闇落ち剣聖は孤高の道を進む

カマンベールチート

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真実

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「剣聖エルヴィン.フェルディナントよ。
勇者ケント殿、聖女ミカ殿、賢者シオリ殿
と共に魔王を討伐するのだ。」

「了解致しました。陛下。」


今思えば、私はこの時思い上がっていたの
だろう。息子が生まれ、今より働いて
金を稼ぎ、もっといい暮らしをさせて
やろうと思っていた所だった。

そんな時に王から今回の話があった。
少し前に召喚された勇者一行と一緒に
魔王を討伐して欲しいとのことだった。
報酬は『望んだ物を何でも』と願っても
いない内容だったから、二つ返事で了承
した。

泣く息子を宥め、心を鬼にして家を出たのを
覚えている。

勇者一行とやらは成人もしていない餓鬼
だったが、力は本物だった。 
聖剣バルムンクを手に持ちユニークスキルで
魔物を次々に葬る勇者ケント。
圧倒的な回復魔法と慈悲深い心で
大勢の民を救う聖女ミカ。
馬鹿げた魔力量で天災級大規模魔法を
ポンポン撃つ賢者シオリ。


彼らは魔王軍により被害を受けた
国民の為に自分達は何があっても魔王を
討伐しなければ、と言っていた。
その目は驚く程澄んでおり、優しく、
正義に満ちいていたが同時に幼さも感じた。


私と彼らは長い長い旅をした。
魔王軍四天王や邪龍との戦いも協力して
何とか打ち破って来た。

「フェルさん……やっと来ましたね…
この戦いに勝てば僕たちは……」
 
ケントが魔王城を前に私に話しかける。
因みにフェルと言うのは私の名前が長く
呼びにくいからとミカが最初に呼んだ時から
ずっとこうだ。

「ケント君……油断はダメだよ?」
ミカがケントに注意するような目を向ける。

「分かってるよ…ミカ…でもいざとなったら
ミカが助けてくれるんだろ?」

「むー!怒るよー!シャキッとしなさい!」

こいつら…この旅中人目も気にせず
イチャイチャしやがって…

「………ほら、フェルさん困ってるしょ。
そこのカップル。イチャイチャしてないで、離れなさい」


シオリに注意され顔を赤くして離れる2人。
彼女が注意しないとこいつらはずっと
同じ事しているのでありがたい。


「イチャイチャしてねーし!………って
こんな事話してる場合じゃなかった…
コホン…い、今まで僕について来て
くれてありがとう。これが、最後の戦いだ。
魔王との戦いは本当に厳しい戦いになるかもしれないけど、この世界の人たちの為…
最後に僕に協力してくれ!」

ケントが檄を飛ばす。私もだがお陰で士気が
上がるのが分かる

「……ケント、最後になるかもしれから
妻と少し話させてくれないか?」

「あ、どうぞ!フェルさん!でも、最後
だなんて言わないで下さいね?全員で
生きて帰るんですから!」

「ははは…分かってるよ…」
 

懐から通信石を取り出す。これは込められた
魔力が持つ間、同じ種類の魔力を含む通信石
と交信出来る代物だ。…かなり高かったけど

通信石に魔力を微力流すと、石が点滅を
繰り返す。少し待つと、返信が来た

『お父さまーー?きこえるー?』

「おっデュークか、元気だったか?」

『うん!お父さまは?』

「そうか…ならお父さんも頑張らないと
だなー!」

『いつになったらかえれるの?』

「うーん、もうすぐだよデューク。
ごめんな、寂しい思いさせて。所でお母さんいるか?」

『だいじょーぶ!お母さまはお部屋で
だれかとはなしてるよー』

「そうかーじゃあ少しお母さんに
変わってくれないか?ちょっとで良いんだ」

『わかったー!』

デュークの元気な声と家の中を走る音が
聞こえて、思わず笑みがこぼれる
あぁ、早く帰りたいな…

『…………よ…………ね!………』

友達とでも話しているのか楽しそうな妻の
声が聞こえる。タイミングが悪かったかな?

「あっ、デュークごめんなー。お母さん
お友達と話してるみたいだから後でなー」

『えー!あのひとお母さまのおともだち
だったのー!すごいすごい!』

デュークが嬉しそうに声を上げるもので
声が頭に響く

「そ、そんなすごい人なのかい?」



『うん!おうじさまだってお母さま
言ってた!だからチューしてたんだね!』



はははは……成る程成る程、シルフォード
殿下が来ているならデュークも驚く訳だ


ん?


チュー?

「ご、ごめんなデューク…よく聞こえかった
よ。もう一回言ってくれるかな?」

き、きっと聞き間違いだろう。
シルフォード殿下は私もお慕いしているし
人望厚いお方だ。


『えー!お父さま!つかれてるのー?
ちゃんと、やすんでねー!でもだから、お母さまとおうじさまがチューしてたのか!』


…………ん?

『あと、僕お父さまが居ないあいだに
こわいことおきたんだよ!』

「なっな、何があったんだい?」

き、きっと私も魔王城を目前として緊張
しているのだな……き、気を引き締めなければ
いけんな……


『よるになったら、お母さまのお部屋から
ぎしぎしあんあんって音がするの!
お化けなのかな?」


ぎ、ぎしぎしあんあんって……………

「……デュ、デューク、今お母さんの部屋に
王子様が来ているのかい?出来たらだけど…
この石をお母さんの部屋のドアの近くに
置いてくれるかな?……ほら、お母さんが
部屋を出たら気付けるようにね…」


私はとんでもない、大馬鹿者なのであろう。自らの妻を、未来の主君を信じず探ろうと
している…私は愚か者なのであろう。 

『うん!お父さまはやさしいね!
おうじさまとお母さまはお部屋にいると
おもうからこの石おいてくるね!』


罪悪感が私を襲う。呼吸が速くなる。
私は今正しい事をしているのだろうか。
純粋な息子を利用し妻を疑う私は正しいの
だろうか。
 

暫くすると、石を床に置いた音が聞こえ、
同時に楽しそうに話すと妻の声と


シルフォード殿下の声が聞こえた


『はははは!でも、よかった!もうすぐ
戦争が終わって君と結婚する事が
出来るよ!』

『そうですわね!殿下…でも、あの 
はどうするのですか?
ほっとく訳にもいきませんし……』

『クズ野郎……ああ、あの剣聖か、
なに、帰って来たら何かしら濡れ衣を着せて
処刑すれば良い。何故あいつが君と結婚
出来たのが不思議だよ…』

『私もです……何故あんな奴と…こんな近くに
殿下と言う素晴らしいお方がいらっしゃった
のに!』

『ミリア!やはり君は美しい!』 

『……やだ…殿下…こんな昼間から…
あぁぁ!…』



間違いなくあれは、殿下と、妻の声だ、

間違いなくあれは、私が将来を共に過ごそう
と決めた相手と、未来、私が尽くそうと
決めていた、主君だ。

「…………デューク、もういいよ、
石を持ってお部屋に帰りなさい。
今日は暖かくして寝るんだぞ?」

『えー、お母さまと話さないの?』

デュークが2人に気付かれないよう、
小さな声で私に問いかける

「ああ、とは話さないよ。
それに、今状況が変わったんだ。
帰るまで時間が掛かると思う。」

『えーー!それは嫌だよ!お父さまに
会いたいよ!』

息子が、嗚咽を漏らす声が聞こえる
私にこれまでない程の、罪悪感が襲う

「ごめんな、デューク、じゃあお父さん
もう、行かなきゃ、じゃあな」

『待って!お父さ…』

私は息子が言い終わる前に石を地に叩きつけ
て壊し、通信を終える。

何か心にぽっかり穴が開いた様な感じが
するがよく分からん。
孤児院にいた頃も、師匠と剣の修行をした時もこんな気持ちにはなったことはない。


私はアイテムポーチからもう一つの
通信石を取り出し、魔力を流す。

『…………フェルディナントよどうした。
私も騎士団の仕事がある事くらい
分かっているだろう。何かあるなら
手短かにしてくれ』

この石の通信先は王国の騎士団長であり、
私の孤児院の時からの親友でもある、
ホーリー.ヴェストだ。

「すまんなヴェスト……一つ頼み事が
あるのだが……」

『ん…元気無さそうだが…大丈夫か?
とりあえず無理するなよ。お前は昔から
抱え込むタイプだからな、それで、頼み事
って何だ?』

今は、親切に接してくれる、彼の声が
つらい

しかし、これは伝えなければならないのだ。

「ヴェストよ、もし……私の息子が
……不当に扱われ、苦しんでいたなら、
どうか助けて欲しい」

『何言ってんだぁ?それは父親であるお前の 
仕事だろう?まぁ、お前が帰って来るまでは 
ミリアさんとデューク君は任せておけ、
それにしても元気ないなぁ、ちゃんと
食ってるか?体調気を付けろよ』 

「ああ分かってる。じゃあな、ありがとう」

石を落とし、通信を終える。










向こうでは、3人が準備を終え、私を
待っている。
…………行くか、魔王を斬ればこの
モヤモヤする何かが取れるかもしれない

「フェルさん!話終わりましたか?」

「ああ、待たせ申し訳ない、では征くぞ
いざ参らん」
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