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貴女がいなくなって 回帰前の出来事 ※セイロン目線
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「ねえ、アナタ。こんなところにいるより私についてきて!」
幼い頃、親には捨てられ貧民街で育った俺の前に小さな天使が現れた。吸い込まれそうな濃い紫色の瞳と、サラサラヘアの小さな令嬢が手を差し伸べる。
血だらけで、ボコボコに殴られ、腫れぼったい顔の汚い俺に真っ直ぐ笑顔を向ける彼女がとても眩しかった。
「私はリゼ。あなたは?」
リゼと名乗る彼女は俺に温かいタオルと、ミルクを渡してくれた。
「‥‥セイロンだけど」
「そう、なら明日からあなたは我が家の一員よ。だから、盗人はダメよ」
「‥偽善者じゃん。あんた、わかってんの?俺だけ、救って良い事した気分なんだろうけど、あんたがやってるのただの偽善だよ。世界でも救うつもりなわけ?」
‥‥いや、違う、こう言いたいのではなくて‥まずはきちんとお礼を言わなきゃならないのに。
「ほらー!お姉さま!こんな汚い子私は嫌!ぜーったい嫌!なんか臭いもん!もう先にお母様達のとこいくね!」
その子と一緒にいた妹は、俺を軽蔑をし去っていく。これが貴族達の普通の反応だ。
なのになんで‥‥俺を助けたんだろう?チラッと彼女の様子を伺う。
「んー、私は別に世界を救うとか、みんなを救うとか思ってないわ?私は神様じゃないもの。ただ、私の前に傷ついて泣いてる子がいた。それだけよ」
そう彼女はまた笑った。‥‥‥一目惚れとはこういうことなのだろうと子供ながらにそう感じた。
助けてくれた彼女に感謝と恩返しをするには、とにかく強くなろうと決意した。好きだからと言って特に彼女と話す事はなかった。卑しい身分の俺が彼女と話すなんて言語道断だ。
彼女は次期公爵家を継ぐ方だから。
ただ、彼女を守れるようになりたい。そう騎士になれるよう目指していた時
「‥‥ふう。今日の訓練はこれぐらいにしよ」
まだ幼いが故、まだまだ正式な騎士になるには早いと言われまずは体力作りや、読み書きなど覚えている毎日だった。
「あ、俺、掃除当番だったんだ!」
馬小屋の掃除へと慌てて走ろうとした時、金髪の少年が涙目になりながら、花で何か作ろうとしていた。
周りにはメイドもおらず、身なりは貴族の子のようだけど‥‥。
「うー、なんで出来ないんだろう?花冠って難しい」
いつもなら無視をしようと思っていたけれど‥多分彼女なら困っていた人を差し伸べるかもしれない。そう思い声をかけた。
「‥‥あの、花冠作りますか?」
「え?君は?えっと‥」
「‥通りすがりのものです」
白い花が沢山咲いていて、なんとなく白い花冠はリゼお嬢様に似合うだろうなあと、白い花を選ぶ。
俺が素早く花冠を作ると、少年は嬉しそうにお礼を言って立ち去っていく。
うん、なんかいいことしたかもしれない、そう思い馬小屋の掃除をしに行こうとした時、声が聞こえたので、なんとなく茂みのほうから覗いてみると、先程の少年と‥‥リゼお嬢様が一緒にいた。
「リゼ!見て見て!君に似合う花冠だよ!」
「わあ、アッサム様!ありがとうございます。可愛いです!」
「リゼ、ずっとずっと僕のそばにいてね?」
「はい‥!」
なるほど‥‥彼女はあの少年を好いているんだ。二人はお似合いだとわかるし、何よりも頬を赤らめて嬉しそうに笑う彼女が可愛いらしかった。俺はただ、ずっと遠くから眺めていた。
ー月日は流れ彼女の結婚式当日ー
その日、騎士になった俺はせめてあの時のお礼だけでも一目リゼお嬢様に会いに行こうとした。
騎士としての誇りと強さをもてたのは、全て貴女のおかげだと。
貴女を守れる騎士になると、あの時
ありがとうと、そう伝えたかったのに‥‥
純白のドレスが真っ赤な血の色に染まる貴女を見て、自分はなんの為に強くなったのか。
悔やんだ。もっと早く来ていればこんな事に‥‥
私が泣くと血だらけの彼女は、私の涙を拭って笑っていた。
あの時のように、優しい笑顔のまま。
「ハッ!!!」
目覚めるとベットの上でいつのまに寝ていた?昨日のケーキバイキングで疲れたか?
