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【1話目】
たからお願い
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共同住宅『フェアリーゴッドマザーハウス』は、18世紀のイギリスで流行したクイーンアン様式を取り入れた、とてもおしゃれな見た目をしている。
なんでも、昔どこかの偉い人がこの建物を気に入って、引退後の住まいにしようと海外から移築したのだそうだ。
その時、建物と一緒についてきたのが家妖精のダイフクだ。
はじめは、姿すら定まらない家に憑く小さな妖精でしかなかったダイフクは、偉い人の飼いネコだった『ダイフク』から姿と名前を貰い、大妖精になった。
終の棲家として偉い人がこの家に引っ越してきて数年後。
偉い人の飼いネコだった『ダイフク』は、己に残された寿命が残り少ないのを感じ取った。
よくて一年。
短ければ数ヶ月。
長く、気の遠くなるほど長く生きた『ダイフク』は、正確に己の死期を悟り、素直にそれを受け入れた。
けれど、どうしてもひとつだけ。
寂しがりやで、ひとりを嫌う飼い主を残して逝くことだけが気がかりで。
ネコの『ダイフク』は、外国から家に憑いてやってきた姿すら定まらない小さな妖精に、飼い主とこの家の行く末を見守って欲しいと願った。
姿形は見えなくともいい。
飼い主が孤独を感じた時や寂しい時。
ひとりではつらそうな時。
そっと寄り添うだけでもいいから。
もういなくなる自分の代わりに飼い主のそばにいてあげて欲しい。
ただそれだけでいいから。
もし願いを叶えてくれるなら、自分に残されたすべてをあげる。
たからお願い、と。
小さな妖精はその願いに頷いて、大妖精の『ダイフク』になった。
飼いネコだった『ダイフク』はただのネコではなく、猫に九生有りのことわざ通り、九生を生きたネコマタだったのだ。
共同住宅『フェアリーゴッドマザーハウス』は、18世紀のイギリスで流行したクイーンアン様式を取り入れた、とてもおしゃれな見た目をしている。
なんでも、昔どこかの偉い人がこの建物を気に入って、引退後の住まいにしようと海外から移築したのだそうだ。
その時、建物と一緒についてきたのが家妖精のダイフクだ。
はじめは、姿すら定まらない家に憑く小さな妖精でしかなかったダイフクは、偉い人の飼いネコだった『ダイフク』から姿と名前を貰い、大妖精になった。
終の棲家として偉い人がこの家に引っ越してきて数年後。
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よくて一年。
短ければ数ヶ月。
長く、気の遠くなるほど長く生きた『ダイフク』は、正確に己の死期を悟り、素直にそれを受け入れた。
けれど、どうしてもひとつだけ。
寂しがりやで、ひとりを嫌う飼い主を残して逝くことだけが気がかりで。
ネコの『ダイフク』は、外国から家に憑いてやってきた姿すら定まらない小さな妖精に、飼い主とこの家の行く末を見守って欲しいと願った。
姿形は見えなくともいい。
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そっと寄り添うだけでもいいから。
もういなくなる自分の代わりに飼い主のそばにいてあげて欲しい。
ただそれだけでいいから。
もし願いを叶えてくれるなら、自分に残されたすべてをあげる。
たからお願い、と。
小さな妖精はその願いに頷いて、大妖精の『ダイフク』になった。
飼いネコだった『ダイフク』はただのネコではなく、猫に九生有りのことわざ通り、九生を生きたネコマタだったのだ。
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