
しばらくしてやっと口を開いたのはモールだった。彼はテーブルに乗り出すように立ち上がると、前のめりになってビアの両手を強く握る。その顔は紅潮し、ふんふん荒く鼻息を立てる様から強く興奮しているのがよくわかった。加齢で下がった瞼の下にのぞく瞳は、つぶらながらも少年のようにキラキラと輝いている。
「聖女っ!!っん~~っせいっっじょっっ!!!!聖女の名のつく職種ではありませぬか!?素晴らしい…大変素晴らしい…!!しかも、技術を磨き抜けば大聖女をも凌駕すると……!?もうまこっとに申し分のない!!大変ワンダフルでエクセレントでファンタスチックでございますビア様あああああああ!!!!」
早口で捲し立てるモールは見たこともないほど興奮しており、その勢いにビアは気圧される。助けを求めようとフェリクスを見れば、彼もまたモール同様、頬を一層紅潮させ目をきらきら輝かせていた。心なしか周りに花が待っているような気がする。
「モールの言う通り、大変素晴らしいですよ、ビア様。なにをそんなに謙遜されているのですか?ビア様がどんな職種だろうと僕の気持ちは変わりませんが……それでもやっぱり聖女となるとなんだか誇らしいですね」
はにかむ王子は全世界の乙女が卒倒しそうなほど魅力的だ。ビアもつい照れて顔が紅くなる。
ただ、ビアとしては自分の能力に少しばかり気になっていることがあった。
「ち、ちなみに、普通の聖女はどのように能力を使うのでしょうか?」
「言い伝えでは呪文を詠唱して魔法を使うのがよくある例かと。魔導士や僧侶に近いですな」
――そうか、つまり錬金聖女の方が能力を使うのに余計な手間がかかるのだな。
「……えーっと、”錬金”っていう職種の人は……?」
「おそらく錬金術師のことでしょうな。これはこの世界にもおります。一般的には元となる物質材料を揃えて、釜などの魔法道具でそれらを調合し別の物質を生み出す能力になりますな」
――なんか難しいな。でもやっぱり錬金聖女方が余計な手間がかかる気がする。つまり……
「えっと……なんというか…私の職種って、能力を発揮するのに結構な手間がかかる職種……です、かね……?」
おずおずと尋ねてみれば、その質問に関してだけは二人とも答えず、ただにこにこと笑顔を浮かべているだけだった。
(や、やっぱり~~~)
ビアががくりと項垂れる。そう、ビアが一人で職種の内容を読んだ時、内容を理解できないなりに、それでもなんとなくあまり効率の良くなさそうな能力なのではないかと、うすうす感じていたのだ。
「……なんというか……聖女はともかく、これならまだ錬金術師とやらの方が良かったのではないしょうか……?」
心に浮かんだ疑念が声になって出てきた。
「なにをおっしゃいますか!!数多の人間が憧れてやまない聖女の名を冠しておきながら、そのような言葉はたとえ救国の乙女本人であろうと罰当たりですぞ!!」
「そうですよビア様!!聖女ともあろうあなたがそんなことを言ってはいけません!!」
「そ、そうでしたか。すみません……」
ちょっとした疑問のつもりだったのだが、二人からきつく怒られてしまった。それにしても“聖女”という単語の絶大なる信頼たるや。
「それに私は錬金術師よりビア様の能力の方がより幅広く応用できるのではないかと推測してますぞ。ええ、これから調査のしがいがありますよ、ビア様!!……さて、まずは講師かのう。錬金術師だと誰が……能力的に薬師もいた方が良いか?将来的には鍛治なんてのも……早ければ明後日にでも……」
モールはやる気に満ち溢れた様子で、明後日の方向に向かってなにやら呟いている。虫食いで聞き取れた言葉だけでもこれからしばらく忙しくなりそうだと、ビアは胃がきりりと痛くなった。
ああ、でもこれだけは伝えておかなければ……
「あの、すみません。ちょっとお願いがあって…………」
考え事に耽って心ここに在らずなモールに慌てて声をかける。その口元はほんの少しだけ口角が上がっていた。
「いやはや、さすがです。お手柄でしたぞ、ビア様!!神獣ローアルデに相見え、洗礼の儀なるものを受け、救国の乙女と認めていただくとは!!素晴らしい…大変素晴らしい!!召喚士モール、感銘を受けました!!わたくし自身が貴女様の召喚に携わったと思うとなんとも誇らしい!!」
