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【短編】
夢をみる (上)
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居間の椅子に座り、バーナードはフィリップにおもむろに尋ねた。
二人で食後のお茶を飲んでいたところである。
彼は椅子に足を組んで座り、フィリップの青い目を見つめて言った。
「先日、体調を崩していた時、お前は夢をみていたのだろう。どんな夢を見ていたんだ」
その問いかけに、あやうくフィリップはむせそうになった。
ケモミミと黒い尻尾を持つ団長と、アレコレする楽しい夢だったとは、彼には恥ずかしくて言えなかった。
バーナードはそんなフィリップの様子を見て、どこか物憂げにため息をつく。
バーナードは、先日王宮副魔術師長、マグルの許で、鑑定の水晶玉に手をかざし、自分が人間の身ではなく、いまや淫魔となっていることを知った。そのことをフィリップにも伝えていた。
「……色々と調べたのだが、サキュバスは淫夢をみさせて男の精を奪うらしい。その男の望む夢を見させるという」
……………
フィリップは無言になる。
確かに、夢の中のバーナードは物凄く淫らでよかった。ケモミミも尻尾もかわいかった。
一度と言わず、毎日でも見たい夢だった。
バーナードは眉間に皺を寄せて、苦し気に言う。
「俺がサキュバスなら、お前にその淫夢をみせていることになる。お前が望む夢だと思う。俺は、無意識にお前に夢を見せているようなんだ。そうなると、意識がある時と違って、お前の精を奪ってしまうようだ」
「大丈夫です。私は、少しくらい団長に精力を奪われても、若いので回復します!!」
「…………………」
疑わし気な視線をバーナードはフィリップに向け、そしてまたため息をついていた。
「俺がちゃんとサキュバスの能力が使えるといいのだが、どうにもよくわからん。お前にそんな夢など見させなければ」
それに、フィリップはブンブンと頭を振った。
「いえ、愉しい夢なんで大丈夫です」
「フィリップ、それがいけないんだ。お前の望む夢を見せて、それで精力を奪っているのだから」
「大丈夫です」
頑なに大丈夫と連呼するフィリップ。バーナードはため息をついていた。
額に手を当て、考え悩む。
「早くお前が俺と釣り合うようになるといいのだが……」
「それなんですが、ご隠居様はどうやって私と団長を釣り合うようにするんでしょうかね」
首を傾げるフィリップに、バーナードは言った。
「恐らくだが、お前の精力を増大する魔法を掛けて、俺が奪う部分を補うようにするのではないかと思う」
「…………そんなことができるんでしょうか」
精力が増大するって、どういう状態になるのかいささかフィリップも不安になった。
だが、奪われても健康を維持できるというのなら、何らかの方法でそれを補うしかないのだろう。
「わからん。とにかく、そうなることを待つしかないだろう。そしてその間に、お前が健康を害してはかなわん。だから、フィリップ、約束して欲しい」
バーナードはその茶色の瞳で、フィリップをひたと見つめて言った。
「もし、夢の中で誘惑されることがあっても、お前はそれを必ず拒否しろ」
…………そんなこと、出来ません。
フィリップは心の中でぽつりと呟いた。
二人で食後のお茶を飲んでいたところである。
彼は椅子に足を組んで座り、フィリップの青い目を見つめて言った。
「先日、体調を崩していた時、お前は夢をみていたのだろう。どんな夢を見ていたんだ」
その問いかけに、あやうくフィリップはむせそうになった。
ケモミミと黒い尻尾を持つ団長と、アレコレする楽しい夢だったとは、彼には恥ずかしくて言えなかった。
バーナードはそんなフィリップの様子を見て、どこか物憂げにため息をつく。
バーナードは、先日王宮副魔術師長、マグルの許で、鑑定の水晶玉に手をかざし、自分が人間の身ではなく、いまや淫魔となっていることを知った。そのことをフィリップにも伝えていた。
「……色々と調べたのだが、サキュバスは淫夢をみさせて男の精を奪うらしい。その男の望む夢を見させるという」
……………
フィリップは無言になる。
確かに、夢の中のバーナードは物凄く淫らでよかった。ケモミミも尻尾もかわいかった。
一度と言わず、毎日でも見たい夢だった。
バーナードは眉間に皺を寄せて、苦し気に言う。
「俺がサキュバスなら、お前にその淫夢をみせていることになる。お前が望む夢だと思う。俺は、無意識にお前に夢を見せているようなんだ。そうなると、意識がある時と違って、お前の精を奪ってしまうようだ」
「大丈夫です。私は、少しくらい団長に精力を奪われても、若いので回復します!!」
「…………………」
疑わし気な視線をバーナードはフィリップに向け、そしてまたため息をついていた。
「俺がちゃんとサキュバスの能力が使えるといいのだが、どうにもよくわからん。お前にそんな夢など見させなければ」
それに、フィリップはブンブンと頭を振った。
「いえ、愉しい夢なんで大丈夫です」
「フィリップ、それがいけないんだ。お前の望む夢を見せて、それで精力を奪っているのだから」
「大丈夫です」
頑なに大丈夫と連呼するフィリップ。バーナードはため息をついていた。
額に手を当て、考え悩む。
「早くお前が俺と釣り合うようになるといいのだが……」
「それなんですが、ご隠居様はどうやって私と団長を釣り合うようにするんでしょうかね」
首を傾げるフィリップに、バーナードは言った。
「恐らくだが、お前の精力を増大する魔法を掛けて、俺が奪う部分を補うようにするのではないかと思う」
「…………そんなことができるんでしょうか」
精力が増大するって、どういう状態になるのかいささかフィリップも不安になった。
だが、奪われても健康を維持できるというのなら、何らかの方法でそれを補うしかないのだろう。
「わからん。とにかく、そうなることを待つしかないだろう。そしてその間に、お前が健康を害してはかなわん。だから、フィリップ、約束して欲しい」
バーナードはその茶色の瞳で、フィリップをひたと見つめて言った。
「もし、夢の中で誘惑されることがあっても、お前はそれを必ず拒否しろ」
…………そんなこと、出来ません。
フィリップは心の中でぽつりと呟いた。
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