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第57話 解散
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放課後。
エミとショーコに無理やり引っ張られる形で、俺と山田は学校近くのM字のファストフード店に連れて来られる。
快気祝いがハンバーガーってのはどうかとは思うが、まあお金のない学生だとこの辺りが限界なのだろう。
因みに俺の所持金は300円。
ジュースとちょっとした一品を買うのが関の山である。
あ、言っとくけど。
家が貧乏だから小遣いが一切貰えてない訳じゃないぞ。
基本的に貰った小遣いは全て貯金にまわしているだけだ。
買いたいものがあるからな。
え?
貯金して何が買いたいのかだって?
勿論、母の日のプレゼントと、母への誕生日プレゼントだ。
年二回しかない一大イベントだからな。
きっちり小遣いを貯めておかなければならない。
本当はバイトでもしてお金を稼ぎ、より豪華な物にしたい所なのだが――高級レストランで外食とか。
だが学生の本文は勉学だ。
それを疎かにすれば、母が頑張って俺を学校に行かせてくれている意味がなくなってしまう。
なので、高校を卒業するまでは我慢するしかない。
「あたしらが買って来るから、待ってていいぞ」
「あ、お金を……」
「いいっていいって、山田の快気祝いなんだからな。それにあたし達バイトしてるから気にすんな」
「ありがとう」
先に席を押さえ、奢ってくれるとエミとショーコが二人でカウンターへと向かう。
快気一切関係ない俺にまで奢ってくれるとか、剛毅な事である。
まあ何か絶対企んでるとは思うが。
「な、なあ安田……ひょっとして、田沢さんか柏木さんのどっちかと付き合ってたりするのか?」
「失敬な。そんな訳ねぇだろ」
あの二人のどちらかと交際するとか、どんな罰ゲームだよ。
因みに田沢はショーコで、柏木はエミの名字だ。
これは来る途中、山田と二人のやり取りから得た情報である。
ま、果てしなくどうでもいい情報ではあるが。
「そ、そうなのか?凄く親しそうだったからさ」
「あいつらの行動は下心ありきだよ。なんか頼み事したいんだろ。聞く気はないけど」
例のウィングエッジ関連だろうな。
たぶん。
「ひょっとして、安田の例のあれを知ってるのか?」
俺の言葉を曲解してか、山田が小声で聞いて来る。
「あー、違う違う。教える訳ないだろ。ただ喧嘩が強いと思ってるみたいだから、あいつら自分達のチームに俺を勧誘しようと粉かけてきてんのさ」
「あー、そうなんだ。つまり将を射るための馬って訳か。俺は」
アイツら以前は山田の事を豚丸呼ばわりしてたっぽいから、馬ってよりは豚なんだが、傷つけるだけなので余計な事を言うのは止めておく。
「おまたせぇい!」
二人がトレーを持って帰って来た。
その上にはハンバーガーやサイドメニューが山盛りだ。
安めの店ではあるが、これだけの量となれば結構な値段になる筈。
ずいぶんと奮発した物である。
「す、凄い量だね」
「ぶ……山田はいっぱい食いそうだからな。遠慮なく食ってくれ」
いま豚って言おうとしたな、エミの奴。
「あ、ありがとう」
「遠慮すんなよ。これから同じチームとしてやって行く仲なんだからさ!」
ショーコが笑顔で山田の背中をバンバン叩く。
流石にこの程度での衝撃では一々タリスマンは発動しないので、魔力を消費する事はない訳だが……
今サラリと同じチームとかほざきやがったな。
「俺はウィングエッジとやらには入らんぞ」
食う前にちゃんと断っておく。
食ってからだと断り辛くなるからな。
「ん?ああ、違う違う。ウィングエッジじゃねーって」
「そうそう。ウィングエッジは昨日で解散したからな」
「ん?そうなのか?」
学校で一番のチームだったらしいが、随分とあっさり無くなったもんである。
まあ俺には関係ないからどうでもいいが。
「実は風早が学校やめちゃってさ」
「メンバーの大半も風早について学校やめる事になって……解散って事になったんだよねぇ」
「ふーん、学校やめたのか。あいつ」
チラリと山田の方に目をやるが、特に表情に変化はない。
ひょっとして、風早が親戚って事を知らないのだろうか?
まあ山田のお袋さんは家でてそっから帰ってないらしいから、伝えてないんだろうな。
きっと。
関わりたくもないって感じだったし。
「風早。なんでも家でごたごたがあったらしくて、それで学校やめるんだって」
「ほんっと、急だよな。あたしもびっくりしたよ」
家でごたごたが原因、ね。
関係ないとか思ってたけど、おもっくそ風早剛一郎関連っぽいな。
まあだからなんだって話ではあるが。
しかし……爺さん居なくなったからって、普通学校やめるか?