「セイロン?どうした?汗びっしょりだぞ?悪い夢でも見てるのか」
「‥‥キリス団長‥‥何故あなたが私の部屋にいるんです。ご自分の家があるでしょう」
「二股がバレて、帰れないから騎士見習いの宿舎に寝泊まりさ!って‥おいおい!何泣いてるんだ!?」
「‥‥え」
‥‥どんな夢を見たのかわからないけれど、とても苦しく悲しい夢だったのだろうか‥‥。
「セイ、お前また朝から走るのか?小さい頃からよくやるなあー。みんなまだ寝てるのに」
「‥‥早く出てくださいね」
宿舎から少し離れた屋敷を見つめながら、今日も朝の訓練を私はこなしていた。
幼い頃、親には捨てられ貧民街で育った俺の前に小さな天使が現れた。吸い込まれそうな濃い紫色の瞳と、サラサラヘアの小さな令嬢が手を差し伸べる。
血だらけで、ボコボコに殴られ、腫れぼったい顔の汚い俺に真っ直ぐ笑顔を向ける彼女がとても眩しかった。
「私はリゼ。あなたは?」
リゼと名乗る彼女は俺に温かいタオルと、ミルクを渡してくれた。
「‥‥セイロンだけど」
「そう、なら明日からあなたは我が家の一員よ。だから、盗人はダメよ」
「‥偽善者じゃん。あんた、わかってんの?俺だけ、救って良い事した気分なんだろうけど、あんたがやってるのただの偽善だよ。世界でも救うつもりなわけ?」
‥‥いや、違う、こう言いたいのではなくて‥まずはきちんとお礼を言わなきゃならないのに。
「ほらー!お姉さま!こんな汚い子私は嫌!ぜーったい嫌!なんか臭いもん!もう先にお母様達のとこいくね!」
その子と一緒にいた妹は、俺を軽蔑をし去っていく。これが貴族達の普通の反応だ。
なのになんで‥‥俺を助けたんだろう?チラッと彼女の様子を伺う。
「んー、私は別に世界を救うとか、みんなを救うとか思ってないわ?私は神様じゃないもの。ただ、私の前に傷ついて泣いてる子がいた。それだけよ」
そう彼女はまた笑った。‥‥‥一目惚れとはこういうことなのだろうと子供ながらにそう感じた。
助けてくれた彼女に感謝と恩返しをするには、とにかく強くなろうと決意した。好きだからと言って特に彼女と話す事はなかった。卑しい身分の俺が彼女と話すなんて言語道断だ。
彼女は次期公爵家を継ぐ方だから。
ただ、彼女を守れるようになりたい。そう騎士になれるよう目指していた時
「‥‥ふう。今日の訓練はこれぐらいにしよ」
まだ幼いが故、まだまだ正式な騎士になるには早いと言われまずは体力作りや、読み書きなど覚えている毎日だった。
「あ、俺、掃除当番だったんだ!」
馬小屋の掃除へと慌てて走ろうとした時、金髪の少年が涙目になりながら、花で何か作ろうとしていた。
周りにはメイドもおらず、身なりは貴族の子のようだけど‥‥。
「うー、なんで出来ないんだろう?花冠って難しい」
いつもなら無視をしようと思っていたけれど‥多分彼女なら困っていた人を差し伸べるかもしれない。そう思い声をかけた。
「‥‥あの、花冠作りますか?」
「え?君は?えっと‥」
「‥通りすがりのものです」
白い花が沢山咲いていて、なんとなく白い花冠はリゼお嬢様に似合うだろうなあと、白い花を選ぶ。
俺が素早く花冠を作ると、少年は嬉しそうにお礼を言って立ち去っていく。
うん、なんかいいことしたかもしれない、そう思い馬小屋の掃除をしに行こうとした時、声が聞こえたので、なんとなく茂みのほうから覗いてみると、先程の少年と‥‥リゼお嬢様が一緒にいた。
「リゼ!見て見て!君に似合う花冠だよ!」
「わあ、アッサム様!ありがとうございます。可愛いです!」
「リゼ、ずっとずっと僕のそばにいてね?」
「はい‥!」
なるほど‥‥彼女はあの少年を好いているんだ。二人はお似合いだとわかるし、何よりも頬を赤らめて嬉しそうに笑う彼女が可愛いらしかった。俺はただ、ずっと遠くから眺めていた。
ー月日は流れ彼女の結婚式当日ー
その日、騎士になった俺はせめてあの時のお礼だけでも一目リゼお嬢様に会いに行こうとした。
騎士としての誇りと強さをもてたのは、全て貴女のおかげだと。
貴女を守れる騎士になると、あの時
ありがとうと、そう伝えたかったのに‥‥
純白のドレスが真っ赤な血の色に染まる貴女を見て、自分はなんの為に強くなったのか。
悔やんだ。もっと早く来ていればこんな事に‥‥
私が泣くと血だらけの彼女は、私の涙を拭って笑っていた。
あの時のように、優しい笑顔のまま。
「ハッ!!!」
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「‥‥え」
‥‥どんな夢を見たのかわからないけれど、とても苦しく悲しい夢だったのだろうか‥‥。
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「‥‥早く出てくださいね」
宿舎から少し離れた屋敷を見つめながら、今日も朝の訓練を私はこなしていた。
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