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その10. 付き合ってください
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どう返してよいのか分からない。健斗も落ち着きなく視線をさまよわせる。
「美晴さんが、どんな考えで俺を誘ったのかは理解しました。それで俺と寝て、分かったことって結局なんだったんですか」
「分かったこと……」
自分が、肉欲だけで満足するタイプなのか、もっと深い結びつきを追い求めるタイプなのか。
「井草さんを自分の都合で勝手に利用して、申し訳無い気持ちが先で、なんかそこまで考えが至らないというか……」
「不快では、なかったんですよね」
「それは、まあ」
不快どころか、気持ちは良かった。行為の最中、健斗は美晴がいかに気持ちよくなってくれるかに集中してくれた。だからこその申し訳無さにつながるのだが。
「俺に、チャンスをくれませんか?」
「チャンス、ですか?」
「きちんと好きだと伝えてから、誘いに乗ればよかったなと思って。だからお互い知り合うところから、やり直したいんです」
「それはどういう」
「俺と、付き合って下さい」
ハッキリとした声でそう言うと、健斗はもう一度美晴を見つめた。
「付き合って、俺のことを知ってもらいたい。好きになって欲しいけど、それは俺が努力するので先ずは知り合うところから。だから、美晴さんが俺を好きになってくれるまで、指一本触れないようにします」
「え、いいんですか?」
思わず反射的に聞き返すと、健斗が苦しそうに眉を寄せ、それから息を吐き出した。
「このまま、なし崩しに先に進んで単なるセフレで終わるよりかは、いいです」
その言葉に、彼の本気度が伺える。けれどそれを素直に受け止めるだけの心のゆとりは、美晴には無かった。
「そこまで、思われるような人間じゃないですよ、私……」
相手の気持を考えず、自分が試したいだけで誘いを掛けた。今、その相手から告白されたからこそ、自分の身勝手さをより一層思い知る。果たして健斗の純粋な好意に自分が応えることが出来るのか、正直言って自信が無い。
「いいんです。俺が、勝手に好きになっているだけだから」
きっぱりと言い切ると、健斗はアイスコーヒーを一気にあおって飲み干した。そしてその勢いのまま、美晴に提案をする。
「とりあえず来週、一緒に飯食いに行くのどうですか?」
「あ、生麺パスタ」
「美晴さんが、どんな考えで俺を誘ったのかは理解しました。それで俺と寝て、分かったことって結局なんだったんですか」
「分かったこと……」
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「不快では、なかったんですよね」
「それは、まあ」
不快どころか、気持ちは良かった。行為の最中、健斗は美晴がいかに気持ちよくなってくれるかに集中してくれた。だからこその申し訳無さにつながるのだが。
「俺に、チャンスをくれませんか?」
「チャンス、ですか?」
「きちんと好きだと伝えてから、誘いに乗ればよかったなと思って。だからお互い知り合うところから、やり直したいんです」
「それはどういう」
「俺と、付き合って下さい」
ハッキリとした声でそう言うと、健斗はもう一度美晴を見つめた。
「付き合って、俺のことを知ってもらいたい。好きになって欲しいけど、それは俺が努力するので先ずは知り合うところから。だから、美晴さんが俺を好きになってくれるまで、指一本触れないようにします」
「え、いいんですか?」
思わず反射的に聞き返すと、健斗が苦しそうに眉を寄せ、それから息を吐き出した。
「このまま、なし崩しに先に進んで単なるセフレで終わるよりかは、いいです」
その言葉に、彼の本気度が伺える。けれどそれを素直に受け止めるだけの心のゆとりは、美晴には無かった。
「そこまで、思われるような人間じゃないですよ、私……」
相手の気持を考えず、自分が試したいだけで誘いを掛けた。今、その相手から告白されたからこそ、自分の身勝手さをより一層思い知る。果たして健斗の純粋な好意に自分が応えることが出来るのか、正直言って自信が無い。
「いいんです。俺が、勝手に好きになっているだけだから」
きっぱりと言い切ると、健斗はアイスコーヒーを一気にあおって飲み干した。そしてその勢いのまま、美晴に提案をする。
「とりあえず来週、一緒に飯食いに行くのどうですか?」
「あ、生麺パスタ」
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