「あ、はは……そうですかね……」
いつぞやの客間。ローテーブル越しに集まった面々――といってもビアとフェリクス、そしてモールのたった三名ではあるが、彼らはテーブルを囲うようにして座っていた。三人ともどこかそわそわして落ち着きがない。
目の前で満面の笑みを浮かべるモール、緊張と期待で頬が紅潮するフェリクス、そして彼らとは対照的にどこか浮かない顔色のビア。
救国の書が見つかってすぐ、ビアはその内容に目を通していた。しかしあの場にいた他の者たちにはその内容を知らせていない。発表する前にフェリクスに止められたからだ。
「国の一大事でございます。どうか後日、まずは召喚の儀の責任者のモールを含めて話しましょう」
そう言っておきながらフェリクス自身も気になってやまない顔をしていたが、さすがはできた王子である。最後まで公私混同せず今日この日まで待っていた。
そしてついに今、最初のお披露目の時が来たのだ。
「……ではあらためて、書の内容をお読みいただけますかな、ビア様?」
「……はい」
返事をすると、ビアは机の上に手のひらをかざす。力を込めて念じれば、指先から金色の光が舞いくだんの本が現れた。もっとも、これはビアにしか見えていないのだが。
神樹の泉で見つかった救国の書は、ビアが拾い上げようと触れると、突如光を放ちながら浮かび上がった。それはちょうどビアの目の前まで浮かぶと、パラパラとめくれ、一番最初の頁を見開くかたちで停止した。
そう、それはちょうどビアが転移する前に読んだ内容――つまりは職種が書いてあるページだった。
ビアがあらためて本を手に取る。すると救国の書は急に満足したかのようにパタリと閉じ、突然ビアの胸元目掛けて飛んできたのだ。ビアが反射的に身構える。しかし彼女の予想に反して、その身体に痛みや衝撃は走らなかった。その代わり、春の陽気のような温かな感覚が胸に満ちる。
次に目を開けた時、救国の書は姿を消していた。
「本が、胸の中に……消えちゃいました……」
呆然と呟いたビアに、助け舟を入れたのはフェリクスだった。
「大丈夫ですよ、ビア様。あの本は常に救国の乙女と共にあると言い伝えられております。そして、持ち主が念じれば、姿を現すことも消すことも可能なはずです」
――フェリクスの言葉の通り念じれば現れる本を、ビアはあらためて手に取り頁を開く。あの日、神樹の泉で見つかってからもう何度も読み返している頁だ。内容はほぼ頭に入っているのだが、このお披露目に際し、あらためて頭から読み上げるべきだろう。
「……それでは、読みますね」
モールの目がぎらりと光る。フェリクスがごくりと生唾を飲む。
「――――
『名前:(名) ビア
(姓) オクトーバー
性別:女性
年齢:20歳
髪の色:はしばみ色
瞳の色:若草色
国 :ローアルデ中立国
職種:錬金聖女
特性:錬金聖女という少し特殊な聖女。彼女の力は物体の 錬成を解してしか発揮されない。また錬成は、その物体の一般的な作成過程を経る必要がある。少しばかり制限の多い職種といえるが、しかしこの技術を磨き抜けば大聖女をも凌駕する効果を発揮することも不可能ではない。
(~ここからは貴女の物語~)
』」
ビアが一気に読み上げる。最後の一文を読み終えると、彼女は大きくため息をついた。
「………つまり、まあ、なんというか……ちゅ、中途半端な聖女でした!!」
期待させてすみません。そう付け足すとビアはガバッと思いきり頭を下げた。これが正座だったらもはや土下座の域だ。
頭を下げながら、ビアは自分自身に落胆していた。なに、実を言えば相当期待していたのだ、自分に。なんせテオドアを回復に導いたレモネードは、この世界の理に疎いビアですら驚異的な代物だと感じた。それに夢でエルゼリリスにも会い、神獣ローアルデには洗礼を受けている。これはもう聖女確定なのではないかと、無意識に信じ込んでいたのだ。
なのに蓋を開けてみれば、なんかよくわからん二文字が頭についた謎聖女である。“錬金”の二文字に親しみのないビアにはその後の説明文も今ひとつピンとこなかった。
そんなものだからとにかく自分にがっかりしていたし、他の皆もきっと同じ気持ちだろうと決めつけていたのだった。
向かいの二人からはなんの返事も返ってこない。それが怖くてビアはおそるそおる顔を上げる。おっかなびっくり片目で二人の様子を確認すれば、彼らはぽかんとしたまま固まっていた。しばし沈黙が流れる。
「やっ…やややややっ、やりましたぞ!!ビア様!!」
しばらくしてやっと口を開いたのはモールだった。彼はテーブルに乗り出すように立ち上がると、前のめりになってビアの両手を強く握る。その顔は紅潮し、ふんふん荒く鼻息を立てる様から強く興奮しているのがよくわかった。加齢で下がった瞼の下にのぞく瞳は、つぶらながらも少年のようにキラキラと輝いている。
「聖女っ!!っん~~っせいっっじょっっ!!!!聖女の名のつく職種ではありませぬか!?素晴らしい…大変素晴らしい…!!しかも、技術を磨き抜けば大聖女をも凌駕すると……!?もうまこっとに申し分のない!!大変ワンダフルでエクセレントでファンタスチックでございますビア様あああああああ!!!!」
早口で捲し立てるモールは見たこともないほど興奮しており、その勢いにビアは気圧される。助けを求めようとフェリクスを見れば、彼もまたモール同様、頬を一層紅潮させ目をきらきら輝かせていた。心なしか周りに花が待っているような気がする。
「モールの言う通り、大変素晴らしいですよ、ビア様。なにをそんなに謙遜されているのですか?ビア様がどんな職種だろうと僕の気持ちは変わりませんが……それでもやっぱり聖女となるとなんだか誇らしいですね」
はにかむ王子は全世界の乙女が卒倒しそうなほど魅力的だ。ビアもつい照れて顔が紅くなる。
ただ、ビアとしては自分の能力に少しばかり気になっていることがあった。
「ち、ちなみに、普通の聖女はどのように能力を使うのでしょうか?」
「言い伝えでは呪文を詠唱して魔法を使うのがよくある例かと。魔導士や僧侶に近いですな」
――そうか、つまり錬金聖女の方が能力を使うのに余計な手間がかかるのだな。
「……えーっと、”錬金”っていう職種の人は……?」
「おそらく錬金術師のことでしょうな。これはこの世界にもおります。一般的には元となる物質材料を揃えて、釜などの魔法道具でそれらを調合し別の物質を生み出す能力になりますな」
――なんか難しいな。でもやっぱり錬金聖女方が余計な手間がかかる気がする。つまり……
「えっと……なんというか…私の職種って、能力を発揮するのに結構な手間がかかる職種……です、かね……?」
おずおずと尋ねてみれば、その質問に関してだけは二人とも答えず、ただにこにこと笑顔を浮かべているだけだった。
(や、やっぱり~~~)
ビアががくりと項垂れる。そう、ビアが一人で職種の内容を読んだ時、内容を理解できないなりに、それでもなんとなくあまり効率の良くなさそうな能力なのではないかと、うすうす感じていたのだ。
「……なんというか……聖女はともかく、これならまだ錬金術師とやらの方が良かったのではないしょうか……?」
心に浮かんだ疑念が声になって出てきた。
「なにをおっしゃいますか!!数多の人間が憧れてやまない聖女の名を冠しておきながら、そのような言葉はたとえ救国の乙女本人であろうと罰当たりですぞ!!」
「そうですよビア様!!聖女ともあろうあなたがそんなことを言ってはいけません!!」
「そ、そうでしたか。すみません……」
ちょっとした疑問のつもりだったのだが、二人からきつく怒られてしまった。それにしても“聖女”という単語の絶大なる信頼たるや。
「それに私は錬金術師よりビア様の能力の方がより幅広く応用できるのではないかと推測してますぞ。ええ、これから調査のしがいがありますよ、ビア様!!……さて、まずは講師かのう。錬金術師だと誰が……能力的に薬師もいた方が良いか?将来的には鍛治なんてのも……早ければ明後日にでも……」
モールはやる気に満ち溢れた様子で、明後日の方向に向かってなにやら呟いている。虫食いで聞き取れた言葉だけでもこれからしばらく忙しくなりそうだと、ビアは胃がきりりと痛くなった。
ああ、でもこれだけは伝えておかなければ……
「あの、すみません。ちょっとお願いがあって…………」
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