金持ちの考える事は分からん。
エミとショーコに無理やり引っ張られる形で、俺と山田は学校近くのM字のファストフード店に連れて来られる。
快気祝いがハンバーガーってのはどうかとは思うが、まあお金のない学生だとこの辺りが限界なのだろう。
因みに俺の所持金は300円。
ジュースとちょっとした一品を買うのが関の山である。
あ、言っとくけど。
家が貧乏だから小遣いが一切貰えてない訳じゃないぞ。
基本的に貰った小遣いは全て貯金にまわしているだけだ。
買いたいものがあるからな。
え?
貯金して何が買いたいのかだって?
勿論、母の日のプレゼントと、母への誕生日プレゼントだ。
年二回しかない一大イベントだからな。
きっちり小遣いを貯めておかなければならない。
本当はバイトでもしてお金を稼ぎ、より豪華な物にしたい所なのだが――高級レストランで外食とか。
だが学生の本文は勉学だ。
それを疎かにすれば、母が頑張って俺を学校に行かせてくれている意味がなくなってしまう。
なので、高校を卒業するまでは我慢するしかない。
「あたしらが買って来るから、待ってていいぞ」
「あ、お金を……」
「いいっていいって、山田の快気祝いなんだからな。それにあたし達バイトしてるから気にすんな」
「ありがとう」
先に席を押さえ、奢ってくれるとエミとショーコが二人でカウンターへと向かう。
快気一切関係ない俺にまで奢ってくれるとか、剛毅な事である。
まあ何か絶対企んでるとは思うが。
「な、なあ安田……ひょっとして、田沢さんか柏木さんのどっちかと付き合ってたりするのか?」
「失敬な。そんな訳ねぇだろ」
あの二人のどちらかと交際するとか、どんな罰ゲームだよ。
因みに田沢はショーコで、柏木はエミの名字だ。
これは来る途中、山田と二人のやり取りから得た情報である。
ま、果てしなくどうでもいい情報ではあるが。
「そ、そうなのか?凄く親しそうだったからさ」
「あいつらの行動は下心ありきだよ。なんか頼み事したいんだろ。聞く気はないけど」
例のウィングエッジ関連だろうな。
たぶん。
「ひょっとして、安田の例のあれを知ってるのか?」
俺の言葉を曲解してか、山田が小声で聞いて来る。
「あー、違う違う。教える訳ないだろ。ただ喧嘩が強いと思ってるみたいだから、あいつら自分達のチームに俺を勧誘しようと粉かけてきてんのさ」
「あー、そうなんだ。つまり将を射るための馬って訳か。俺は」
アイツら以前は山田の事を豚丸呼ばわりしてたっぽいから、馬ってよりは豚なんだが、傷つけるだけなので余計な事を言うのは止めておく。
「おまたせぇい!」
二人がトレーを持って帰って来た。
その上にはハンバーガーやサイドメニューが山盛りだ。
安めの店ではあるが、これだけの量となれば結構な値段になる筈。
ずいぶんと奮発した物である。
「す、凄い量だね」
「ぶ……山田はいっぱい食いそうだからな。遠慮なく食ってくれ」
いま豚って言おうとしたな、エミの奴。
「あ、ありがとう」
「遠慮すんなよ。これから同じチームとしてやって行く仲なんだからさ!」
ショーコが笑顔で山田の背中をバンバン叩く。
流石にこの程度での衝撃では一々タリスマンは発動しないので、魔力を消費する事はない訳だが……
今サラリと同じチームとかほざきやがったな。
「俺はウィングエッジとやらには入らんぞ」
食う前にちゃんと断っておく。
食ってからだと断り辛くなるからな。
「ん?ああ、違う違う。ウィングエッジじゃねーって」
「そうそう。ウィングエッジは昨日で解散したからな」
「ん?そうなのか?」
学校で一番のチームだったらしいが、随分とあっさり無くなったもんである。
まあ俺には関係ないからどうでもいいが。
「実は風早が学校やめちゃってさ」
「メンバーの大半も風早について学校やめる事になって……解散って事になったんだよねぇ」
「ふーん、学校やめたのか。あいつ」
チラリと山田の方に目をやるが、特に表情に変化はない。
ひょっとして、風早が親戚って事を知らないのだろうか?
まあ山田のお袋さんは家でてそっから帰ってないらしいから、伝えてないんだろうな。
きっと。
関わりたくもないって感じだったし。
「風早。なんでも家でごたごたがあったらしくて、それで学校やめるんだって」
「ほんっと、急だよな。あたしもびっくりしたよ」
家でごたごたが原因、ね。
関係ないとか思ってたけど、おもっくそ風早剛一郎関連っぽいな。
まあだからなんだって話ではあるが。
しかし……爺さん居なくなったからって、普通学校やめるか?
金持ちの考える事は分からん。
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