異世界転生帰りの勇者、自分が虐められていた事を思い出す~なんか次々トラブルが起こるんだが?取り敢えず二度と手出しできない様に制圧するけどさ~

榊与一

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第68話 改造人間

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――とある巨大ビルの地下に作られた秘密施設。

ここは日本屈指の巨大企業である帝真グループが、政府の支援を受けて研究を行っている施設だ。
地下施設の一室には大きなモニターが設置されており、白衣を着た研究者然とした人物達がそこへと視線を集中させている。

そこに映っているのは、円筒形の液体のカプセルに入っている人の姿。
いや、正確には人と蛇が混ざった様な生物と言った方が正しいか。
映し出された子供の上半身は人間だが、その下半身は蛇のそれだった。

――人蛇ラミア計画

それが帝真グループが進めている計画だ。

「今回も完全変形には至らず……か。順調とは言い難いわね」

白衣を着た女性。
この場の責任者を務める、研究室長である松戸才恵まつどさいえが眉間に皺をよせそう呟く。

彼女達が研究しているのは、爬虫類の能力を持った隠密用の改造人間だ。
その開発にはいくつかのコンセプトがあったが、その中で最も重要視されているのは潜入能力である。

どういった場所にも入り込むためには、小型であればあるほどいい。
それは考えるまでもないだろう。
故に、研究の実験は全て幼い子供となっている。

今回集められた10歳未満の少年少女の数は約50名。
全員孤児で、表向きには大きな火災で死んだという形で集められていた。

「残った検体もたったの3体。追加もいつ来るかもわからないし、困った物だな」

最初の処置の時点で、少年少女達の8割が死亡。
その後も拒絶反応や変形テストなどで命を落としており、残っているのは画面に映し出されている3人のみとなっている。

実験体は簡単に手にはいらない為、彼女達の研究成果は芳しくない状態と言える物だ。

「うん?上からね……」

その時、松戸才恵のスマートホンが鳴る。
結果をせっつかれるのだろうと思い、暗い気分で顔を顰めて電話に出た彼女だったが、その表情は直ぐに明るい物へと変わった。

『近々、新たな実験体が確保できそうだ』

という朗報で。

「はい、ありがとうございます。ええ、必ずご期待に添えて見せますので……はい、はい……」

電話を切った松戸がその場の全員にそれを伝えると、その場は明るい雰囲気に変わる。
研究継続の問題点が一つクリアされたのだから、当然だ。

「——っ!?」

だがそんな緩んだ雰囲気をぶち壊す様に、突然アラームが鳴り響く。
それは実験体に異常が発生した際に、それを知らせる為の警戒音。

「何が!?」

モニターに映し出された、3人の実験体である子供達が苦しんでいた。
その突然の異常に、松戸達研究者は唖然とする。

「実験体のバイタルが急激に低下しています!それも3体とも!」

白衣の男性が慌てた様子でコンソールを弄り、そう叫ぶ。

「薬を投与して安定させなさい!」

「もう投与済みです!ですが……ああ、バイタルサインが停止しました……」

「ちっ……今すぐ蘇生措置を行いなさい!」

「はい!分かりました!」

コンソールを弄っていた白衣の男性が慌てて部屋から出て行き、実験体の三人がいる部屋へと向かう。
その際、スタッフ二人に声をかけ連れて行く。

「蘇生を行う!」

液体の満たされたカプセルから出された三人の子供達は、体を拭きとられた後電気ショックでの心肺蘇生が行われる。
だが止まった心臓は、再度動き出す事は無かった。

「はぁ……ったく、勝手に死んでんじゃないわよ」

遺体となって運び出されていく実験体に対し、モニター越しに松戸が悪態をついた。
新しい素体が手に入るとは言え、第二段階まで進んだ実験体は貴重な物だ。
それを失ってイラつきを隠せない彼女は、禁煙場所である事を無視して胸ポケットから取り出した煙草を咥える。

「しょうがない、解剖の準備をしなさい」

死んだ実験体の遺体は解剖し、バラバラの状態で保管される。
それらの細胞をつかい、研究に利用する為だ。

死して尚、安息を得る事が出来ない。
それが実験体の末路である。

「はい」

松戸の指示に従い、研究員が室外に出ていく。
だが彼らは直ぐに慌てた様子で戻って来た。

「なに?もう準備が済んだの?」

「いえ、それが……どうも死体が解剖室に運ばれていない様で……」

「は?どういう事よ?」

実験体の死体の運搬先は一か所だけである。
そのため、手違いなどは発生しようがない。

「——はっ!まさか!監視カメラで確認なさい!今すぐに!!」

不自然な実験体三体同時の死亡。
そして、運ばれるべき場所に運ばれていない死体。
その二つの情報から、彼女はスパイの存在に思い至りそう指示を出す。

「わ、分かりました!」

「確認してきます!」

松戸に指示され、慌てて動く部下達。

「スパイによる持ち去りなのは疑いようがない……けどおかしいわね。研究は完成には程遠い状態。現段階で実験体を奪うメリットはない筈なのに……」

完成しているのならばともかく、折角潜入させたスパイを途中経過を盗むためだけに使うのは余りにも効率が悪い。
何故スパイが今このタイミングで動いたのか分からず、松戸は首を傾げた。

「まあいいわ。捕まえて聞き出せばいいだけの事。どうせ逃げられはしないんだから……」

帝真グループから逃げきれる訳がない。
どうせすぐに捕まる。
松戸はそう結論付けて、愚かなスパイを心の中で嘲笑う。
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