32 / 96
第32話 確実
しおりを挟む
相談を受けた日の深夜。
俺は現場であるホラースポットまで、亜美の車に乗って移動していた。
到着まで1時間はかかるそうなので、事前に用意してきた参考書を助手席で眺めていたら、横から亜美に声をかけられる。
「暗いのによく見えるね」
深夜なので、言うまでもなく車内は暗い。
「やっぱそれも魔法?」
「単に目が良いだけだ」
光の完全にない真っ暗闇ならともかく、異世界帰りの俺にとって、多少暗い程度は大した障害ではない。
「ふーん、魔法じゃないんだ。ねぇ、安田君ってどうやって魔法なんて物覚えたの?」
何故こいつは参考書を開いて勉強している俺の邪魔をする?
運転だけじゃ暇なのか?
「……異世界だ」
一瞬答えるかどうか迷ったが、亜美はもう魔法の事を知っているのでそっちを隠す意味はないかと判断して答えた。
そもそも、知られた所で彼女が行ける訳でもないしな。
「異世界って、漫画とかに出て来るあの異世界?」
「ああそうだ。まあ信じる信じないは好きにしろ」
「もちろん信じるわよ。安田君はそういう冗談言うタイプじゃないもんね」
魔法が使えるとは言え、いきなり異世界と言われてすんなり受け入れるのは難しいものだ。
にも拘らず、亜美は俺の言葉をすんなり受け入れる。
まあ多分馬鹿だからだろう。
「それで、そこはどんな世界ったの?楽しかった?」
「漫画やゲームみたいに楽しい感じじゃない。後半は延々生きるか死ぬかの殺し合いだったしな」
異世界で楽しい事が全く無かったと言えば嘘になるが、魔王軍との戦いが激しくなってからは地獄だった。
戦いの度に、周りで人が死にまくる様な状況の連続。
とてもじゃないが、異世界の事を詳しく語る気にはなれない。
「あー、ひょっとして……詮索しない方がいいパターン?」
「そう言う事だ」
「そっか。安田君も苦労してるんだね」
「まあな」
亜美は気を利かせてか、その後話題をたわいない物へと切り替えた。
まあそもそも本当に気を使うなら、参考書を開いてる俺に話しかけるなと言いたい所ではあるが。
「ついた。ここよ」
車は山の中にある、古い建物の前で止まる。
建物の周りは大きな柵で覆われており、意図して侵入を試みなければ中には入れない様になっていた。
「元々大きな旅館だったらしいけど、10年ぐらい前に大きな事件があって放棄された場所なの」
「いい年した男女7人が、夜中にこんな場所に肝試しで忍び込んだのか?」
頭の痛いお話である。
「あたしも止めとけとは言ったんだけどね……」
「もっと強く止めておくべきだったな」
俺は廃旅館を見つめてそう言う。
いきなり連絡が途絶えた以上、亜美の友人達に何かあったのは疑い様がない。
だがここに来るまで、それが本当にこのホラースポットで起こった物かの確信はなかった。
ここを出た後、別の場所で何かあった可能性も十分考えられたからだ。
だが廃旅館を目にした今ならハッキリ言える。
亜美の友人達。
ついでに一緒にいた男達の身に、此処で何かが起きたのだと。
何故なら――
「ひょっとして……何かわかったの?」
「ああ」
――目の前の建物のあちこちから、魔法の痕跡が感じられたからだ。
俺は現場であるホラースポットまで、亜美の車に乗って移動していた。
到着まで1時間はかかるそうなので、事前に用意してきた参考書を助手席で眺めていたら、横から亜美に声をかけられる。
「暗いのによく見えるね」
深夜なので、言うまでもなく車内は暗い。
「やっぱそれも魔法?」
「単に目が良いだけだ」
光の完全にない真っ暗闇ならともかく、異世界帰りの俺にとって、多少暗い程度は大した障害ではない。
「ふーん、魔法じゃないんだ。ねぇ、安田君ってどうやって魔法なんて物覚えたの?」
何故こいつは参考書を開いて勉強している俺の邪魔をする?
運転だけじゃ暇なのか?
「……異世界だ」
一瞬答えるかどうか迷ったが、亜美はもう魔法の事を知っているのでそっちを隠す意味はないかと判断して答えた。
そもそも、知られた所で彼女が行ける訳でもないしな。
「異世界って、漫画とかに出て来るあの異世界?」
「ああそうだ。まあ信じる信じないは好きにしろ」
「もちろん信じるわよ。安田君はそういう冗談言うタイプじゃないもんね」
魔法が使えるとは言え、いきなり異世界と言われてすんなり受け入れるのは難しいものだ。
にも拘らず、亜美は俺の言葉をすんなり受け入れる。
まあ多分馬鹿だからだろう。
「それで、そこはどんな世界ったの?楽しかった?」
「漫画やゲームみたいに楽しい感じじゃない。後半は延々生きるか死ぬかの殺し合いだったしな」
異世界で楽しい事が全く無かったと言えば嘘になるが、魔王軍との戦いが激しくなってからは地獄だった。
戦いの度に、周りで人が死にまくる様な状況の連続。
とてもじゃないが、異世界の事を詳しく語る気にはなれない。
「あー、ひょっとして……詮索しない方がいいパターン?」
「そう言う事だ」
「そっか。安田君も苦労してるんだね」
「まあな」
亜美は気を利かせてか、その後話題をたわいない物へと切り替えた。
まあそもそも本当に気を使うなら、参考書を開いてる俺に話しかけるなと言いたい所ではあるが。
「ついた。ここよ」
車は山の中にある、古い建物の前で止まる。
建物の周りは大きな柵で覆われており、意図して侵入を試みなければ中には入れない様になっていた。
「元々大きな旅館だったらしいけど、10年ぐらい前に大きな事件があって放棄された場所なの」
「いい年した男女7人が、夜中にこんな場所に肝試しで忍び込んだのか?」
頭の痛いお話である。
「あたしも止めとけとは言ったんだけどね……」
「もっと強く止めておくべきだったな」
俺は廃旅館を見つめてそう言う。
いきなり連絡が途絶えた以上、亜美の友人達に何かあったのは疑い様がない。
だがここに来るまで、それが本当にこのホラースポットで起こった物かの確信はなかった。
ここを出た後、別の場所で何かあった可能性も十分考えられたからだ。
だが廃旅館を目にした今ならハッキリ言える。
亜美の友人達。
ついでに一緒にいた男達の身に、此処で何かが起きたのだと。
何故なら――
「ひょっとして……何かわかったの?」
「ああ」
――目の前の建物のあちこちから、魔法の痕跡が感じられたからだ。
484
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる