死に戻り聖女は魔女の烙印を押され国を追われる~え?魔王の封印が解けた?そんなの自分達で何とかしてください~

榊与一

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第6話 渓谷

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馬車に揺られる事3日。
私達はセベックの大滝がある渓谷へと辿り着く。
此処からは山道であるため、馬車から降りて徒歩で滝へと向かう事になる。

私達は積んでいた荷物を下ろす。
用が済んだ馬車――召喚魔獣――は、アーニュの送還魔法で呼びだされた場所へと帰って行く。
帰りの際には、再び彼女が召喚してくれる予定だ。

「カルアさん。此処からは徒歩になりますが、大丈夫ですか」

カルアは小柄な女性だ。
厚手の紺のローブのフードで頭部をすっぽりと覆っている為、その顔は見えない。

「大丈夫です」

私の問いに、彼女は小さく返事を返してくる。

此処からは歩きだ。
足場が悪く、また斜面を登って行く事にもなる。
しかも彼女はその背に、調査器具が入っていると思われる大荷物を背負っていた。
とても大丈夫そうに見えなかったので声を掛けたのだが。

「もしきついようなら、いつでも言ってくださいね」

場合によっては私かハイネが変わりに持つ必要があるだろう。
依頼人に無理をさせ、目的地に着く頃にはグロッキーで調査もままならなかったでは、笑い話にもならない。

「はい」

「そんじゃあたしが後ろに付くから、アリーネは前な」

私とハイネは依頼人を前後で挟み。
右側にアーニェが並ぶ。

この辺りで出る魔物と言えば、ゴブリンやウルフぐらいのものだ。
余程大量でもない限り、まず問題は無いだろう。

振り返るとハイネが私にウィンクする。
彼女のその手は依頼人カルアの背負うリュックにかかっていた。
勿論盗むためではなく、支える為だ。

大雑把な性格をしている彼女だが、こういった時細かい気配りを去る気なくやってくれるから助かる。

「おー、絶景だな」

足場の悪い斜面を進んでいくと、遥か上空から水を吐き出す滝の姿が見えて来る。
私もその風靡な景色に目を細めた。

「感動してるところ悪いけど、お客さんみたいよ」

アーニュは、探索魔法に魔物が引っ掛かった事を私達に伝える。
その言葉を聞き、ハイネが表情を引き締めた。

「数は?」

「8匹よ」

アーニュの指さす方向――木立の隙間から緑の小鬼ゴブリンの姿が見え隠れする。
どうやらこっそり近づいて、此方へと奇襲をかけるつもりの様だ。

「じゃあ、あたしが仕留めて来るから。二人は護衛宜しく!」

そう言うと、彼女は肩に掛けていた荷物をその場に置いて突貫する。
勝手な行動ではあるが、まあゴブリン如き相手なら彼女の敵では無いだろう。

走りながら、ハイネは背中の大剣を抜き放つ。
一見木々の中では扱い辛いように感じる武器ではあるが、彼女には関係なかった。
その強烈な膂力から繰り出される斬撃は、周囲の木ごと力尽くでゴブリンを叩き切る。

「まるで小さな竜巻ね」

ハイネは瞬く間に8匹のゴブリンを始末する。
その場には、ゴブリンと切り刻まれた木々が折り重なる様に倒れていた。
自然破壊極まりない行為だが、自然が豊富な異世界ならこの程度の伐採は誤差だ。
気にしない事にする。

「へへ、どうよ?」

「まったく、どうよじゃないわよ、大きな音を立て過ぎ」

音を立てれば、それを聞きつけた他の魔物が寄ってくる可能性がある。
あれだけバカスカ木を薙ぎ倒したのだ、その音は辺り一帯に響いている筈だ。

「悪い悪い。寄って来る奴らがいたら、今度も俺が始末してやるからさ」

「だめよ、次は私が相手をするわ」

彼女が暴れれば、また大きな音が響くだろう。
そうなればその音につられて……と言った感じで、堂々巡りになりかねない。
その点、拳で戦う私は静かに戦うのに持って来いだ。

「ぇー」

ハイネは詰まら無さそうに、口を尖らせる。
普段の討伐系のクエストなら幾らでも大暴れして貰って構わないが、今の仕事は護衛だ。
彼女に好きな様ににやらせるわけにはいかない。

「ほら荷物」

拾っておいたハイネの荷物を彼女に押し付け、ちらりと依頼主へ視線を向ける。
それに気づいた彼女は小さく頷いた。
どうやらまだ休憩なしで行ける様だ。

「じゃ、他の魔物が寄って来る前にこの辺りから離れましょ」

私達は少々足早にその場を離れた。
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