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第38話 2つ
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「異世界に魔法……安田にそんな事が……」
俺の状態をサラッと話すと、山田は何とも言えない顔になる。
まあ目の前で魔法を使って見せたとはいえ、異世界云々って話まで直ぐに飲み込める物ではないだろう。
だが重要なのは魔法を使えるという部分なので、それは別に構わない。
「まあ異世界の事はこの際置いといて、だ。兎に角、俺は魔法が使える。そして魔法を使えば、お前の母さんを見つける事も可能だ」
「ほ、本当か!?」
「ああ。けどそのためには、お袋さんの血が少量でも必要だ。昔何かについたシミなんかでもいい。何かないか?」
「それなら!待っててくれ!」
安田が部屋から飛び出し、どたどたと足音を立てて何処かへと向かう。
そしてすぐに戻って来た。
その手には、茶色の染みがついたティッシュが握られている。
「これ!母さんの部屋のゴミ箱に入ってた鼻血だ!」
山田曰く。
出かける直前、母親が鼻血を出してそれをティッシュで拭いたそうだ。
本来は山田がそのゴミ箱の中身をゴミの日に出すはずだった訳だが、例の事件が起きてそれどころではなく、結局そのままになっていた。
という訳である。
「これで……これで本当に、母さんを見つけ出してくれるのか?」
「魔法には本来もっと大量の血が必要なんだが、近しい親族の血を使えばそれをカバーできる。まあ何が言いたいのかと言うと、お前の血も必要だ」
「わ、わかった」
山田が机からカッターを取り出し、自分の指を切った。
それも結構ざっくりと。
そのため、指からどくどくと勢いよく血が流れ落ちる。
「おいおい、何もそんな深く切らなくても……まあいいか」
俺は山田の指から垂れる血を、右手で受け止める。
そして魔法を唱え、山田の指の傷を治してやった。
「これだけあれば十分だ」
「傷が一瞬で治っちまった。凄いな、魔法って」
「その気になれば、虫の息からでも全回復出来るぜ。死んでさえいなけりゃな」
「そっか、本当に凄いんだな。安田……母さんの事を見つけてくれ。どうか頼む」
山田が深々と頭を下げて来る。
「そういうのは別にいいって、俺達友達だろ。けど……」
魔法で見つける事は確かにできる。
だがその状況は、決して保証できるものではない。
音信不通になってから既に四日も経っている以上、最悪の事態も十分考えられた。
「……いや、まあとにかく居場所を探す」
俺はその考えは口に出さず、魔法を詠唱する。
この魔法は血液の情報を元に、その大本となる人物を探し出す魔法だ。
とは言え、その効果は絶対ではない。
まず、距離の制限がある。
探索範囲は術者の魔力次第と言われており、賢者だったアトリの探索範囲は自身を中心とした500キロ程の範囲だった。
俺の範囲は確認した事がないが、彼女より魔力が低かったのでその8割——400キロ程度だと思われる。
なので、俺の探索範囲外に出ていた場合、山田の母親を見つけ出す事は出来ない。
次に、探索する相手の生死も影響して来る。
必ずしも生きている必要はないが、死後数週間もたってしまうと見つけ出せなくなってしまう。
まあ山田の母親は、最悪死んでいてもタイミング的には大丈夫だとは思うが。
そして最後が、原形がない程細かくなってしまっている場合だ。
発見できるのはある程度のサイズを持つパーツだけなので、魔法なんかで粉々にされるていた場合は見つけ出す事は出来ない。
まあ強力な魔法がバンバン行きかう異世界の戦場ならともかく、地球でそう言う状態になるとは考えづらい。
仮に火葬されていても骨は残るので、その可能性はないと考えていいだろう。
「——っ!?」
魔法を発動させると、山田の母親の反応がハッキリと出た。
これで居場所は判明した訳だが、俺はその状態に眉根を顰める。
「ど、どうかしたのか?」
俺が顔を顰めた事に不吉な物を感じたのか、山田が心配そうに聞いて来た。
正直、どう答えた物かと俺は思案する。
――何故なら、山田の母親の反応が二つあったからだ。
俺の状態をサラッと話すと、山田は何とも言えない顔になる。
まあ目の前で魔法を使って見せたとはいえ、異世界云々って話まで直ぐに飲み込める物ではないだろう。
だが重要なのは魔法を使えるという部分なので、それは別に構わない。
「まあ異世界の事はこの際置いといて、だ。兎に角、俺は魔法が使える。そして魔法を使えば、お前の母さんを見つける事も可能だ」
「ほ、本当か!?」
「ああ。けどそのためには、お袋さんの血が少量でも必要だ。昔何かについたシミなんかでもいい。何かないか?」
「それなら!待っててくれ!」
安田が部屋から飛び出し、どたどたと足音を立てて何処かへと向かう。
そしてすぐに戻って来た。
その手には、茶色の染みがついたティッシュが握られている。
「これ!母さんの部屋のゴミ箱に入ってた鼻血だ!」
山田曰く。
出かける直前、母親が鼻血を出してそれをティッシュで拭いたそうだ。
本来は山田がそのゴミ箱の中身をゴミの日に出すはずだった訳だが、例の事件が起きてそれどころではなく、結局そのままになっていた。
という訳である。
「これで……これで本当に、母さんを見つけ出してくれるのか?」
「魔法には本来もっと大量の血が必要なんだが、近しい親族の血を使えばそれをカバーできる。まあ何が言いたいのかと言うと、お前の血も必要だ」
「わ、わかった」
山田が机からカッターを取り出し、自分の指を切った。
それも結構ざっくりと。
そのため、指からどくどくと勢いよく血が流れ落ちる。
「おいおい、何もそんな深く切らなくても……まあいいか」
俺は山田の指から垂れる血を、右手で受け止める。
そして魔法を唱え、山田の指の傷を治してやった。
「これだけあれば十分だ」
「傷が一瞬で治っちまった。凄いな、魔法って」
「その気になれば、虫の息からでも全回復出来るぜ。死んでさえいなけりゃな」
「そっか、本当に凄いんだな。安田……母さんの事を見つけてくれ。どうか頼む」
山田が深々と頭を下げて来る。
「そういうのは別にいいって、俺達友達だろ。けど……」
魔法で見つける事は確かにできる。
だがその状況は、決して保証できるものではない。
音信不通になってから既に四日も経っている以上、最悪の事態も十分考えられた。
「……いや、まあとにかく居場所を探す」
俺はその考えは口に出さず、魔法を詠唱する。
この魔法は血液の情報を元に、その大本となる人物を探し出す魔法だ。
とは言え、その効果は絶対ではない。
まず、距離の制限がある。
探索範囲は術者の魔力次第と言われており、賢者だったアトリの探索範囲は自身を中心とした500キロ程の範囲だった。
俺の範囲は確認した事がないが、彼女より魔力が低かったのでその8割——400キロ程度だと思われる。
なので、俺の探索範囲外に出ていた場合、山田の母親を見つけ出す事は出来ない。
次に、探索する相手の生死も影響して来る。
必ずしも生きている必要はないが、死後数週間もたってしまうと見つけ出せなくなってしまう。
まあ山田の母親は、最悪死んでいてもタイミング的には大丈夫だとは思うが。
そして最後が、原形がない程細かくなってしまっている場合だ。
発見できるのはある程度のサイズを持つパーツだけなので、魔法なんかで粉々にされるていた場合は見つけ出す事は出来ない。
まあ強力な魔法がバンバン行きかう異世界の戦場ならともかく、地球でそう言う状態になるとは考えづらい。
仮に火葬されていても骨は残るので、その可能性はないと考えていいだろう。
「——っ!?」
魔法を発動させると、山田の母親の反応がハッキリと出た。
これで居場所は判明した訳だが、俺はその状態に眉根を顰める。
「ど、どうかしたのか?」
俺が顔を顰めた事に不吉な物を感じたのか、山田が心配そうに聞いて来た。
正直、どう答えた物かと俺は思案する。
――何故なら、山田の母親の反応が二つあったからだ。
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