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第十九章 黒い仔犬と最愛の番
第一話 任務の為に離れることになった仔犬と近衛騎士
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朝目覚めると、傍らで寝ていた真っ黒い仔犬ディーターが、ペロペロと自分の頬を舐めてくれる。
つぶらな緑色の瞳を輝かせ、その仔犬は尻尾をフリフリとしていた。
「おはよう、ナイツ」
名を呼ぶと、「ワン」と元気よく吠える。
愛らしいこの仔犬と暮らし始めて早、二か月が経とうとしていた。
元気よくいつも自分の足元で飛び跳ねて、そしてまとわりついてくるこの仔犬のことがジェラルドは大好きだった。
朝も昼も夜も、一日中、常に一緒にいる。
自分の勤める近衛騎士団は、仔犬に対する理解が深く、ジェラルドが仔犬と共に行動することを許してくれていた。そして騎士達も、近衛騎士団随一の美貌の騎士であるジェラルドがかわいい仔犬と戯れる様子を、目の保養になると喜んでいた。まさしくWIN-WINの関係である。
常に共にいたジェラルドと仔犬であったが、ある時、ジェラルドは仔犬にこう言わなければならなかった。
「明日から、近衛は王家の森へ調査に行く。二泊三日の予定だけど、その間、ナイツは近衛騎士団でお留守番だよ」
近衛騎士団は、王宮そばに広がる森に定期的分け入って、その地形の調査を行っている。森での魔獣討伐は王立騎士団が行っているが、地形の把握については近衛騎士団も必要であろうと、年に数回実施しているのだ。森から入ってくる侵入者への警戒が必要であるためだ。
ジェラルドの話を聞いた仔犬は、まるでその話を理解したように、緑色の目を見開いて驚いていた。
クゥンクゥンと鳴いて、ジェラルドの足にまとわりついている。
まるでそれは「離れるのは嫌だ嫌だ」と言っているようだった。
「なんだか、まるでナイツは話が分かっているみたいだな」
仔犬の様子を見て、同僚騎士がそう言う。
そう、この黒い仔犬はとても賢く、ジェラルドだけではなく騎士達の言葉をよく聞いた。大人しくて聞き分けも良く、騎士達の手を煩わせることのない仔犬であった。
ジェラルドは仔犬を抱き上げて、チュッとその鼻先に口づけた。
「僕もお前と離れるのはすごく寂しい。でも、すぐに帰って来るから大人しく待っていてね」
だが、仔犬はクゥンクゥンと鳴いて尻尾を下げ、しょんぼりとした様子だった。
その様子を見ているだけでも、ジェラルドをはじめとした騎士達の胸は締め付けられるような思いになった。
「くそ、この仔犬可愛すぎる」
「もう調査にも連れて行ったらどうですか」
「荷物に混ぜたら分からないですよ」
と、仔犬を連れて行く気満々の近衛騎士達さえ現れた。
だが、ジェラルドは言った。
「森には魔獣も出るし、ナイツを連れていくのは危ないから、ダメです」
そう言うジェラルドの言葉にも、苦悩が満ちていた。彼は仔犬を愛するが故に断腸の思いで言ったのであった。
つぶらな緑色の瞳を輝かせ、その仔犬は尻尾をフリフリとしていた。
「おはよう、ナイツ」
名を呼ぶと、「ワン」と元気よく吠える。
愛らしいこの仔犬と暮らし始めて早、二か月が経とうとしていた。
元気よくいつも自分の足元で飛び跳ねて、そしてまとわりついてくるこの仔犬のことがジェラルドは大好きだった。
朝も昼も夜も、一日中、常に一緒にいる。
自分の勤める近衛騎士団は、仔犬に対する理解が深く、ジェラルドが仔犬と共に行動することを許してくれていた。そして騎士達も、近衛騎士団随一の美貌の騎士であるジェラルドがかわいい仔犬と戯れる様子を、目の保養になると喜んでいた。まさしくWIN-WINの関係である。
常に共にいたジェラルドと仔犬であったが、ある時、ジェラルドは仔犬にこう言わなければならなかった。
「明日から、近衛は王家の森へ調査に行く。二泊三日の予定だけど、その間、ナイツは近衛騎士団でお留守番だよ」
近衛騎士団は、王宮そばに広がる森に定期的分け入って、その地形の調査を行っている。森での魔獣討伐は王立騎士団が行っているが、地形の把握については近衛騎士団も必要であろうと、年に数回実施しているのだ。森から入ってくる侵入者への警戒が必要であるためだ。
ジェラルドの話を聞いた仔犬は、まるでその話を理解したように、緑色の目を見開いて驚いていた。
クゥンクゥンと鳴いて、ジェラルドの足にまとわりついている。
まるでそれは「離れるのは嫌だ嫌だ」と言っているようだった。
「なんだか、まるでナイツは話が分かっているみたいだな」
仔犬の様子を見て、同僚騎士がそう言う。
そう、この黒い仔犬はとても賢く、ジェラルドだけではなく騎士達の言葉をよく聞いた。大人しくて聞き分けも良く、騎士達の手を煩わせることのない仔犬であった。
ジェラルドは仔犬を抱き上げて、チュッとその鼻先に口づけた。
「僕もお前と離れるのはすごく寂しい。でも、すぐに帰って来るから大人しく待っていてね」
だが、仔犬はクゥンクゥンと鳴いて尻尾を下げ、しょんぼりとした様子だった。
その様子を見ているだけでも、ジェラルドをはじめとした騎士達の胸は締め付けられるような思いになった。
「くそ、この仔犬可愛すぎる」
「もう調査にも連れて行ったらどうですか」
「荷物に混ぜたら分からないですよ」
と、仔犬を連れて行く気満々の近衛騎士達さえ現れた。
だが、ジェラルドは言った。
「森には魔獣も出るし、ナイツを連れていくのは危ないから、ダメです」
そう言うジェラルドの言葉にも、苦悩が満ちていた。彼は仔犬を愛するが故に断腸の思いで言ったのであった。
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