麗しの殺し屋御殿

妃月未符

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終幕 ~頭の中の銃弾~

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 将平は殴打を続けていた。

 とうに消耗しきっていることに、意識のみならず身体も気づかないというように、その威力は衰えることがなく。

 ――何故だ。

 心の中の疑問も尽きることなく沸き起こってくる。

 ――何故みんな自分に歯向かってくる。

 ――言う事をきかない。

 ――誰もかれもがみな、俺を馬鹿にし、侮辱する。

 大声をあげるようになったのは、いつからだったか、もう思い出せない。

 世の中が悪いから。
 勤めてもまともに働けないのも。
 自営業がかたむいているのも。

 みんなみんな利己的で、将平のことなど考えないから悪いのだ。
 そう決まっている。

 そうするといつでもそっと、内なる声が甘美に囁くのだ。

 世の中に声を荒げても。
 手を上げても正当な権利じゃないか。

 だからあの娘も――華も殴ってやったんだ。

 育ててやった恩も忘れてあいつまで俺を批難した。

 幼い頃はあんなに可愛かったのに。


 頭がとうにヒートアップして煙でもでているような感覚。
 将平はいつしか、目の前の男以外にも攻撃を繰り出して、暴れ続けていた。

 そして、ある一点に目を留まる。

「……華」

「華じゃないか」

 将平が異国人の小さな少女をもぎとるようにして腕にかき抱いたとき、異国の言葉で母親が悲鳴をあげた。

「こんなところで迷子になっていたんだな」

「泣くんじゃない。もう安心だ。パパといっしょに、もういやなことなんかなにもないところに行こう」


 この世の中はいつだって思うようにならなかった。
 もはや自分の行くところは決定づけられている。
 なぜか確信があった。

 幼い姿となった娘の首に手をかける。

 彼女が泣き出すのもかまわずに、徐々に力を込めていく――。

 そのとき。

 ズトン、という音がして、ぱったりと、将平は倒れた。
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